■ 結合組織 解説 YouTube
− 学習のポイント −
■4. 結合組織の分類と構成
結合組織は全身に広く分布し、上皮組織、筋組織、神経組織などを互いに結び付け、それらに養分を補給するなどの役割を果たす組織をいいます。細胞がまばらで、細胞間質が豊富という特徴があります。
結合組織は (1) 線維性結合組織、(2) 軟骨組織、(3) 骨組織、(4) 血液に分けられます。一般的に「結合組織」と言った場合には線維性結合組織のことを指す場合が多く、「狭義の結合組織」と言えます。しかし、軟骨組織や骨組織、血液とリンパなども「細胞が比較的まばらで、細胞間質が豊富」という特徴があるので、結合組織に含めます(広義の結合組織)
■ 線維性結合組織の構成
線維性結合組織とは、線維を生み出す細胞(線維芽細胞)、免疫を担当する細胞、脂肪細胞に線維芽細胞が産生した線維、タンパク質・多糖類などをふくめた構造です。
線維性結合組織は、比較的まばらに点在する細胞成分として5種類の細胞成分があります。
細胞と細胞の間を埋める物質は「細胞間質」と呼ばれます。
これは、細胞外マトリックス、細胞外基質、もしくは細胞間基質と呼ばれたりします。
細胞間質はさらに、「線維」と「基質」に分けられます。
線維は線維芽細胞が産生するもので、膠原線維が基本的な線維成分です。その他に特殊な線維として細網線維と弾性線維があります。
▶ 密性結合組織と疎性結合組織
線維性結合組織は膠原線維(コラーゲン)の含有率により密性結合組織と、疎性結合組織にわけられます。
密性結合組織は膠原線維の量が非常に豊富な結合組織です。ひっぱる力に対して非常に強靭です。
膠原線維の配列方向が一定のものは靭帯、腱。
膠原線維の配列方向が不定なものは、真皮、強膜などがあります。
この線維の方向までは聞かれることはあまりないので、まとめて響きで覚えてください
「靭帯、腱、真皮、強膜」
疎性結合組織は、線維がまばらです。そして線維を生み出す線維芽細胞や脂肪細胞の他、免疫や炎症に関与する大食細胞や肥満細胞、形質細胞などが存在しています。細胞や組織の間を埋めて、身体の構造を維持するのと同時に、生体防御反応の場ともなっています。
部位としては、皮下組織、粘膜固有層の他、粘膜下組織、血管外膜、筋と筋の間、滑膜など。それこそ、身体の隙間をうめるようにいたるところに見受けられます。
▶ 線維性結合組織の線維成分
① 膠原線維
膠原線維(コラーゲン)はもっとも基本的な線維成分で、線維芽細胞により産生されるタンパク質の1種です。
体内の全タンパク質の30% を占めます。引っ張る力に強く、膠原線維の割合が高い密性結合組織は、靭帯や腱、真皮、強膜、骨膜などにみられます。
② 細網線維
細網線維は網目構造をしていて、多数の大食細胞やリンパ球が存在しています。
網の目で異物を除去し、生体を防御する働きがあり、細網内皮系と言われます。リンパ節、脾臓、骨髄、肝臓の洞様毛細血管の外側(ディッセ腔) などにみられます。
③ 弾性線維
弾性線維はエラスチンを主成分とし、ゴムのような弾力性に富む線維。大動脈壁、動脈の弾性板、項靱帯、脊椎の黄色靱帯 などに多く含まれます。また、弾性線維が豊富な軟骨を弾性軟骨といい、喉頭蓋軟骨、耳介軟骨がそれに含まれます。
▶ 線維性結合組織の細胞成分
① 線維芽細胞
線維芽細胞は細長い紡錘形の細胞で、膠原線維(コラーゲン線維)を産生します。
線維芽細胞は創傷治癒でも重要で、外傷などで組織が欠損した場合、線維芽細胞が増殖をし傷口を膠原線維で埋めます。
② 大食細胞(マクロファージ)
血液中の単球が血管外に遊走し大食細胞(マクロファージ)となります。名前のとおり、旺盛な食作用で異物を貪食します。
マクロファージの細胞内には加水分解酵素を含むリソソームを多数蓄えており、貪食した食胞とライソソームが癒合し、ファゴリソソームとなります。リソソームの加水分解酵素の働きにより内容物が融解することにより細胞内消化が行われます。
マクロファージは異物を貪食するだけではなくて、細胞内消化にてバラバラに分解した異物の破片をヘルパーT細胞に提示する抗原提示という極めて重要な働きがあります。
③ 肥満細胞
肥満細胞は大量のヒスタミンをはじめとする化学伝達物質(ケミカルメディエーター)を蓄えて、丸く大きく太っていることから名付けられました。(身体の肥満とは関係ないことに注意)
肥満細胞の細胞表面にIgE抗体の受容体があり、ここにIgE抗体と抗原が結合すると細胞内に蓄えたヒスタミンが放出されます。ヒスタミンは毛細血管を拡張し、血管透過性を高める作用があります。花粉症などに代表されるI型アレルギー(即時型)を引き起こします。
④ 形質細胞
形質細胞はB細胞より分化し、抗体を産生する細胞です。細胞内部は粗面小胞体が発達し、タンパク質合成が盛んであることを物語っています。
抗体は免疫グロブリン(γ-グロブリン)とも呼ばれます。抗体は特定の抗原と結合する能力をもちます。細菌などの抗原と抗原抗体複合体を作って凝集させたり、ウイルスなどの抗原に結合して、その感染力を失わせることにより、身体防御に働きます。
▶ 抗体の働き
▶ (参考)免疫グロブリンの種類
< ① IgM抗体 >
< ② IgG抗体 >
< ③ IgA抗体 >
< ④ IgE抗体 >
< ⑤ IgD抗体 >
⑤ 脂肪細胞
脂肪細胞は大量の中性脂肪を蓄えた細胞。 核は細胞の端に押しつぶされるように寄っています。エネルギー貯蔵、皮膚に柔軟性を与える、熱の放散を防ぐ等の働きがあります。脂肪細胞の脂肪滴は、血液中から取り込んだ脂肪酸を素材として脂肪細胞内で中性脂肪に合成して貯蔵する他、グルコースを取り込むことによっても脂肪酸が合成されて、中性脂肪へと変換されます。
■ 軟骨組織
軟骨組織は軟骨細胞と細胞間質(軟骨基質と線維成分)からなり、線維性結合組織の特殊化した形となります。
① 硝子軟骨
硝子軟骨は最も基本的な軟骨です。
関節軟骨や肋軟骨、気管軟骨を始め,多くの軟骨が硝子軟骨です。
② 弾性軟骨
弾性軟骨は弾性線維(エラスチン)が豊富で、ゴムのような弾力性に富んだ軟骨です。耳介軟骨と喉頭蓋軟骨が弾性軟骨です。
あはきの教科書には「鼻軟骨」も弾性軟骨に分類されています。しかし、標準組織学などの組織学の専門書では、鼻軟骨は硝子軟骨に分類されています。
③ 線維軟骨
こちらは線維軟骨は膠原線維が豊富で圧迫に強いのが特徴です。
硝子軟骨にも線維成分として膠原線維は含まれていますが、線維軟骨はその割合が特に高いものです。
線維軟骨は、椎間円板、恥骨結合、関節円板、関節半月にみられます。
■ 骨組織
骨組織も結合組織のひとつに分類されます。細胞成分がまばらに存在し、細胞間質にあたる骨基質が豊富に存在します。
骨基質は有機質の膠原線維(コラーゲン)と、無機質のアパタイト(リン酸カルシウム)からなります。膠原線維は骨のしなやかさをつくりだします。アパタイトは骨の丈夫さをつくりだします。
細胞成分は骨芽細胞、骨細胞、破骨細胞の3種類です。
骨芽細胞は骨基質を産生する細胞です。はじめに有機質からなる類骨を分泌し、これが石灰化することにより骨基質となります。類骨は骨量のおよそ50%、骨重量の25%を占めます。線維成分は膠原線維で、基質はコンドロイチン硫酸とオステオカルシンがほとんどです。骨芽細胞が分泌した類骨にアパタイトが沈着することにより丈夫さとしなやかさを合わせ持つ骨基質ができあがります。
骨芽細胞が自ら分泌した骨基質に閉じこめられると、骨小腔に収まる骨細胞となります。周囲の骨細胞同士は突起で連絡しあい、骨にかかる負荷などを監視しています。
破骨細胞は、骨基質を溶かして吸収する細胞です。この働きを骨吸収といいます。破骨細胞は複数の単球が癒合してできる多核細胞です。
▶ 類骨と石灰化骨/骨粗鬆症と骨軟化症
▶ 骨のリモデリング
骨は生涯を通じて、常に少しずつ古い骨が溶かされ、新しい骨へと作り替えられています。これにより骨の強度が保たれます(骨のリモデリング)
▶ 骨の構造(長管骨)
▶ 骨の組織構造
こちらは骨の組織構造。緻密質の部分を拡大したものです。一見、複雑そうに見えますが、実はそんなに複雑ではありません。
ハバース管とフォルクマン管という2つの管があり、血管や神経が走っています。ポイントはハバース管のほうです。フォルクマン管は骨を横切るように走行しています。一方のハバース管は骨の長軸に沿うように走っています。
「ハバース管」は、「バー」と伸びるから、骨の長軸に沿うと覚えると忘れないと思います。
骨芽細胞が骨を作る時も、血管から栄養が必要です。だからハバース管を中心として骨芽細胞がバームクーヘンのように骨を作っていきます。これがハバース層板といい、ハバース管とハバース層板を合わせて骨単位(オステオン)といいます。
▶ 軟骨内骨化
軟骨内骨化は大半の骨の骨化様式です。
この方式でできた骨を置換骨といいます。
▶ 膜内骨化
膜内骨化は頭蓋冠(前頭骨・頭頂骨・側頭骨・後頭骨)、上顎骨、下顎骨、鎖骨の形成様式です。この方式でできた骨を付加骨といいます。
▶ 関節の構造
関節では、骨と骨が関節腔を隔て可動性に連結しています。2つの骨の骨膜は互い連なり関節包となります。関節包で包まれた部位は関節腔で滑液で満たされています。
関節腔内で向かい合う骨の表面は硝子軟骨である関節軟骨で被われています。関節軟骨には血管は分布せず、関節腔内を満たす滑液によって栄養供給を受けます。
関節包は、密性結合組織の線維膜と、内側を被う疎性結合組織の滑膜からなります。線維膜は向かい合うそれぞれの骨膜の延長が関節包となり関節を包むものです。内側の滑膜は、関節腔に突出する滑膜ひだをもち、単層あるいは2〜3層の滑膜細胞に被われています。滑膜細胞のには毛細血管網が発達していて滑膜は滑液の分泌を行います。滑液は関節軟骨に栄養を供給するとともに、関節運動の際に生じる摩擦や抵抗を減弱して動きを滑らかにする働きがあります。
▶ 関節の種類
【1軸性】 骨が特定の1軸のみを中心として動く関節。
【2軸性】 前後と側方への屈伸のように互いに直交する2軸を中心として動く関節。
【多軸性】 3軸以上を中心として動く関節。
関節の名称、種類、運動軸の数の組み合わせは非常によく出題されます。しっかりと理解して覚えてください。ひとつひとつ確認していきます。
■ 血液とリンパ
結合組織としての概念で血液を考えた場合、細胞要素が血球で、基質にあたるのが血漿です。血液では細胞要素が基質を作り出したのではありませんが、便宜的に結合組織に分類します。
▶ 血液の成分まとめ
▶ 血球の分化
▶ 赤血球
赤血球は酸素の運搬を担う細胞。
赤血球は直径 約7〜8μm, 厚さ 約1〜2μmの円盤状で, 両面の中央がくぼんだ形。
赤血球の数:血液1μl (mm3) 中に 男子で500万個, 女子で450万個。
赤血球は無核の細胞。(赤芽球より脱核して作られる)
酸素の運搬を行うヘモグロビンを含みます。
古い赤血球は脾臓で破壊され、ヘモグロビンはビリルビンとなります。
▶ 白血球
白血球は生体防御に関わります(免疫)
好中球・好酸球・好塩基球は細胞質内に多数の顆粒を含むため顆粒球と呼ばれます。一方、単球とリンパ球は無顆粒球と呼ばれます。
組織の障害や異物の侵入などで、最も最初に対応するのは好中球です。好中球が侵入した細菌などの異物を除去してくれたら、問題なく終わるのですが、好中球だけでは対処できない場合には、抗原提示細胞とヘルパーT細胞を中心とする獲得免疫の出番となります。
▶ 自然免疫と獲得免疫
【自然免疫】 T細胞の指令が不要。生体に元々備わっている。好中球による初期対処やマクロファージの貪食、NK細胞など。
【獲得免疫】 マクロファージや樹状細胞からの抗原提示を受けたT細胞の指令による。特定の抗原に対する抵抗性を増大させ、また抗原の情報を記憶することができる。