藤井風「grace」で到達した世界
昭和のアイドル小泉今日子は「あなたに会えてよかった」と歌う。「やっと逢えたね」と渋く口ずさむのは往年の名優、中条きよしだったろうか。令和のシンガーソングライター藤井風は「grace」で「あたしに会えて良かった」と歌いかける。どれも出会いの喜びを歌った音楽だ。
「(ありのままの)あたしに会えて良かった」
「(ありのままの)自分を愛そう」
「何なんw」に始まり「grace」に至るまで、藤井風は首尾一貫している。
彼は自分の中の葛藤をあらわにし、誰かの孤独に寄り添い、願いや思いを音楽に乗せる。彼はずっと「自分が自分らしくあるための応援歌」を歌い続けてきた。
藤井風はいつでも柳のようにしなやかで優しい。MVでの慈愛に満ちた表情で人々と触れ合う様子は、まさに「grace」だ。
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どんな「あなた」や「あたし」であっても、すべて繋がっている
デビュー曲「何なんw」では何にもとらわれず自由に生きたい自分と、そうできなくて、さまよっている自分が交互に現れた。
「高次の自分」ともいえる「ハイヤーセルフ」は、そんな「あたし」を俯瞰する。
「grace」では雲の上から俯瞰する「あたし」と自分探しの旅で彷徨っていた「あたし」が、ついに出会う。
藤井風は負の感情に支配されそうになっている自分自身も認め、そんなものは「へでもねーよ」「damn」と笑い飛ばしていく。濡れたジャケットを脱ぎ捨てるように「きらり」と軽やかに「何もかも捨てていく」ことで解き放たれるのだ。
自分の中のネガティヴさも認めた上で「何にも囚われることなく 心の自由を手に入れたあたし」は最強に違いない。
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「そこに愛はあるんか?」
藤井風は「きらり」で「動機は”愛”がいい」と歌った。大地真央は某CMで「そこに”愛”はあるんか?」と問いかけた。
わたしは「愛」=「良心」だと思う。自分の軸が揺らいだ時は、自身に問いかけてみたい。
「”愛”に従っているか?『誰か』ではなく自分にウソをついてはいないか?」
藤井風流に言うならば
「ハイヤーセルフ=(自分自身と神様)に聞いてみな」
ではなかろうか。
常識や価値観は人それぞれ。ある物事に対して問題意識を持っても視点を変えれば、それぞれの事情や背景が見えてくる。
そんな時
「愛に従っているかい?」
藤井風は問いかけてくる。
彼にとって命あるものへの感謝や、誰かの痛みや孤独に寄り添うことは、ごく当たり前なことなのだろう。それは彼の中の「愛」の具現化であり「良心」に従っているまで。息をするように自然なことなのだと思う。
元オリンピック金メダリスト荻野公介の言葉だ。
「他人の評価によって自分が生きている」
他人と比較され、誰にでもわかりやすい点数で評価されるオリンピック選手ならではの発言。なんでも数字で可視化されることで、否応にも比較されがちな現代社会。「見えるものが全て」ではないと知り、自分軸を保てないと闇落ちすることもあるだろう。
「でも幸せの尺度は人それぞれ」
このことに気付けば、もっと楽しく幸せに生きられるはずだ。
簡単なようで難しく、シンプルなようで複雑。だが今日という日は二度と来ない。「ああ儚い世界」。
外的評価に惑わされず、内省(自分の考えや行動を省みること)によって自分を知ることは、問題解決に繋がるのではないだろうか。
「Love Myself」
自分を愛することができる人は、他人を愛することもできる。「待たせてごめん いつもありがと」は他人に対しての感謝に加え、自分自身へいたわりの気持ちでもあるだろう。
藤井風は優しく歌いかける。
あなたの中のあたしに会いに行こう。
心の声に耳を澄まそう。
ありのままの自分を認めて愛そう。
そして、あなたを縛る全てから解き放たれて自由になろう。
「何があろうとも」
「全てあたしのgrace」
なのだから。
藤井風初の有観客野外ライヴ、無事成功するといいですね。
藤井風さんのこと、いろいろ書いてます
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