「良いストーリー」とは何か
はじめに
仕事をしていると、他者を説得したり、何か新しいことをするために提案して相手から合意を取るシーンがある。
そんな中で、スライドのストーリーをしっかり作って提案書を作りなさい、と上司からフィードバックをもらったことのある人は少なくないのではないだろうか。
フィードバックとしては納得できるが、「ストーリー」という抽象度の高い言葉は、具体的にどうすれば良いのか分からず困惑し、改善できない人もいると思う。
私もその一人であった。他にも同じ悩みを抱えている人のために、自分なりに「良いストーリー」について、少し解像度を上げてみたので、この記事に目を留めてくれた方の参考になると幸いである。
良いストーリーとは
人の感情を意図通りに動かすことができているストーリーである。
良いストーリーの構成要素
良いフリと良いオチで構成されたものが良いストーリーとなる。
フリは相手の立場で考え、オチは自分の持っていきたい方向で考える。
良いオチとは
予定調和か、予定調和の裏切りか。どちらかに当てはまるものだ。
予定調和を起こすためには
予定調和はフリと、共通認識を取ることの2つを抑える必要がある。
具体例を通して考えてみよう。
「お笑い」で考えるとわかりやすい。
予定調和なお笑いに代表されるのは「熱湯風呂」が挙げられる。
なぜこれで笑いが生まれるのか。観客はこのフリとオチを1つのパッケージとして共通認識しており、皆が同じようなオチがを求めている状態だからだ。
パッケージとして理解していて、皆が求めている状態を「予定調和」と表現している。これが大事なポイントだ。
何か相手に提案をして、自分の想定する方向に動かしたいとき、このフリとオチが重要になる。
ただオチだけを磨いたストーリーでは相手は動かない。相手の考えていることや求めていることに寄り添ったフリを利用し、予定調和なオチに持っていく工夫が必要だ。
フリによって感情が動かされている状態は、更にオチを完璧に近づけてくれる。
予定調和の裏切りを起こすためには
では「予定調和の裏切り」とはなにか。
それも同じ「熱湯風呂」を通して考えてみる。
フリ:「押すなよ!絶対に押すなよ!」
オチ:押して熱湯風呂に落ちる
という予定調和を利用し、
これでなぜ笑いが生まれるのか。
求めていたことが起こらなかった際、モヤモヤが生まれる。
それがツッコミによって代弁され、モヤモヤが解消されることによって笑いが起こる。
言わばこの「モヤモヤ」と「ツッコミ」が大事なポイントだ。
ビジネスの場に置き換えると、「モヤモヤ」は「違和感」にあたり、「ツッコミ」は「解決策」にあたる。
誰かに提案を行う際に、提案スライドの中に「モヤモヤ(ツッコミどころ)」を作っておき、質疑応答で質問を誘発し、Appendixなどで的確な解決策を説明する、というテクニックは聞いたことがある人も多いことだろう。
おわりに
素晴らしい提案というのは良いストーリー構成になっているものだ。
前述した内容を意識するだけでも、提案によって相手を意図する方向に動かせる可能性は高まるだろう。
網羅的な情報収集と論理武装で提案書を作成するより、
その提案のストーリーが如何に良いものであるかを意識して作成した方が、
相手の納得度も、作業効率も高い、と個人的には考えている。
一方で良い提案にするために意識することは他にもあると思われる。
筋の良い仮説を立てることや、内容だけではなく伝え方や場の雰囲気づくりなど、様々な変数によって相手を納得させられるかは変わるはずだ。
それらの要素はまた折を見て記事にするかもしれないししないかもしれない。