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どんな日も猫は寝ている

やることは沢山あるのに、やりたいことも沢山あるのに、やらなければならないことも沢山あるのに。それでも何も出来ない日がある。顔を洗うことや着替えることさえも面倒で、今日を始める気持ちになれない。

少し重たい足元を見れば、猫が布団の上で丸くなっていた。私は猫が起きないように寝返りをする。布団の中でゆっくり足をすぼめて、反対側を向き、猫の重みを避けて足を伸ばした。

とっくに日は昇っていて部屋はとても明るい。窓の外からは、屋根の雪が溶けて落ちる音も聞こえる。数日間降り続いていた雪は止んで、今日は少しだけ暖かそうだ。それでも吐く息は相変わらず白い。一晩かけて作り上げたこの温かさを手放すのが惜しくて、猫を言い訳にもう一度布団に潜り込む。少しだけ、少しだけと思いながら。

毎日心躍る朝を迎えたいけれど、毎日というのは難しいみたいだ。でも今日が良い日でも、今日が悪い日でも、猫は変わらず寝ている。それに少しだけ安心しながら、いつもよりも遅い朝を始めた。

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永松 杏夕実|絵描き
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