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五感をめぐる冒険、あるいはアナログの逆襲 第3話

指先の感触、手を動かしてわかること

なにごとも、手を動かすことでわかることがある。例えばわたしの仕事でいうと、デザインは手描きではじめる方が良い結果が生まれる気がする。紙に鉛筆で描くことによって、頭で考えたアイデアやコンセプトの段階ではわからなかったことが明らかになる。手描きという行為によって新しい発見をする。自分で考えたアイデアなのに、自分でも気づいていなかった未知のものが生まれてくる感覚が不思議だ。

あのスティーブ・ジョブズも、iPhoneを初めてリリースした時に最重要視したのは「指で操作する」ことだったという。その当時のタッチパネルはスタイラスペンで触るものが多かったのだけれど、「指こそが人間が生まれつき持っている最高のデバイスだ」という信念を持った彼は、指先の感覚を信じて開発指針を出した。デジタルデバイスで世界を変えた彼も、実はアナログ的感覚を大切にしていた一人なのかもしれない。

今の時代に最終的に必要になるのは、結局パソコンで作成したデータだけれど、わたしの仕事には手描きの過程が大切で、指先で考える時間が必要なのだ。

わたしの活動をさすanalographicという言葉は、analogとgraphicをくっつけた造語だ。このデジタルの時代に、手を動かしてものごとを考えるわたしの性分を表した言葉だ。

つづく

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YURIKO NAKAMURA
長いのに読んでくれてありがとうございます。