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死ななかったあの日。

二十歳を過ぎた頃、もうこれ以上耐えられないとどうしようもなかったとき。友人が「置いてかないでよ」と言ってくれた。
いつだったか、こんな家ではもう生きていられないと号泣して訴えたとき、友人はわたしのあまりの泣きっぷりに笑いだし、笑われたほうは「なんで笑うの!」と怒りだした。
けっきょく次の日もわたしは生きていて、その友人とときどき美術館に行ったりしている。美味しいものを食べたり、かわいいものに触れたりして、あの日の続きを生きている。
そうとう面倒で迷惑で厄介だったろう。何より心配をこれでもかとかけたが、あの日に友人がいてくれたことを例えようもないほど感謝している。

9月は若い魂にとって不安定な月だ。想像する悲しみにまんまと気分を落とされる。
でも知っている、わたしは知っている。精神障害を負っていても友人はできるし、その関係を維持することも不可能ではないと。
ちょっと別の道を生きても、道すら歩いてなかったとしても、愛情があればまた出会える。

死ななかった日をカウントしていく。ゆっくりゆっくり数字が増えていく。
死ななかった日、どうかこれからも増えてくれ。

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