シェア
「ステライルコクピット」を知っているだろうか。 《sterileは無菌の、の意》航空機が高度約3000メートル以下を飛行する間、客室乗務員からコックピット(操縦室)への連絡を原則として禁止すること。事故の多発する低空域での操縦に集中できるようにするため。 このコトバンクの定義は正しいが、私の日々の実感ではコクピットにいる2名のパイロットが運航に無関係なことをしゃべらないことが、現代のステライルコクピットの理解のされ方だと感じる。つまり、ある高度までは、飛行機を運航するため
先日、ある弁護士がテレビの生放送中にこんなことを言う場面を見た。 「その発言は、放送法違反なので謝ったほうがいいです。」 その弁護士は、隣に座るキャスターが暴言ともとれる発言をしたことをその場でたしなめたのだが、私はこれをみたときに、あぁ、この人はプロの弁護士なんだなと感じたのだった。 なぜ私がそう感じたのかというと、その人が「その場で、直ちに」指摘をしたからだ。 今、となりの人から出た発言が、遠い昔に机の上で勉強した「放送法」に違反するとその場で、すぐにわかること、
次の動画を2分ほど見てほしい。真ん中の赤いカップにチョコレートが隠され、シャッフルされる。動画の最後で、どのカップにチョコレートがあるかを聞かれるので、答えてみよう。動画は、途中再生される。3:00ごろまで見れば十分だ。 ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ どうだろうか。質問の全てにYESと答えられただろうか。 選択的注意の罠動画にあるように、人は、バイアスにはまると、全体が見えなくなる。アヒルは見えても、5本目の手やカップの
今回は、そこそこうまくいくと思っていた。 通算で4回目となるOCA(Operacional Compitency Assessment 定期審査)だ。FOとして通常の業務をこなし、シムの勘所も、準備の仕方も、心構えも、だんだんとわかってきた。そうそう悪いことにはならないだろうと思ったのだ。 パイロットがやっているブログの中でも、自分の失敗談を具体的に書いているのは私くらいなものだろう。なにしろ、あまりあけすけにするとキャリアに響く可能性がある。笑 でも、私が曲がりなりにも
明日はシミュレータチェックがあるが、こんなところで字を書いている。 フライト中、よくキャプテンに 「シミュレータチェックには、どんな準備をしているの?」 と聞くのだが、答えには大きく分けて二つの傾向がある。 準備する派6か月ごとに義務付けられているシミュレータチェックは、約一か月前に日取りがきまり、ロスター(スケジュール表)に割り当てられる。 一緒にチェックを受けるキャプテンは、普通のフライトと同じようにランダムに割り当てられる。通常のフライトと違うのは、同じベース
短く、特に問題ないルートのはずだった。 敬語が邪魔になる場合近いので、巡航高度は12000ftと低めだ。 離陸して、低層の雲を抜けて上昇していると、目の前に層積雲。割と揺れそうな感じ。しばらく考えて、 「Request Flight level 160」 とキャプテンにオーダー。PMのキャプテンがそれをATCに伝える。雲の上を飛ぶために16000ftまで上昇することにしたのだった。最近は、意識してわざとPleaseやDo you mind~、If you are ha
Command Praticeのつもりで早めにShow Upして、天気と燃料を見ていた。 SIGMETからエンルートのシビアアイシング(8000ft - FL190)が今日のテーマになるかと考えた。NOTAMとRAIMをチェックしたところでキャプテン登場。 フライトプランニング: 横風制限エンルートのシビアアイシングに気を付けようとキャプテンに伝えたが、怪訝な表情。「Could be Sky Clear じゃね?」と。それよりも、ハミルトンの風がやばいな、とのこと。見てみ
現代の旅客機のほとんどは、2名のパイロットで操縦するように設計されている。通常、ひとりがキャプテンで、もう一人がファーストオフィサー(FO)だ。ファーストオフィサーは、副操縦士とかコーパイ(ロット)などとも呼ばれることからも、キャプテンに比べて半人前であるという印象を受けやすい。最近では、1名乗務の飛行機の可能性を航空機メーカーが言及したりしている。 キャプテンの隣で、FOは何をしているのだろうか。見習い?そういう面もあるだろう。だが、FOにはFOの役割がある。そして、これ
飛行機がしっかり飛んでいさえすれば、PFの9割の仕事は終わったも同然だ。まずは飛行機をちゃんと飛ばせなければいけない。でも「ちゃんと飛ばす」とはどういうことだろう。 一言でいえば、いつでも、どこでも、どんな状態でも、所望のスピードとプロファイルを出すことができるということだ。これは、口で言うほど簡単ではない。特にオートパイロットに頼り切って飛んでいるといざというときに飛ばせない。エンジンが一発止まったりしたらなおさらだ。 具体的に見てみよう。 離陸直後にエンジンが壊れた
細かいことを言ってくる人が嫌いだ。 特に、自分がPF(操縦担当)として飛んでいるときに、横からあーしろこーしろと言われるのは、好きじゃない。当たり前だ。勘弁してくれよ、曲がりなりにも3本線入ってここに座っているんだ。飛行機ぐらい飛ばせるよ、と。 でも、そうやって自分の立場でしか物事を考えられなくなってきたら、注意しよう。人間だからしょうがない、普段は理性的でも、疲れていたり、プレッシャーがかかれば誰だって余裕がなくなるものだ。だから、それはサインだと思って、少し立ち止まっ
もう少しでラインに出てから1年になる。 通常運航で面食らうことはほとんどなく、ビジュアルアプローチが楽しくてPFばっかりやっている。オーバーナイトデューティ(1泊2日の業務)では、奇数レグ(2往復+1レグなど)となることが多い。その時はだいたい3PF:2PMで(PF=操縦担当・PM=操縦以外担当)を希望する。 1年前は、ついていくのにも精一杯だった。なんというかタスクとタスクの「行間」を読めないので、常にタスク処理が後手に回っていた。結果、全ての仕事が遅れて遅れてまるで自
小さい頃から、帽子をかぶる職業に心を惹かれていたように思う。 例えば、電車の運転手、例えば、パイロット、自衛官、警察官。みんな帽子をかぶっている。ヘルメットもかっこいいけど、ちょっと違う。ヘルメットは、頭を外傷から守る、という明確な目的があるのに対し、帽子は、機能的にはあってもなくても変わらない。 実際に、私が今の仕事で帽子をかぶるのを忘れても、実務を遂行するのに困らない。機外点検の時にオイルが目に入らないようにするため、なんてデタラメなことが言われることがあるが、そんな