自動運転車いすを見て食事介助の体験を思い出した話
SHIPのイベント「シンギュラリティ時代の介護と多様性 Vol2」に参加してきた。
ピクシーダストテクノロジーズとシルバーウッドの共同事業として取り組まれているxMove、自動運転車いすのデモがあったり、
落合陽一さんと下河原忠道さんのトークセッションがあったり、
とってもおもしろい会で、参加しながら学びと気づきをツイートしたのでイベントについてはぜひそちらを。#ヘルスケアSHIPで他の人のツイートも見られます。
トークセッションの中で、
「わざわざ自動運転の車椅子じゃなくても、人を呼んだら連れて行ってもらえるんだけど、いちいち頼むのが億劫で、人の手を煩わせるのも申し訳ないなと思ってるうちに、行きたい、やりたいっていう気持ちを失くしてしまう」と落合さん。
これを聞いて、「ほんとそうだよなぁ」と思いながら、初任者研修で食事介助の練習をしたときのことを思い出した。
私が受けた初任者研修の実習では、
・目隠しをした状態で人に食べさせてもらう
・目隠しをした状態で手探りで自分で食べる
の両方をやった。
食べさせてもらうものはアレルギー等の観点もあり、自分で用意することになっていて、行きのコンビニでお弁当を調達した。
一番食べたかったのは秋刀魚の梅なんとか弁当っていうやつだったんだけど、
「今日は食べさせてもらうからな、食べやすいものの方がいいかな」とちょっと考えて、豆腐ハンバーグ弁当を選んだ。
選んでから、「あーこういうこと」と思った。
「人が食べさせやすそうなものを選びたい、だって迷惑かけたくない、
人に食べさせてもらうときにモタモタしたら嫌、だって気まずいの嫌」
って思ったんだよね。
「そうかーそういうこと思うのか、思わない人もいるだろうけど、同じように思う人いるだろうなぁ」と思いながらいざ実習へ。
実習でわざわざ目隠しをするのは、食べさせてもらうということをより強調して体験するためだったんだと思うんだけど、
これも私にとって忘れられない体験になった。
「鎮目さん、お食事しましょう。今日のメニューは××と、××と、」
って説明を聞いて、
「何から食べますか?」って聞かれる。
「(何があるのか全部覚えられなかったんだけど、、)じゃあお肉から」と答える。
口開けて待ってる、口にお肉が入る、食べる、次何にするか聞かれる、待つ、口に入る、、、
を繰り返すんだけど、
「、、、めんどくさっ、、っていうか、煩わしい、、つまんない」
という気持ちと、
「食べさせてもらってるから食べなきゃ」
という義務感で、どんよりした気持ちになって、
実習が始まる前はすごくお腹が空いてて、「今日は実習で早くごはん食べられるからラッキー」くらいに思ってたのに、
食べたい気持ちもなくなり、空腹なのかもよく分からなかった。
そんな気持ちになってることが悲しかった。
タイミングも、一口の量も、ペースも、自分の好きなようにはいかない。
むしろ、自分で食べてるときはそれらを好きなように自分でコントロールして食べてるという意識すらなかった。
私にとって初めてのことだったし、大げさに感じ過ぎてるところは大いにあると思う。
でも人に食べさせてもらうって、こんなにも自分で食べることと差があるって知らなかった。
目隠しをしながら手探りで自分で食べる方は、もちろん食べにくいしこぼすし汚れるけど、ずっとずっと美味しく感じて、
同じものが口に入っても全然違うってことが衝撃だった。
この体験から思ったことはたくさんあって。
でぃぐにてぃ代表の吉田が「食事、入浴、排泄の介助で最も難しいのは食事」って教えてくれたことがあって、
「素人考えでは食事が一番ハードル低そうだけどな」と思ったんだけど、
介助される側が、自分で食べてるのと同じように食事を楽しみ、味を楽しむことのできる食事介助ってどれだけ難しいか、少し分かった気がした。
少しでも楽しく美味しく食べられるように、ご家族や介護職が現場であらゆる手を尽くしているのだろう。
それも365日、3食。
そう思うと尊敬の念なんて言葉では表せないくらいの、圧倒されるというか、胸を打つものがある。
話を最初に戻すと、介護現場でのテクノロジーの話。
人の手に頼ることなく移動できたら、食べられたら、というのは、
介護現場の人手不足を解消するっていうよく語られる意味合いも大切だけど、
「自分の好きなように自分のことできる」を取り戻せるのかもしれない。
人の手を借りたいこと、自分でやりたいことを選択できるかもしれない。
そうしたら、もしかしたら介護職は、食べてる横で話を聞くことでよりよいケアができるかもしれない。
そして、これから先の食事介助はロボットがやってくれるのかもしれないし、何らかテクノロジーを活用したソリューションが生まれるんだと思うから、そのときは、現場の介護職が持ってる食事介助の知見をふんだんに盛り込んでほしいと思う。