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雨空のJ旅 Footballがライフワーク Vol.22

まだ10月だというのに、11月から年末にかけて開催される異例のワールドカップの影響で、今季のJリーグはもう閉幕が迫っている。私的恒例行事、"J旅"こと「Jリーグをめぐる旅」の時期も前倒しすることにした。行動の制限は撤廃された一方、相変わらずマスク着用は公然のルールとして継続中。完全な原状復帰がいつになるのか、誰もが明言を避けたままのわが国では、行楽するにも個々の自己責任に託されたような世知辛さが付いて回り、もとより内向的な私には首都圏がすっかり遠のいてしまった。最近2年間は京都と岡山という隣県にとどめてきたが、今年はもう少しばかり遠出してみようかと、行き先に定めたのが岐阜の長良川のほとり。16年目にして、J3のゲームを選んだのは初めてだった。

日頃からこまめに計画を立てる習慣はないが、J旅のときはなおのこと、下調べもそこそこに現地へ赴く。ゲーム当日のホームタウンにたどり着くと、必ず目に入るのがユニフォーム姿の人びと。彼らを頼りに後を追えば、駅の出口や乗り換えの場所など知らなくとも、自ずとスタジアムまで連れて行ってもらえる。毎年、全国各地でそんな経験を重ねてきた。Jリーグ観戦を通して、多くの街にフットボールが浸透しているのを実感できる幸福なひとときだ。

季節をデーゲーム中心の秋に切り替えて以降、好天に恵まることが多かったこの旅も、今年はあいにくの雨空。それでも降水確率100%のなか、岐阜城を仰ぎ見るスタンドに座るまでもってくれただけでも良しとしたい。FC岐阜には、TJこと田中順也をはじめ、橋本和や石津大介が在籍していて、開幕時点の監督は三浦俊也だった。神戸への愛着も度が過ぎると、在籍経験のある選手や監督に対し、かつての同僚であるかのような親近感を覚えてしまう。加えて、このクラブには古橋亨梧を発掘してくれた恩義がある。岐阜でプロキャリアをスタートし、目の前のピッチを駆けていた選手が、神戸を経ていまやセルティックの主力としてチャンピオンズリーグを戦っているのだから、つくづく、フットボールの世界は広いようでも近いのだ。

柏木陽介や本田拓也など代表経験者を抱える岐阜の戦力なら成績も上々かと思いきや、前節終了時点で10位とは、フットボールは難しい。PKで先制した今日もリードを守れずに折り返し、後半はさらに2点を加えられ「一日サポーター」を務めたクラブは敗れた。元神戸の面々のうち出場したのは一人だけで、その橋本も前半限りで退いた。秋雨に降られ、特筆すべきところのないゲームに終わったとはいえ、「また来年もどこかへ」―その想いが揺らぐことはない。

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