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紡いだことばたち。
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2017年11月の記事一覧

詩 19、または、ある芸術家に捧げる詩

筆をにぎる
長く、細い指

あたまのなかの
精と卵が
ひとつになって

命が、生まれる

あたたかな水をたっぷり含んで
ひろがる
色、色、色

ふくらむ かさなる ほころぶ つながる

まじわる ぶれる ゆらぐ たゆたう のびる

もつれる みちる かわく ねがう とびちる

ふいに両の手からこぼれだす 青
深く、深い その青

それをすくいとって
指先はまた動きだす

強く、しなやかに

その軌

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詩 18

いってしまった夜は
もう二度と
帰らない
目を凝らしても
薄闇に見えるは
ただその背中

それもすでに遠く
曖昧な輪郭だけが
微かに揺れている

新しい夜は何食わぬ顔で
私を迎えにやってくる

青白い静寂の中
背中を丸め
心細さを、抱いて眠る
#詩 #現代詩 #朗読