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STUDER 169 ポータブル ミキサーの改造

 ポータブル アナログミキサーの名機の一つ、クラシックのホール録音でも活躍する STUDER 169のCHモジュール これに秘密の改造を施す…簡単に言うと 「信号の流れ」を 幾つか変更する

長年の伴侶だったAPIコンソールもそうだが、STUDERの卓にも思い入れがある…故に今回の投稿は長尺ものです

私が20代の頃在籍した赤坂見附のAMS「赤スタ」は1スタ 2スタともStuderのミキシングコンソールだった

189 Quad…16トラック マルチレコーディング対応で4chマスターバスのスプリット タイプスタジオ据置きコンソール
MTRのリモートは卓に付いていて chアサインも兼ねるクォードパンポットのジョイスティック付き
オプションでStuderのコンプリミ・モジュールを4ch…これはチョッパー方式のコンプで独特のコンプレッションとサウンドが他に類を見ないものだった(1ch 70万位だったか…)

時代は16トラックマルチから24トラックへの移行期(2インチアナログ)
赤スタでも既にマルチレコーダは巨体のA-80-24が稼働していたがコンソールもマルチも新しいモノにということで幾つか候補を選び情報を集めていた

77年当時 コンソールの候補はヘリオス、カダック、ソリッドステートロジックの三つだった

一つは問合せた時点で会社が消滅していた…ヘリオス…その後ebay等で モジュールがプレミア付きで取引されているディスクリートコンソールである

カダックは後に国内に二台程入った

結局 国内1号機としてのSSLを購入

ジェンセン インプットの28 I/O コンピュータなしで当時5千万…今では考えられない価格だ
代理店は神楽坂の河村電気研究所(まだSSLジャパンやスチューダー ルボックス ジャパンはない)
ノイマンもスチューダーも河村がやっていたのだ。「JBLのパラゴンを日本に入れたのも河村」

SSLに決定はしたが 先輩エンジニアのE氏からすれば「あまりメデタクは なかった」と推測する…
彼はハードに関しても凄腕で 189の音が今ひとつ冴えないのはコンソールの電源の問題だと気付き Studer純正の電源より遥かに優れたパワーサプライを作ってしまった人

私はこの人に「ソフト(録音やミックスの技術)だけでなく中身 つまりハードも解ってこそレコーディング エンジニアといえるんだよ」と教えられた

ヘリオスを一番入れたかったのだろう…

さて 何はともあれ新しいコンソールは購入したし、あとはマルチはA-800-24を導入し、スタジオも改装して新規オープンする筈だった...

だが 全面改装はオジャン 更にオーナーまで変わってしまったのだ

哀れ国内1号機 行き場を失い 事務所の片隅に鎮座まします事となり、後にビクターへと嫁いで行く…

そしてドタバタ劇の顛末は
1スタ 2スタの189を合体改造 28イン24アウト24モニタにして営業を続けることと相成る

(因みに国内2号機は六本木ワーナーパイオニアStに入った 35年程前に仕事で行った折 既にI/OモジュールのEQ等 半分固まっていた思い出がある
当時ワーパイ スタジオのチーフエンジニア録音課長は 島 雄一氏(ワイルド ワンズのEB/cho 島 英二氏の兄)

その後 SSLは「雨後の筍」の如く生えて来て…いや違った…「入って来て」SSLでなければ卓でない SSLが入ってなければ仕事が出来ません などというナンセンスでアホーな状況や輩も出現することとなる…

平河町に在った「赤スタ」…同じビルの2階がカッティング&プレスの「東洋化成」4階に赤坂「四川飯店」夜仕事の時は必ず坦々麺か煮込みソバ(モツ入り)…旨い!本当に旨かったが安月給の身には高かった(残業やショクナイで稼ぐしかなかったが残業100h〜200hなんてザラにあった)
当時で8百幾らの坦々麺
陳健民氏の時代だ

うーむ、、、色んなコトを 昨日の事のように 思い出してしまった

やはり 思い入れは深い
ということで Studerの卓には特別な思いがある

後発169モジュール5本のカバーを開けると変り種が出て来た
OLDなのでリキャップは当たり前だが 1本だけCの殆どがニッケミ(Black Gateのもある)
Rは一部を除いて3種のカーボン皮膜(ひとつはモールドしてあるが恐らくカーボン皮膜)とカーボンコンポジション
しかも1/2W 何れもメーカー不明

当時StuderはPHILIPSやWIMAのコンデンサ、フィリップスのカーボン皮膜(キンピやカーボン コンポジションも使っている)が定番

この1本のモジュールは意図的に音を変えてあるのかな…オリジナル パーツが入手出来なかったか

まだ 到着していないモジュールの中にこれと同じ変更をしたものがあるかは判らないが 頭に入れておく必要があるので 印を付けとくことにしよう

オペアンプはLM301AN これは741と同等の古典的なICオペアンプ

今では使う人は殆どいないだろう…特性の優れた石がゴロゴロ転がってるから

しかし オペアンプだけで機器の音質や特性が決まる訳ではなく回路や他のパーツも関わって来る以上 169の場合

よく考えれば301で充分なんですね

流石に昔のスチューダー よく出来ている。

 

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