発達障害を抱えた社会人が、ミスを減らすためのタイムマネジメント術
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自分のペースで仕事を進めたいのに、上司から新しい仕事が舞い込んできて焦る。
きっちり手順書通りに進めているのに、他の仕事が気になってチェックポイントを見逃しミスをしてしまい、詰めの甘さを指摘される。
働いている発達障害を抱えた方は、きっとこのような悩みを抱えていると思います。
事実、僕自身もこうした悩みはどこまで長く障害者雇用として働いてもつきまとう問題です。
環境や立場が一つでも変わると、全てふりだしに戻って軌道修正をせざるを得ません。
これは会社にも自分にも、気力と労力を要するものです。
しかし、もしお互い気力と労力を減らす術があれば、その方法を採用したいと思いませんか?
この記事では、実際に僕が働く中で取り入れている3つのタイムマネジメント術を紹介し、自分で時間をコントロールできるヒントをお伝えします。
時間管理ができれば、相手から「しっかりしている」「責任感がある」と高評価もいただけるチャンスだってあります。
どうぞ最後までお付き合いいただければ、嬉しいです。
1.タイムマネジメントのコツ
①「かたまりの時間」で労力を要する仕事を行う
メールの返信・資料の作成…
そんな一定の時間で労力を要する作業は、「かたまりの時間」でまとめて片付けるのが重要です。
なぜなら、人の脳は、一度作業を中断するとペースを戻すのに時間を要するからです。
そのため、途中で雑務が入らないよう作業にかける目標時間を設定して、スケジュールを確保するようにします。
僕が取り組んでいる事例を、紹介しましょう。
僕は仕事で、社員のメールアカウントを発行する担当をしていますが、その中で4つの作業が発生します。
僕は、この一連の作業を途中で中断することなく取り掛かったら一気に4まで仕上げます。
途中で問い合わせがあったとしても、終わるまでは見ません。
その方が途中で抜け漏れなく作業が可能になる他、一連の流れに沿って集中して仕事ができるからです。
これにより、僕は会社から「1から10まで決まりきった仕事なら得意」と、そのような仕事を現在も割り振られています。
僕にとっても、こうした定例業務はパターン行動を好む障害特性からマッチしていると考えています。
時間のかかる作業は、一気にかたまりで仕上げる。
それにより、まとめて効率的な仕事の処理が可能になるのです。
②「まずはやる」で難しい仕事を効率的を上げる
部会の議事録を仕上げる。
システム運用見直しの提案書を作成する。
こうした1から相手に何かを伝えるような難しい作業は、「まずはやる」意気込みで先に着手します。
なぜなら、「ある段階」までとりあえず作業すれば、仕事の全体像や必要時間が分かるようになるからです。
例えば僕は、作業マニュアルを作成する際いきなり本文から取り掛かるような書き方はしません。
「目次」「見出し」から作り、その日はインデックスのみで終わらせます。
インデックスのみ作ってその日はマニュアルを寝かしておけば、全体のステップだったり細かい要点の整理がつくからです。
そしてもし余力があれば、スクリーンショットを撮ったり採番したりなどして、8割程度まで進めていきます。
10割を目指してしまっては、完璧なものに仕上げようと執拗に拘り、かえって時間を無駄にするからです。
これは、完璧でなければ不安になる障害特性を回避するためでもあります。
これにより、初めからパーフェクトを目指すのではなく、時間があればさらに改善できるという余力が生まれます。
おかげで職場では、「マニュアル作成=坂巻の得意分野」というお墨付きをいただいています(ただ、初めて取り掛かる人にも分かる内容までには見直しが必要だという厳しい意見もいただいてますが…)。
難しい仕事に取り組む時、もっとも難しいのは「始める」ことです。
ならば、先に触りだけでも「まずはやる」でやった方がおおまかな作業の枠が把握できるようになります。
重い腰は1秒でも早く上げて、取り掛かりましょう。
③所要時間が不確実なものほど、先にやる
引き継がれて初めて着手するものや急に振られたものなど、時間が読めないものほど先に済ませます。
なぜなら、不確実なものを先に着手すれば「納期が近づいているのにまだ終わらない」という不安要素を解消できるからです。
普段やっている作業であれば、おおよその時間を把握しているでしょう。
そのため、敢えて不確実なものを先に済ませるのです。
例えば次のような場合、普段のあなたならどうしますでしょうか?
タイムマネジメントの観点からすると、望ましいとされているのは「B」です。
なぜなら「A」の場合、役所に着いてからの記入ではそれだけ時間を取られ、その間に人がやってきて待たされる時間が増える可能性があるからです。
この場合「B」で先にすませれば、役所に着いてからは待つだけで済みます。
後は待ち時間で自己研鑽に読書したり、この後の予定をメモ書きするなど、業務整理をすれば良いのです。
この方が、作業の効率化にもつながりませんか?
もちろん、僕も「B」を選び行動しています。
更に僕は事前に役所のサイトから、予想待ち時間をチェックしてから出発します。
その方がどのくらい待つか把握できるため、その間にできる仕事をシミュレーションできるからです。
そして役所の帰りに申込用紙も何枚か持ち帰り、次回申請に行く際事前に記入できる準備も備えておきます。
そうすれば、次回他の誰かが行くとき事前に申込用紙を記入した上役所に向かえて、待つ時間が減りますからね。
重要度に大差がなければ、所要時間が不確実な要件を先に終わらせる。
このようにして、時間を有効に使って効率の良い仕事が可能になるのです。
2.タイムマネジメントを実現した後の効果
①ミスが減り、信頼関係が生まれる
タイムマネジメントを実現できれば、抜け漏れを減らすことができます。
なぜならまとまった時間に一つの作業に取り組み、難しい課題を「先にやる」姿勢で臨めば精神的な余裕につながるからです。
そうです、タイムマネジメントができれば計画通りに業務を進められ、達成感が生まれやすくモチベーション向上につながります。
そうなれば周りは「アイツはコツコツ与えられた仕事をそつなくやってくれる。じゃあ次の仕事を頼んでみようかな?」という雰囲気に持っていけます。
結果、上司や同僚は自分に仕事を引き継ぐ方向に持っていくことができ、周りは実務から手を離れることが可能に。
その分周りは新しい仕事を生む余裕も生まれ、あなたにとってより良い働き方だって考える時間も出来上がります。
これ以上の良いとこ尽くしはないと、思いませんか?
例えば僕は、昨年全社員向けに社員証更新の仕事を任されました。
顔写真の加工からデザイン作成など様々な行程を一任されたのですが、タイムマネジメントによって納期内での完成が出来ました。
結果、社内の基幹システムに顔写真を更新する作業も担当されました。
当時社員によっては顔写真がないものもありましたが、僕が更新した結果で全社員の顔写真反映が実現できたのです。
これは現在僕の定例業務となり、新しい社員が入社するたびに楽しみにしている仕事の一つでもあります。
タイムマネジメントによってミスが減るし、自分に仕事が回ってくる。
そして自分が頼られる存在となり、仕事へのやる気が増していく。
与えられた時間の使い方次第で、あなたの評価は大きく変わっていくのです。
②不安解消=安定したパフォーマンスの発揮
タイムマネジメントができるようになると、精神的な安定を手に入れられます。
なぜなら、難しい課題を片付ければ、後は普段通りの業務に集中できるからです。
結果として、安定したパフォーマンスが発揮でき、仕事の処理能力向上にもつながります。
タイムマネジメントの意識を持てるようになると、日頃から時間の使い方がうまくなり、自然と効率的な手法も身につきます。
業務にかかる時間を減らせれば、余裕ができた時間をフィードバックや情報共有に活用できます。
残業時間の減少によって残業代が減れば、人件費の削減に効果的です。
これは経営層にとっても、企業で一番高コストで不確実要素である人件費への不安解消にもつながるでしょう。
時間の管理に追われる日々は、あなたのストレスや疲労を招きやすくなります。
さらに、上司からの追い打ちで急かされてしまうと、最悪モチベーション低下や離職にもつながりかねません。
タイムマネジメントが自動的に行われるようになれば、チーム全体のパフォーマンスも向上します。
結果として生まれた時間的余裕は従業員の主体性や創造性を高め、組織全体の活性化にもつながります。
タイムマネジメントは単なる時間管理術ではなく、企業の競争力強化に欠かせない重要な要素とも言えるのです。
あなた自身の不安を解消し、安定したパフォーマンスが発揮できる。
長期的な安定就労の継続は、働いている発達障害の方にとって解決したい課題の一つであるはずです。
それが会社の成長に発揮できるなら、タイムマネジメントを試してはいかがでしょうか。
まとめ
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
以上で、「タイムマネジメントのコツ」を紹介し「タイムマネジメントを実現した後の効果」について説明しました。
発達障害を抱えた方は、人より感じたものを伝えるのに時間がかかる上、結果が見えない中初めて着手する仕事に大きな不安を抱えます。
むろん僕もそのような特性なので、人と関わる中で正直いつ地雷を踏むかびくびくした状態で仕事をする時もあります。
それでも、まとまった時間で一つの作業に集中する、難しい仕事でもまずは骨組みだけ作るといった取り組みで不安解消につなげています。
結果、コンディションを落としてうつに陥るような事態は回避できています。
以前、障害者雇用の正社員として働く当事者さんが次のような発言をしました。
「仕事は10勝8敗くらいがちょうどいい」
完璧を目指さず、時に思うような結果にならなくてもOK。
それでも2桁勝利は達成できる。
そうした背伸びをしないレベルに合わせた方が、安定就労にも拍車がかけられると僕は考えます。
そのため「タイムマネジメントで自分は会社の利益向上に貢献するぞ!」と意気込むより、「1個1個つぶせば何とかなるだろう」くらいで構えた方が良いでしょう。
僕ですら、タイムマネジメントが出来ても根回しや落としどころの付け方で突っ込まれて一進一退の毎日ですから。
この記事をきっかけに、あなたが気長にタイムマネジメントを実践し、一つでも多く会社の生産性向上に貢献できるきっかけが作れますように。
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