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涙と共に儚く散った

「映画を観に行こうよ、4人で」

中学校1年生の教室。まだLINEなんてなかったから、宛先には3人分のメールアドレス。好きだった人と、仲良しの女友だち、そして友だちが気になる彼。

中学校のころの恋愛は、少し勉強ができるとか、ちょっとジェントルマンだったとか、仕草がかわいいとか、そんなものからはじまる。

たしか、その時は「女の子みたいにキレイな顔してるなあ」という感情が、好意に変わったんだったっけ。


4人での映画デート計画はトントン拍子に決まり、いよいよ明日というとき、仲良しの女友だちから電話がきた。

「もしもし?明日わたしと(わたしが好きな)彼は行かないから、ふたりでデート楽しんできて!上手くいくといいね!」

「ちょっと待って、そんなの無「じゃあね!」

(ツー、ツー)


今考えれば、わたしの恋を応援してくれただけだった。大人になれば、裏切りなんかではなく、ただ全力で背中を押してくれただけだったことくらいよくわかる。

でも、わたしは4人がよかったのだ。好きな人とふたりっきりで過ごす勇気なんて、まだなかった。好きだから会いたい、でも恥ずかしい、その気持ちを4人のデートで誤魔化そうとした。


ドタキャンされた衝撃と、ふたりっきりには耐えられそうにない自分の度胸のなさに悲しくなって、布団にくるまって泣いた。目がパンパンになるまで、声が枯れるまで泣いた。思い返すと、なぜあんなに泣いたのかわからないくらい。

ガラガラになった声で、「ごめん、風邪を引いちゃったみたい」と好きだった彼に電話した。「大丈夫?」という心配そうな声にまた申し訳なさが込み上げてきて、余計涙がこぼれた。


ファーストデートになるはずだった、悲しくも淡い記憶。今は記憶も浄化されて、当時好きだった彼とは、恋人期間を経て、友だちに戻った。

いまは、中学生の「好き」という感情だけで動いていた恋愛が、すこし恋しかったりする。


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ameri
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