− 学習のポイント(神経組織) −
■ 神経組織
▶ 神経組織の構成
神経組織は情報伝達を働きとする組織で、神経細胞と神経膠細胞よりなります。
神経細胞はニューロンとも呼ばれ、刺激により活動電位を発生させ、他の細胞に情報を伝達します。神経細胞体、軸索、樹状突起からなります。
一方、神経膠細胞はグリア細胞とも呼ばれ、神経細胞のサポート役として、支持・栄養・代謝などに関わります。
中枢神経系では星状膠細胞、希突起膠細胞、小膠細胞、上衣細胞の4種類。
末梢神経系ではシュワン細胞があります。
▶ 神経系の分類 - 中枢神経と末梢神経(解剖学的分類)
中枢神経はまさに身体の中枢として、硬い骨で厳重に守られています。つまり頭蓋骨や脊椎の中にある脳と脊髄を合わせて中枢神経といいます。
一般的に「脳」と言う場合、「大脳」のことを指すことが多いと思います。しかし解剖学で「脳」という場合には大脳・小脳・間脳・中脳・橋・延髄を総称して脳といいます。また中脳・橋・延髄は大脳を支える幹のように見えるので、脳幹といいます。
そして、脳から出る末梢神経が脳神経、脊髄からでる末梢神経が脊髄神経です。
脳神経は中枢神経ではありません!間違えないでください。
▶ 末梢神経の働きによる分類
末梢神経系は身体の運動や感覚機能を司る体性神経と、循環・呼吸・消化などの各種の自律機能を司る自律神経に分類されます。
言い換えると、体性神経系は動物的な機能を司り、自律神経系は植物的な機能を司ります。
また、興奮を伝導する方向によって、求心性神経と遠心性神経に分けられます。
体性求心性は感覚神経、体性遠心性は運動神経、
自律神経の求心性は内臓求心性神経、そして自律神経の遠心性が交感神経と副交感神経です。
▶ 末梢神経の解剖学的・生理学的分類 まとめ
■ 神経細胞(ニューロン)の構造と働き
神経細胞の構造についてみてみます。
神経細胞(ニューロン)は神経細胞体、樹状突起、軸索の3部位よりなります。
神経細胞体は細胞核が存在する、神経細胞の中心です。軸索が損傷をうけても、神経線維は再生できる可能性が高いですが、神経細胞体が損傷を受けるとニューロンの消失につながります。
樹状突起は他のニューロンより情報を受け取る部位です(求心性)。通常、複数あります。樹状突起の膜電位は刺激の大きさにより加算されるアナログ信号です。閾値に達して活動電位が発生するには、時間的・空間的な加重が必要です。
軸索は興奮を次のニューロンや筋に伝えます(遠心性)。2本あることはありません。軸索の興奮は一定で、全か無の法則に従うデジタル信号です。
髄鞘の部分は電気を通さない絶縁性の部分で、有髄神経の活動電位は髄鞘と髄鞘の間にあるランビエ絞輪に発生します。この時、活動電位は跳ぶように伝わっていきます。これを跳躍伝導といい、有髄神経の活動電位は無髄神経に比べて速く伝導します。髄鞘を作る細胞は、中枢神経では希突起膠細胞、末梢神経ではシュワン細胞です。
▶ 参考)ニューロンの4つの形状
▶活動電位の発生
▶活動電位の伝わり方
■ シナプスの構造と働き
ひとつのニューロンの軸索を伝わってきた活動電位が、次のニューロンや筋細胞などにその興奮を伝える仕組みをシナプスといいます。軸索を伝導してくる活動電位は電気的な信号ですが、シナプスでは神経伝達物質という化学的な信号に変換されて伝えられます。
神経伝達物質には興奮性と抑制性があります。興奮性の神経伝達物質は次のニューロン(シナプス後細胞)の膜電位を脱分極させます。
神経細胞の細胞膜はおよそ、-70mVに荷電しています。これを静止電位といいます。通常、閾値というのは静止電位より15〜20mV浅い位置にあります。つまり、-55mV〜-50mVくらいまで脱分極が進むと、Na⁺チャネルが開き、活動電位が発生します。
さて、ここで図を見ながらもう一度順序を追ってみます。
神経伝達物質が興奮性であれば、シナプス後電位を脱分極させます。そして閾値に達すれば活動電位が発生します。シナプス間隙に放出された神経伝達物質は、シナプス前細胞による再取り込み、酵素による分解、シナプス間隙からの拡散などによって濃度が低下し、反応が終息します。
▶ 活動電位に伴う電位の変化
■ 神経膠細胞(グリア細胞)
<中枢神経系の神経膠細胞>
中枢神経系の神経膠細胞(グリア細胞)についてみていきます。星状膠細胞、希突起膠細胞、小膠細胞、上衣細胞の4種類の神経膠細胞が存在します。
星状膠細胞は突起の数が多いのが特徴です。文字通り金平糖ように四方八方へと沢山の突起をだします。そして、毛細血管の周囲を突起で覆います。星状膠細胞は神経細胞と血管との間に介在して、血液中よりグルコースを取だして、神経細胞に送っています。これを血液脳関門といいます。血液中の有害物質が脳内に侵入するのを阻止するのがその目的です。
希突起膠細胞は、中枢神経系の神経細胞の軸索を取り巻いて、髄鞘を形成します。髄鞘を形成する細胞はとてもよく出題されますので、確実に覚えて下さい。中枢神経系は希突起膠細胞、末梢神経はシュワン細胞です。
小膠細胞はマクロファージと同じく食作用を持つ細胞です。脳内の掃除屋さんとして、異物や有害物質の除外にあたっています。
上衣細胞は、脳室や脊髄中心管の表面を覆う単層立方上皮の細胞です。脈絡叢では、脳脊髄液を分泌する脈絡叢上皮に分化しています。
<末梢神経系の神経膠細胞>
末梢神経の神経膠細胞についてお話します。末梢神経で髄鞘を形成する細胞はシュワン細胞です。
ひとつの希突起膠細胞が突起をのばして、複数の髄鞘節を形成するのに対し、末梢神経ではひとつのシュワン細胞がひとつの髄鞘節を作ります。
外套細胞は神経節の神経細胞体を取り囲んで神経細胞の保護と栄養供給を行なっています。こちらも末梢性の神経膠細胞のひとつとして考えられます。
▶ シュワン鞘 (髄鞘とは違うことに注意)
■ YouTube 神経組織 解説