[解剖学編 Vol.13] 腹横筋と体幹の安定性について
こんにちは!コンさん@施術に役立つ解剖学の近藤優也です。
腹横筋(ふくおうきん)は、体幹の深層に位置し、腹部全体を包み込むように走る筋肉です。この筋肉は「天然のコルセット」とも呼ばれ、体幹の安定性を高める重要な役割を果たします。腹横筋が弱化または過緊張すると、姿勢の崩れや腰痛、体幹の不安定性が生じます。本記事では、腹横筋の解剖学的特徴、機能、施術方法、症例別のアプローチを詳しく解説します。
この記事で分かること
腹横筋の解剖学的特徴と役割
腹横筋の機能不全が引き起こす問題
腹横筋をケアする施術アプローチ
症例別の具体的なアプローチ方法
1. 腹横筋の解剖学的特徴
腹横筋は、腹部の最深層に位置する筋肉で、肋骨、骨盤、脊柱を結びつけています。
起始と停止
起始(きし):
第7–12肋骨(ろっこつ)の内面
胸腰筋膜(きょうようきんまく)
腸骨稜(ちょうこつりょう)
鼠径靭帯(そけいじんたい)
停止(ていし):
白線(はくせん)
恥骨稜(ちこつりょう)
神経支配
支配神経: 肋間神経(ろっかんしんけい)(T7-T12)、腸骨下腹神経(ちょうこつかふくしんけい)(L1)
主な役割
腹腔内圧(ふくくうないあつ)の調整:
腹横筋が収縮すると、腹腔内圧が高まり、体幹の安定性が向上。
姿勢のサポート:
骨盤や脊柱の適切な位置を維持。
呼吸の補助:
呼気時に収縮し、肺から空気を排出する。
筋膜との連携
腹横筋は胸腰筋膜を介して多裂筋(たれつきん)や腰方形筋(ようほうけいきん)と連動し、全身の安定性をサポートします。
2. 腹横筋の機能不全が引き起こす問題
弱化による問題
腰痛:
腹横筋の弱化により腹腔内圧が低下し、腰椎に過剰な負担がかかる。
体幹の不安定性:
骨盤や脊柱が安定しなくなり、動作効率が低下。
過緊張による問題
呼吸の制限:
過緊張により横隔膜(おうかくまく)との連動が悪化し、浅い呼吸が習慣化。
姿勢の崩れ:
骨盤が後傾しやすくなり、猫背や腰痛を誘発。
3. 腹横筋をケアする施術アプローチ
① 筋膜リリース
腹横筋の筋膜をリリースして柔軟性を高めます。
手順:
クライアントを仰向けに寝かせます。
下腹部(鼠径部付近)に軽い圧をかけ、筋膜を引き伸ばすようにリリース。
深呼吸に合わせて圧を調整。
② 呼吸トレーニング
腹横筋の機能を回復させるために腹式呼吸を指導します。
手順:
クライアントに仰向けで膝を立ててもらいます。
腹部に手を置き、吸気時に手が上がるよう意識。
吸気・呼気を5秒ずつゆっくり行い、10セット繰り返します。
③ 筋力強化エクササイズ
弱化した腹横筋を鍛えるためのトレーニングを行います。
エクササイズ例:
デッドバグ: 仰向けで両手両脚を交互に動かし、体幹を安定させる。
プランク: 腹横筋を意識しながら体幹を固定。
4. 症例別アプローチ:腹横筋の弱化による腰痛のケース
症状
長時間の座位で腰部に痛みを感じる。
姿勢が崩れやすく、背中が丸くなる。
重いものを持ち上げると腰に負担を感じる。
アプローチ例
リリース:
腹横筋の筋膜をリリースし、緊張を解消。
呼吸トレーニング:
腹式呼吸を通じて腹腔内圧を高める。
筋力強化:
プランクやデッドバグを指導し、腹横筋を強化。
5. 腹横筋ケアの効果
腰痛の軽減: 腹横筋の機能回復により、腰椎への負担が軽減される。
体幹の安定性向上: 骨盤と脊柱が安定し、姿勢が整う。
動作効率の改善: 腹横筋のサポートにより、全身の動きがスムーズに。
呼吸機能の向上: 横隔膜(おうかくまく)との連携が回復し、深い呼吸が可能に。
6. まとめ:腹横筋ケアの重要性と次回予告
腹横筋は、体幹の安定性や姿勢維持に欠かせない筋肉です。その適切なケアを行うことで、腰痛や姿勢の改善だけでなく、動作効率の向上も期待できます。
次回は[解剖学編 Vol.14] 骨盤底筋群と姿勢の連動性についてをお届けします!
質問やリクエストがあれば、ぜひコメントで教えてください!一緒に学び、成長していきましょう!