将棋Tips #14 3手詰の解き方 ①
◆ まずは「ベタ読み」で解く
「ベタ読み」というのは「可能性のある全ての指し手(応手)をシラミ潰しに読んでいく」ことです。原始的とも言える「ドロ臭い方法」なのですが、これが詰将棋を解いていく上で「イチバン基本のやり方」になります。
(これとは反対に「読む手数を出来るだけ省略して解く方法」は「応用編」ということにします。こちらは、また機会を改めてお話したいと思います)
また、今回は「3手詰に初めて挑戦する方」や「やってみたけど、ちょっと難しい」「解けることは解けるけど時間がめっちゃかかるのでしんどい」と感じられている方々をメインの対象にして「盤&駒」「紙とペン」を使った方法を中心にお話ししていきます。
(「頭の中だけで解きたい」という方も、回答手順自体はほぼ同じですので道具を使うところを「脳内」に置き換えてやってみて下さい)
下に「3手詰」の例題を上げますので、実際に解いていきたいと思います。
<局面把握>
まずは、玉方の駒の配置と利き、攻め方の駒の配置と利き、を確認します。いわゆる「局面把握」というヤツです。
将棋盤には、玉方の駒から順番に配置するのがわかりやすいでしょう。21へ玉、11へ香車を置きます。続いて攻め方の駒。33へと金、持ち駒には銀です。駒を並べ終わったら、頭の中でできる方は頭の中で、まだ慣れていない方は、盤上のマス目を指で押さえたり、実際に駒を動かしたりして駒の利きを確認します。
この時、特に意識する事柄として「玉の位置と利き」「攻め方の種駒(たねごま=攻めの拠点になる駒)の位置と利き」があります。この問題だと、相手玉の動けるマスのうち二ヶ所に、攻め方のと金が利いていますね。つまりこの「と金の利き」を使って攻めていくのが「有力そうな方針」ということになります。あと、玉方の守り駒である11の香車が、玉の「動ける場所」を狭めています。つまり「スミっこには行けない」ってことです。
以上で、この問題の「局面把握」は終了ですが、詰将棋に限らず、将棋の指し手を考える時には、まず「局面がどうなっているのか?」を掴むところから始めます。そこで得られた情報を元にして具体的な指し手を考えていくという流れですね。ここを丁寧にやっておくと、もっと複雑な局面に出くわした時にも役立ちますのでオススメです。
<全ての初手とその応手を指してみる>
「可能性のある全ての手をシラミ潰しに読む」というのが、この記事の主旨ですので、その通りに進めます。まずは、と金の王手から。
▲22と ▲32と
紙とペンを使って欲しいのはココです(もちろん、局面把握の段階で「攻める方針」などをメモするのもアリです)。この問題は「可能性のある初手」が5種類と少な目なので、スグに忘れてしまうことはないでしょうが、もっと複雑な問題や、もっと手数が多い詰将棋なんかだと「読み抜け」が起こる可能性が出てきます。それを防ぐためにも「紙&ペン」を使って、しっかりメモするわけです。
次に、それぞれの初手への玉方の応手を書いていきます(脳内で解く場合は、問題図を見ながらでイイので、頭の中で駒を動かして下さい)。
▲22と△22同玉 ▲32と△32同玉(△12玉)
上は、玉を逃げる場所がないので玉で取る一手。下は、玉で取る手と逃げる手があります。メモったら、将棋盤を使って、実際に駒を動かしてみます。続いて、それぞれの局面で「詰ます手」があるかどうかを考えます。頭の中ででも、盤上の局面から駒を動かしながらでも、どちらでも構わないので、やってみて下さい。いかがです? 詰みがありますか?
答えは「ない」ですね。と金の「初手」から始まる手順は、どちらも玉で取られてしまうと「種駒」が盤上から消えてしまって「王手」はできるものの相手玉を詰ますことができなくなります。というわけで、詰むかどうか考えた結果もメモっておきます。
▲22と△22同玉 ✖️ ▲32と△32同玉(△12玉) ✖️
なお、上の手順のうち(△12玉)は、書かなくても(考えなくても)イイ手になります。初手▲32とに、△32同玉を選ばれてしまうと詰まないということが確定するからです。このように、初手に対して複数の応手がある場合、ひとつでも詰まない手があるとき(要確認ですが)は、自動的に、他の手も詰まない手(順)ということになります。指し将棋だと「相手が間違える」ことがあるので、こういった「紛(まぎ)れ筋」にも「利用価値」があるかもしれませんが、詰将棋の場合は、バッサリと切り捨てて構いませんね。
次に、銀の王手を見ていきます。
▲12銀 ▲22銀 ▲32銀
まず「▲12銀」ですが、この手は、と金の王手と同じような意味で「✖️」ですね。「△12同玉」でも「△12同香」でも、盤上にと金しか残ってないので攻め駒が足りず、詰まなくなります。というわけで…
▲12銀 ✖️
初手は「抜け」を防ぐためにメモった方が無難ですが、考えている途中で詰まない(要確認)ことがわかったら、いきなり「✖️」をつけてしまって構わないですね。「可能性がある手」はメモりますが「ない手」は、その必要もないって感じです。続いて、残りの二つを見ていきます。
これらは「局面把握」の時に立てた方針の「と金の利きを使う攻め」なので「本命の初手」である可能性が高いですね。
わかりやすいよう図面にしました。この銀は、と金が利いていて玉では取れないので、応手は「銀の死角へ逃げる」△12玉の一手になります。種駒である「と金の利き」を使った攻めなので「有力そうな雰囲気」は出ていますけれども、果たして?
さて、ここで詰ます手があるでしょうか? 残念ながら「ない」ですね。もしも、23の地点へ他の駒が利いていれば「▲23と」とやれば詰みなんですけど、22に打ったのは「銀」なので「ないものねだり」って感じです。というわけで、考えてみた結果をメモ。
▲22銀△12玉 ✖️
そして、最後に残ったのが下の手。
この手も「と金の利き」を使った攻めで、十分に有力そうですが、これも、さっきと同じように「△12玉」と逃げられて、どうか?
ここで「▲23銀成」としてしまった方は、この問題が「3手詰」であることを思い出して下さい。その順でも、以下「△21玉▲22と」で詰みなんですけど、詰将棋には「玉を最短手順で詰ます」というルールがあって、その手順は「正解」にはなりません(実戦なら別に「反則」ではないですがw)。
上が「詰み上がり図」で「正解手順」は下のようになります。
▲32銀△12玉▲23と まで3手詰
<詰み上がりの確認>
この局面で玉が詰んでいることを、最後にしっかりと確認して下さい。32の銀と23のと金が、玉の動ける場所をしっかりと押さえていて、玉でと金を取るのも銀で取り返されてしまうので、ちゃんと詰んでいますね。
以上、3手詰を「ベタ読み」で解いてみました。お疲れさまでした。
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最後に「ベタ読みでの解き方(道具を積極的に使用)」をまとめると、次のようになります。
局面把握 ↓ 初手を全て書き出す ↓ それぞれの応手を指してみる ↓ 3手目に詰むかどうか考える ↓ 初手ごとに「考えた結果」をメモする ↓ 詰みがあったら「詰み上がり図(手順)」を確認する
文章や図を使って表すと「膨大な感じ」がしてしまいますが、やってること自体は、それぞれ「とてもシンプル」ですね。
3手詰を解く時、イチバンの「つまずきポイント」になるのが「初手と応手の2手を指した局面が、頭の中にハッキリと浮かばないこと」なんですね。これが完璧に出来るようになれれば「難易度的には1手詰とほぼ同じ」なので、あとは、それを初手の数だけ繰り返すだけでオッケーなわけです。
この「脳内に浮かびにくい2手先の局面」を、盤駒を使うことでハッキリと目に見えるようにするっていうのがコノ方法のキモです。また、初手と応手をメモしていくことで「思考過程」や「進行状況」を整理することができますので「読み抜け」を防止する効果も期待できます。
脳内で解く時もポイントは全く同じで「2手先の局面を頭の中にクッキリと描くこと」です。そして「思考過程」や「進行状況」をメモらなくても解るレベルで把握しておくことも同時にできれば完璧ですね。
次回は、他の例題を解きながら「次のステップ」についてお話していきたいと思います。ではまた。
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