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2人にプロポーズされた時の対応を、私はまだ習っていない。[後編]

こんなことを話せるのはトモくんしかいない。
性別と一回り以上の年齢差、立場の違いと、友達以上の居心地の良さが故に、他の友人とは一線を画している。
私にとってトモくんが特別な存在であることは、紛れもない事実だった。

そして、その日の帰り、トモくんは思わぬことを口にした。

前編はこちらから

日を跨ぐまで呑んだ後、寒空の下、ふたり並んで帰路につく。

『 なずなさん 』

トモくんが私をそう呼ぶ時、“私がどういう人間か” を述べるか、真剣な話のどちらかだ。

また好きだって言われるんだと思った。あと何度振れば気が済むんだよ、と。

『 なずなさん 』

『 僕は、もう、なずなさんの人生をまるごと受け止める気でおる 』

「 えっ 」

『 なずなさんが 苦しい とか しんどい って思うなら、自分の好きなことだけをしたいと思うなら、僕が養います 』
『 掃除も洗濯もするし、なずなさんは好きなことだけをしたらいい 』
『 僕に、なずなさんの人生を一緒に背負わせて欲しい 』

『 なずなさんが好きやから、僕と結婚して欲しい 』


今これを書いている私が、文字を打つ手が止まるくらい、

止めて、衝動的にトモくんに電話を掛けてしまうくらい、その夜に贈られた言葉は重かった。

重くて、あたたかくて、嬉しくて、暗闇に差した光のようで、

気が付けば私は泣きながら、トモくんの想いに耳を傾けていた。


けれども既に、私に向き合っている男性がもう一人いた。

サトシ(35歳・ゲーム会社勤務)こと “1人King Gnu” の彼は、先月、私の身に起きた性被害の件を機に一度は破局したものの、彼がもう一度チャンスを求めたことで再び向き合い直していた。

普段も連絡はずっと取っていて、私はプロポーズされたことを打ち明けた。
正直、かなり胸を打たれたことも、私を失いたくないのなら、あなたがどう思っているかを聞かせて欲しいということも。


数日後、彼は会いに来て言った。

『 なずなの人間関係の中で誰よりも短い付き合いやけど、これまで過ごした時間で、俺はなずなにハマりきってる。“なずな中毒” になってる 』
『 なずなと交わしてきた会話から、俺はなずなの知性、脳内、頭の中に恋をしてるし愛してる 』
『 なずなの “一番” 、“唯一無二” という席で、俺が知らないなずなも、未来のなずなも見たいし、知りたいし、体験したい 』

『 なずながしたい “自己表現” に全振りできるように、俺は俺の課題を解決していく。だから ——— 』

彼は荷物の中から茶色い封筒を取り出すと、一枚の紙を目の前に広げた。

『 僕と結婚してください 』

それは、婚姻届だった。

私は驚きのあまり、吹き出して笑ってしまった。
初めて見たそれに興味深々になりながらも、サトシの言葉をきちんと受け止めた。


私はそれから暫く困っていた。酷く悩んだ。

今すぐにでも私を苦しみの中から救ってくれる、そのうえ好きなことをしたらいい、と言ってくれるトモくん。
片や、私に刺さる言葉をいつも無意識的に並べられて、感性や価値観が限りなく近く、容姿がどストライクで、セックスの相性が最高のサトシ。

でも、トモくんには “好き” とか “抱かれたい” とか恋愛的な感情を抱けなくて、サトシには現実的な課題が幾つかある。


このnoteは “私の” 世界だから、ここでは嘘を付かない。
それは私がnoteを書くうえでの礼節で、決め事で、ルールだから、どちらにだって忖度はしない。


はっきり言って、どっちも好きだ。大好きだ。

これから下す決断によってどちらか一方を失うなんて、あまりに悲しい。
でもそれも現実で、いつかは、誰かが傷付くことになると分かっている。


トモくんが時折見せる、微笑み顔が好き。
最近までその顔を見たことがなくて、それは本当に親しい人にしか見せない表情なんじゃないかと思っている。
その顔をする時、トモくんの心の中には不純物を一切含まない、あたたかい感情が浮かんでいる気がする。
守りたいとか、支えたいとか、相手の幸せを願うような。


サトシは正解の無い問いを熟考する横顔と、歯を見せて笑う顔が好きだ。
視野が広い彼は、紙切れ一枚に対してだって多角的な解釈を広げる。
知識欲と探究心の泉はいつも湧き出していて、彼とは寝る間を惜しんでも朝まで話をしていたいと思う。
馬鹿話もするし、冗談も言う。そんな時、サトシの笑った顔を見ると、根にある穏やかさと優しさ、慈愛の心を垣間見る。


どんな決断を下しても、変わらないことが一つある。

私は二人に感謝しているし、大切に想っているし、彼らがつらい時には必ず側に居たいと思う。全力を尽くして助けになりたいと思う。

こんなに人に愛してもらえるなんて、自分はなんて恵まれているんだろう。
愛したいと思う人が二人もいるなんて、なんて贅沢なことなんだろう。

本当に、ありがとう、と思う。

この運命は、きっと母譲り。

お葬式の日、棺桶の中で眠る母は嫉妬するくらいに美しく、愛し合った二人の男性に見送られた。

お母さん、やっぱり私、あなたの娘だよ。

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