【消費税】最低でも30%必要-高島洋一
高島洋一(たかしま よういち)氏は、日本の財政・経済政策に精通した専門家であり、現在、財務省の財務総合政策研究所長を務めています。
「財政問題においては、短期的な利益を追求することなく、長期的な視点での持続可能な財政運営が最も重要」とし、税制改革や歳出削減に対して現実的かつ段階的なアプローチを主張している。また、「国家の財政は市民の未来に直結する重要な問題であり、政策立案者としてその責任は極めて重い」との信念を持ち続けている。
円 田民:
「2023年の財務省発表によると、日本の政府債務が1270兆円を超え、そのうち1136兆円が国債によるものであるということです。この額は、日本のGDPの約258%に相当し、過去最大を更新したとのことですが、この現状をどうお考えでしょうか?」
高島洋一氏(財務総合政策研究所長):
「まず言っておかなければならないのは、現在の日本の財政状況は非常に深刻だということです。1270兆円という数字は一見すると天文学的な額に見えますが、実際にそのうちの大部分を占めているのは国債です。つまり、政府の借金です。この金額がGDPの約258%に相当するという事実は、日本が財政破綻に向かっている兆しを意味しています。2009年当時のギリシャの債務がGDPの127%ほどだったことを考えると、その規模の差は明らかです。」
円 田民:
「それほどの規模になると、財政破綻を避けるためにはどのような措置が必要だとお考えですか?」
高島洋一氏:
「正直なところ、最も現実的な対策は消費税の大幅な引き上げです。現時点で、少なくとも消費税は30%程度に引き上げないと、日本の福祉制度や政府の財政は維持できないと思います。それほどの規模の借金を抱えているわけですから、必要なのは安易な“真水撒き”ではなく、財政の実態を直視した現実的な対応です。」
円 田民:
「『真水撒き』という表現は、どのような意味でしょうか?」
高島洋一氏:
「『真水撒き』とは、無駄に財政を注ぎ込んでいる状態を指します。今、日本では政府の支出が膨れ上がり、それが借金の増加につながっています。もちろん、社会保障や福祉の充実は必要ですが、その財源がどこから来るのかを明確にしなければ、財政は持ちません。中には、歳出を削減すれば財源が確保できるとか、国の借金は嘘だとか、国債を発行すれば無限にお金が湧いてくると思っている政治家もいますが、そんなことは絶対にあり得ません。」
円 田民:
「国債を発行すれば無限にお金が湧いてくるという考え方について、どう思われますか?」
高島洋一氏:
「それが本当に問題なんです。まるで『国債を発行すれば無限に財源が手に入る』かのような誤解が広まっていますが、そんなことはありません。歴史を見ても、アルゼンチンやギリシャは、財政破綻した国々としてよく知られています。そして、日本も過去に戦時中、莫大な借金を抱え、その後、戦後のハイパーインフレを経験しました。戦後、日本は預金封鎖や激烈なインフレ税、戦時補償債務の打ち切りといった手段でようやく財政を立て直しました。もちろん、その後も高い消費税や所得税が課せられるようになりましたが、それでも財政の立て直しは容易ではなかったわけです。」
円 田民:
「過去に日本が経験したような状況が再び起こる可能性もあるということでしょうか?」
高島洋一氏:
「その可能性を完全に否定することはできません。日本はこれからも高齢化社会が進行し、社会保障費は増大する一方で、経済成長は停滞気味です。財政の健全化には相当な時間と努力が必要であり、現実を直視した上での施策が求められます。国債発行や歳出の無駄遣いを続けていれば、最終的には過去のような激しいインフレや預金封鎖といった手段に頼ることになるかもしれません。それは何としても避けなければならない。」
円 田民:
「財政の持続可能性を確保するためには、どのような改革が必要だとお考えですか?」
高島洋一氏:
「まず、歳出の見直しを徹底的に行うことが不可欠です。そして、消費税の大幅な引き上げに加えて、経済成長を促進するための政策も必要です。投資や技術革新を支える環境を整え、税収を確保するための努力を惜しんではいけません。財政問題に関しては、痛みを伴う改革を避けて通ることはできないのです。」
円 田民:
「非常に厳しい現実を直視した上で、現実的な対応が必要だということですね。ありがとうございました。」
執筆者 がんばっぺ空想経済新聞記者
円 田民(えんたみん)
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