奴隷体質と新海誠作品みたいな恋
起業家という道を経て、今は二作目の出版を目指している橋本なずなです。
「 そうそう、」
「 でね、彼氏と別れたのよ 」
友人とご飯に来ていた。
北新地のバーで働いている友人は、“色々な人” を見ているプロ。
私は最近別れたパートナーについて、(元)彼の書いた言葉を見せながら話をしていた。
『 うーん… でもこれって言語化力あるって言うのかな 』
「 えっ 」
「 え待って、私ずっとそこが好きで付き合ってたはずなんですけど？笑 」
『 いやごめんね、なんか文章からして・・・傲慢さを感じる 』
『 そもそもこれって “なずなちゃんのどういう言動が問題か” を言葉にしてって求めたんでしょ？ 』
「 そうだね 」
『 けど、ここに書かれていることって全部 “自分がどう感じたか” だよね 』
『 “なずなちゃんのそれを受けて” 自分がどう感じたかを伝えるべきで、重要な “それ” の部分が書かれてないよね 』
「 たっ…しかに 」
私は妙に腑に落ちた。
この4ヵ月間、似た者同士だと思っていた(元)彼と、どうして別々の道を歩むことになってしまったのか ——— 。
解釈力、思考力、言語化力。
私はこの3つの力を持っていると思う。
何かを見聞きし理解する “解釈” というインプット。
それを自分事に落とし込み咀嚼する “思考” というリフレクト。
そのうえで自分が感じたことを言葉にする “言語化” というアウトプット。
けれどこの3つは、必ずしも揃っているとは限らない。
他人の出来事にも共感したり一喜一憂できたとしても、自分の意見や感じたことを言葉にできるとは限らない。
はたまた自分の言葉は持っていても、自分の中の辞書に載っていない言語は理解できず、また、他人事はその域を超えない。
というか、どちらかに偏っている場合が殆どなのかもしれない。
私も3つの力を持っていると言いつつも、均等に自信があるわけではない。
もう1つの要素を加えることで、この3つを上手く回していると思う。
自分の理解や起こした言葉が相手にとっても正しいかどうか、“確認する” というアジャスト（ adjust : 調節、是正、適合させる ）。
解釈 → 思考 → 言語化 → 確認、
私はそのステップをお仕事や人付き合いに、特にパートナーシップにはより心掛けて使っている。
一方がどれだけ言葉にできようとも、もう一方の感情や意図、物事への解釈の時点ですれ違っていたら、結果も違って当然だ。
(元)彼はアウトプットはできるけれど、インプットは苦手な人だったのだと思う。
事実、(元)彼が最後に言葉にした私の問題点とやらは、そもそもの言動が私の意図とは異なって受け取られていたり、書体や文章の構成も私に伝える気があるのかすら疑わしいものだった。
『 なずなちゃんは付き合う人を選ぶよね。なずなちゃんと同レベルでないと難しいと思うし、そこにギャップがあると両方が苦労すると思う 』
「 えー、むっずいなぁ 」
『 まぁ、ちなみに僕はドМだから、相手に言われたことはダメ出しだろうが何だろうが超従順に ハイッハイッ! って聞くけど 』
『 この僕が尽くすんだから “それに値する人間であれよ” っていうスタンスでいるけどね 』
「 ———！！！！！ 」
「 それだ！！私もそれが良い！！！ 」
「 一般的な倫理観とかモラルとか “普通は~” って云われるものを、私は少し欠けてるかもなぁって思うの 」
「 だからそれを調節することは些か難しくて 」
「 でもその代わりに時代に名を残す人間になる自信だけはあるし、その為だったら努力も惜しまない！ 」
『 そうそう、それに仕えることに悦びを感じる “奴隷体質” の人間もいるのよ(笑) 』
「 そっかそっかぁ！私は奴隷体質のパートナーを持つと良いんだぁ！ 」
※ 彼らは特殊な訓練を受けてこの会話をしています ※
（ “奴隷体質” はまじで本人が言ってました、私じゃないです ← 重要 ）
友人との食事から帰った後、私はその他にも抱いた(元)彼への鬱憤を、如何にしてnoteに書いてやろうかと鼻息を荒くしていた。
しかし、お風呂から上がり髪を乾かしながら、
次々とスワイプして流れるリール動画を無心で観ていた時だった。
テイラースウィフトのライブに来た脳腫瘍と闘う9歳の少女に、テイラーがサプライズをするという動画。
私は、そのたった50秒に、涙を流していた。
なんだか浄化された気がした。
どうせ書くなら枯れた花より、これから咲く花のことを考えたいと思った。
そしてリールのスワイプを続けると、数々の美しい景色たちがより一層、私の心に光を当てた。
私、今年の夏は新海誠作品みたいな恋がしたい。
新海誠作品に出てきそうな朝焼けや花火や海を、（あわよくば奴隷体質な）パートナーと一緒に見たい。
一緒に汗を流したり、音楽にノったり、爆笑したり、号泣したり、感動したりしたい。
25歳のアツくて青い春な夏。
走り出す準備はできている。
● 併せて読みたい ●
n回目の彼氏と別れたって話
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