将棋Tips #15 3手詰の解き方 ②
前回、3手詰の解き方として「ベタ読み(道具を使用)」を紹介しましたが今回も同様に進めていきます。手元に「盤&駒」と「紙&ペン」を用意して読んでもらうと内容が解りやすいかと思います。
まずは「回答手順(プロセス)」の復習から。
局面把握 ↓ 初手を全て書き出す ↓ それぞれの応手を指してみる ↓ 3手目に詰むかどうか考える ↓ 初手ごとに「考えた結果」をメモする ↓ 詰みがあったら「詰あがり図(手順)」を確認する
四番目と五番目は「ひとつのプロセス」として考えてもらって構いません。では、下の3手詰の問題を上の流れに沿って解いていきましょうか。
<局面把握フェイズ>
玉方の駒…13玉、11香、14歩、21桂 攻め方の駒…23銀、34銀、持ち駒…金
玉方の持ち駒は「残りを全て使える」というのが詰将棋のルールなので省略します。以上が「駒の配置」ですね。続いて、それぞれの駒の「利き」を確認します。今回は、攻め方の駒が盤上に二枚あり、相手玉を端っこに追い詰めているのでスグにでも詰みそうですが、どうでしょうか?
前回、特に意識することとして「玉の位置と利き」「種駒(攻めの拠点となる駒)の位置と利き」に注目するとお話ししました。玉の方は上で書いたように「動けるマスが少ない」って感じですが、「種駒」の方は「よくわからない」ですね。どちらの銀を「攻めの拠点」にするのか? それとも、両方の銀の利きを使っていくのか?
前回の問題のように「攻めの方針」がわかりやすい場合は、それに沿った手から読んでいけばイイんですが、今回は「保留」して進めることにします。
ただ、そのこととは別に注目していただきたいポイントがあります。それは「玉の逃げ道」と「玉方の守り駒が複数あって、玉が動ける場所が少なくなっている」という二点です。どうしてソコに注目するのか? は、説明するより、実際に問題を解いていく過程で示していきたいと思います。
<回答フェイズ>
まずは、持ち駒である「金の王手」から。
▲12金 ▲24金
上への応手は「△24玉」「△12同香」の二通り。下は、逃げられないので「△24同玉」の一手ですね。書き出すと以下の通り。
▲12金△24玉(△12同香) ▲24金△24同玉
盤に並べてみると解りやすいですが、この二つの局面で「詰ます手」はありません。玉に24へ逃げられてみると次の手が見えませんね。「✖️」です。で、ここで思い出していただきたいのは、局面把握で触れた「玉の逃げ道」についてです。
具体的に言えば「玉に24の地点へ逃げられた時どうするか?」ってことですね。実際にやってみて「初手に金で王手するのは、24へ逃げられて詰まない」ことが判りましたが、では、どうしましょうか?
そこで「局面把握」へ戻って「攻め方の銀の利き」を再び確かめてみます。すると34の方にある銀が「25の地点へ利いている」ことを思い出せるのではないかと思います。つまり「種駒の利きを使って攻めることができる」ってことです。詳しくは「持ち駒の金があれば、玉を24に逃げられた時に25の地点へ打って攻めることができる」です。
以上を踏まえて「銀の王手」へ行きます。以下の三通りですね。
▲14銀成(不成は省略します) ▲22銀不成 ▲12銀成
▲14銀成に、応手は三通りで、書き出すと下のようになります。
▲14銀成…△14同玉 ▲14銀成…△12玉 ▲14銀成…△22玉
初手は同じなので実際にメモするときは書かなくてもイイです。手書きならいわゆる「ツリー形式」で書いていくと後でわかりやすいですね。
上は、先ほどの「▲25金」と打てはするのですが、下段の方へ玉が逃げる手があるので詰みません。真ん中は「▲23銀成」などで詰みです。下は、持ち駒に金があるので「▲23銀成△31玉▲32金」で詰みますが、全部で五手かかります。詰みがあるかどうかを考えた結果を書き出すと下の通り。
▲14銀成…△14同玉 ✖️ ▲14銀成…△12玉▲23銀成 ○ ▲14銀成…△22玉▲23銀成△31玉▲32金 ○
ただし、前回の記事でもお話したように、初手に対する応手が複数ある場合に、そのうちのひとつでも詰まない順があれば、他の指し手も「無効」になります。下の二つの詰み筋を読むこと自体は、決して無駄ではない(読みの訓練や他の詰み筋のヒントになり得るという意味で)のですが「▲14銀成という初手は、正解手順ではない」ということになります。
初手▲22銀不成も、玉方の応手は三通りです。
▲22銀不成…△12玉 ▲22銀不成…△22同玉 ▲22銀不成…△24玉
上は、▲23金で詰みますね。どうやら、12へ玉を動かす手には23へ金を打つ手が有力みたいです。次は真ん中。
これは、▲23金と打っても△31玉と逃げられて、攻め駒が一枚足りていませんね。「✖︎」。下は、いわゆる「失敗図」というヤツです(図示する必要はないですが、せっかく作ったのでw)。
続いて、△24同玉の局面。
ここまで来て、ようやく出てきました。待望の「▲25金」。これが打ちたかったって感じの手で、しかも「詰み」です。でも…さっき、初手▲22銀不成には「△22同玉」で詰みませんでしたよね? というわけでこの手順も不正解です。どうやら、22の地点へ玉を移動させてしまうとダメなようです。
▲22銀不成…△12玉▲23金 ○ ▲22銀不成…△22同玉▲23金 ✖️ ▲22銀不成…△24玉▲25金 ○
残った初手は「▲12銀成」ですね。
応手は三種類ですが、それぞれの検討へ進む前に、ひとつ注目していただきたいのが「成り銀が、22の地点へ玉が逃げることを防いでいる」という点ですね。この駒はスグに取られてしまう位置なんですけど、ちゃんと働いているんですよね。
▲12銀成…△12同香 ▲12銀成…△12同玉 ▲12銀成…△24玉
上の二つへの指し手は同じなので、真ん中だけ図を上げます。
ここまで何回も出てきましたが、23へ金を打つ手で詰みですね。12の成り銀を香車で取っても詰んでいることをご確認ください。
▲25金を打ちたすぎて「詰んだ図」を作ってしまいましたが、12の成り銀を取らないで玉を逃げると、こういうハメになりますね。
▲12銀成…△12同香▲23金 ○ ▲12銀成…△12同玉▲23金 ○ ▲12銀成…△24玉▲25金 ○
というわけで「初手▲12銀成」からの手順は全て詰みとなりました。
<確認フェイズ>
全ての初手を検討してみて「全通りやってみたけど詰まない」というケースは、どこかが間違っているということなので「検討し直し」ということになりますが、今回は無事に詰みましたので、省略します。
なお、初手に複数の応手があって、全ての順で玉が詰む場合は、どれを答えても正解ということになります。なので「詰み上がり図」も複数になりますねー。詰将棋の本などでは「攻め方の駒を取る手を優先して載せる」という不文律みたいなものがありますので、本によっては三つ目の手順が省略されている場合もありますが(正解には違いない)。
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いかがでしたでしょうか? 前回はシンプルな問題でしたが、今回は、初手の数こそ少ないものの、玉方の応手が多めで複雑なものを選んでみました。「ベタ読み」という主旨に沿って漏れなく読んでいくと、合計で30手くらいにはなりましたかね?
文章や図面を使って細かく過程を示していくと「膨大な量」になってしまうんですけど、「盤&駒」と「メモ」を利用しているので「今、どの手を読んでるんだっけ?」とか「これって、既に読んだ順?」みたいに「迷子」になることは防げるのではないかと思います。
100問とか200問とか、詰将棋集一冊に載っている全ての問題を手作業で解くのは大変なので「ソコまでは…」なんですけど、少なくとも3手詰に慣れるまでは、コノ方法を採用していただけると「基本的な事柄」が身につきやすいんじゃないかと思いますので、是非お試しください。
ではまた。
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