将棋Tips #17 3手詰の解き方 ④
今回は、ここまでの「まとめ」的なお話をしていきます。
◆ 詰将棋を「難しい」と感じるのは何故か?
ソレは、詰将棋を解くという行為が「マルチタスク(複数の作業を同時並行で行うこと)」だからです。どこかの記事で読んだのですが、人間の脳は、マルチタスク処理がもともと「苦手」らしいんですね。
だから、詰将棋を「難しい」と感じるのは「人として」当たり前のことなんですw。もともと苦手なことなんで、何らかの方法で「慣れる(訓練)」ということをしないと上手くできるようにならないわけです。
◆「情報処理」「読解」「記憶・整理」
詰将棋の、どの辺がマルチタスクなのか?
前回までの記事内容に即して、まずは「局面把握」。駒の位置と利き、玉の逃げ道など、様々な情報を的確にピックアップして「どの手から読んでいくのか?」とか「どういう攻め方をするのか?」などの方針を立てます。コレが上に挙げた「情報処理」ですね。
方針を立てたら、実際に指し手を読んでいくわけですが、読んだ結果(詰むかどうか)に加えて、手を読んでいく過程で得た情報(他の詰み筋のヒントになる事柄など)を整理して記憶しておかなくてはいけません。
また、立てた方針が間違っていた場合など、局面把握のやり直しや修正をしないといけなくなる場合もあります。こうした複数の作業を同時並行で処理していくことになるのが「詰将棋」というわけなんですねー。
◆「解ける問題」と「解けない問題」
3手詰を解くのに慣れてくると「解ける問題」と「解けない問題」が出来てくると思います。個人差や難易度の関係があるので一概には言えないのですが「解けない問題」が出来てしまうのは「読み抜け(見えてない手)」があるからです。では、どうして「抜けてしまう(見えない)」のか?
ソレは、上の方で言った「マルチタスク」と関係があります。3手詰に慣れてくれば(だいたい100問くらい解いた頃)「読解力」はついているんですよ。少なくとも3手は読めるんです。でも、他の能力が、特に「情報処理力」が、まだまだ足りないんですね。局面把握の時に「何の方針も思いつかない」とかいうのがソノ典型です。
また「指し手を読みながら情報を整理する」とか「どこまで読んだかを記憶しながら読み進める」など「マルチ処理」が出来ていないことも、よくあるケースです。全ての可能性のある手を読んでいるつもりでも、脳内で解いていると、どこかに「読んでない手」があって、ソレに気づかないってことがよくありますねー(俗に言う「迷子になる」ってヤツです)。
◆ 基本は「ベタ読み」
上で挙げたような「読み抜け」を極力減らそうというやり方が、「盤&駒」「紙&ペン」を使った「ベタ読み」という方法だというのは、過去の記事で既にお話しました。
上の方の「何の方針も思いつかない」場合でも「ベタ読み」を徹底すれば、詰将棋は「必ず解ける」ように出来ています(誰かが作った「問題」ですからねw)。逆に「ベタ読み」をマスターしておけば「解けない問題はない」とも言えますね(手数が長いヤツは、めっちゃ時間がかかりますがw)。
◆ 徐々に「読む手数」を減らしていく
ベタ読みに慣れて来たら、徐々に「読みを省略できないかどうか?」を考えていくことになります。前回お話しした「局面把握の段階で工夫する」というのがソノ一例で「もしも〜だったら」と考えてみて、方針を決めてから、実際の指し手を読んでいく、って感じですね。
また、100問、200問、300問と数をこなしていけば、上の方で言った「情報処理力」や「記憶力」「整理力」なども「手を読む力」とともに、自然と上がっていきます。毎日少しずつでも続けて取り組んでいくことで、徐々にではありますが「読む手数を減らす」ことが出来るようになっていくと思います。「経験を積む」というヤツですねー。
◆「脳内将棋盤」について
まとめの最後に「脳内将棋盤の作り方」について、ひとつのアイデアを紹介しておきます。
コレは意識してワザワザ作ろうとするものでもなく、実戦や詰将棋など経験を積んでいけば「自然に出来上がる」類のものではあるのですが「効率的な方法」くらいは考えてみてもイイんじゃないかな? と思います。
詰将棋の取り組み方として「数をこなしてナンボ」とか「わからなかったらすぐに答えを見てサクサク進むのがイイ」とかいうアドバイスを、耳にしたことがある方もいらっしゃるんじゃないかと思います。ここで紹介するのはソレを利用した「脳内盤の作り方」です。
まず「自分のレベルに合った」詰将棋の問題を1000題用意します。自分のレベルというのは「サクサク解いていける難易度」という意味です。ソレを「延べ」ではなく「1000種類」用意します。コレは、様々な局面を経験した方が脳内盤を作るのに適しているからです。
詰将棋の解き方としては「答えを見てサクサク進む」です。数をこなさないといけないので当然です。ただ、ポイントがひとつあります。ソレは、答えを見たとき「脳内で手順をなぞる(駒を動かす)」です。問題図に戻って、ソコから脳内で正解手順(できれば変化順も)をなぞって下さい。こうすることでソノ時点での「脳内盤」が鍛えられます。
あとは、用意した詰将棋を「脳内で」なるべく早いペースで解いて数をこなしていけば「脳内盤の出来上がり」です。個人差はありますが、1000問解くごとに「盤の面積」が広がっていく感じになります。
最初は「3マス×3マス」〜「5マス×5マス」くらいだったものが、徐々に広がり鮮明になってきます。早い人なら5000問、遅くても10000問を超える頃には「9マス×9マス・フルサイズ」の将棋盤が脳内に出来上がるんじゃないかと思います。
「脳内盤が、なかなかフルサイズにならない」場合は、5手詰をサクサクと解けるようになった辺りで「戦術書の読み込み」を始めると、サイズが広げやすくなると思います。戦術書の図面と図面の間にある「手順」を将棋盤を使わずに「脳内で並べる」感じですね(図面が略されているところは、将棋盤を使った方がイイですが)。コレも個人差があるので「目安」でしかないですが、だいたい20〜30冊くらい読み込めば、フルサイズの脳内将棋盤で「棋譜並べ」的なこともできるようになるでしょう。
<補足> 用意する詰将棋は「3手詰以上のもの」です。「1手詰」だと、1問あたりの「脳内将棋盤の鍛え度合い」が低すぎるからです。逆に言うと脳内盤を意識するのは3手詰がサクサク解けるようになってからで十分ってことになります。3手詰から始める方も、どこかで、5手詰以上に移行すると「盤の成長」が早まります。要するに「適切な負荷をかける」わけです。また「数をこなす」と言っても、1日に1000問とかはダメです。多くても「30〜50問」に止めて下さい。「脳内将棋盤」というのは「長期記憶の一種」で、いくら激しく鍛えても睡眠を取らないと成長しませんし、一晩で成長する度合いも微々たるものだからです。「解きすぎ注意」です。
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さて、いかがだったでしょうか? 記事の内容が少しでも皆様の参考になれば幸いです。ではでは。
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