僕はこんなスゴイ本を読んだ①

『空手に賭けた青春 無心の心』山崎照朝著

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本書は山崎照朝氏の幼少から空手との出会い、青春のあれこれなど余すことなく赤裸々に綴られている。自伝物が大好物な私のこと、サクサク読み進めた。

空手道へ進むきっかけとしてこんなエピソードがあったらしい。山崎氏が小学生の頃、通学途中に必ず会う中学生がいた。その中学生はすれ違いざまに殴っていくのだ。なにもしていないのに。理不尽。さらに中学に入ると「背が大きい」という理由だけで上級生に呼び出され、金的蹴りを食らったそう。なにもしていないのに。これまた理不尽。

「ケンカに勝ちたい!」と理不尽に暴力を受けてきた人の結果としては正しい動機で空手道場へ通う決意をするわけだが、その道場までが遠かった。この頃山崎氏は山梨県の山奥に住んでおり、一番近い空手道場へは東京まで出なければならなかったそうな。最初は親に内緒で空手を始めた山崎氏であったが、電車賃などの問題でいかんともしがたくなった。そこで彼はこんな作戦をとった。

「歌手になりたいから東京の歌謡スタジオに通わせてくれ!」

こう来た。「歌謡スタジオに通う」なんて韻を踏んでいたりして、今の世ならラッパーでもいけそうだ(?)そんな苦し紛れのウソであったが、山崎氏根が真面目なのであろう、空手の稽古の後ちゃんと歌謡スタジオに通ったそうだ。もちろん歌手になる気なんてサラサラないのに。

そんなこんながあり無事高校を卒業。道場の先生の力添えもあり東京の会社に就職した。(全ては空手道場へ通う為)そこでもこんな面白エピソードがある。上京の時、母親からこれで背広を買いなさいとお金を貰った。しかし山崎氏はそのお金で空手着を新調してしまったのだ。まさに空手バカ。計画性がまるでナシ!

初出勤の日は迫って来た。しかし着ていくスーツがない。もちろんお金も無い。空手着で行くわけにもいかない。どうにもならなくなった山崎氏はこんな荒業に出たのだ。なんと高校の制服で出勤したのだ。すごい!すごすぎるぜ山崎さん!ビバ詰襟!何かを極めようとその世界に没頭している人は他の事には無頓着ということがあるが、このエピソードはまさにその際たる例であろう。ちなみに職種は営業であった。詰め襟姿の営業マン…お得意先もビックリだ。

初恋もこの頃だったらしい。お相手は同じ会社の2つ年上の女性。社会人になってから初恋とはなんとも遅すぎる感は否めないが、そこはタイトル通り「空手に賭けた青春」だったからなのだろう。デートを重ねいい塩梅になっていたのだが、ある日他の男に取られてしまった。その男と言うのが山崎氏曰く「軽井沢に別荘を持っている大学出のお坊っちゃん」だったらしい。さらにその悔しさのさなか、会社の上司に大学出の同僚との差別を受けてしまった。これぞダブルパンチ!いや、空手風に言うなら二段正拳突きか。違うか。さぞ砂を噛む思いだったのは想像に難くない。

「私はその悔しさを空手にぶつけ、これまで以上に稽古に励んだ」と、当然そう来ると思いページをめくると全然違った。こう来た。

「大学に入ろう。今からでもまだ間に合う、もう一度やり直しだ!」

なんたる決断力。なんたる行動力。さっさと辞表を出して本当に会社を辞めてしまったのだ。そして空手で培った精神力で「日本大学農獣医学部」に見事合格した。医学部!やれば出来る子なんだね。

その後キックボクシングに挑戦し連戦戦勝したり、「全日本空手道選手権大会」の初代チャンピオンになったりで華々しい活躍を遂げたのだが、私はもうお腹がいっぱい。没頭できる何かを持っている人はそれだけで幸せなんだろうな。「人生に遅すぎることはない」そんな言葉が心に染みた一冊でした。押忍!


追記

 ネットで山崎氏を調べて見ると驚愕の事実発見!彼はアニメ版の「空手バカ一代」のエンディングテーマを歌っているのだそうな。歌謡スタジオに通った経験がなんとこんなところで生かされていたのだった!


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