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1歩、井戸の外へ

あれは2022年のことだったか。ある日靴下を履こうとかがんだら、右足だったか左足だったか、おしりのあたりから太ももにかけて、ビリビリッと電流が走るような衝撃を感じた。
前かがみの姿勢がよくなくて、しばらく靴を履くのもお風呂の掃除もおそるおそるしなければならなかった。

調べると、どうやら坐骨神経痛と思われた。当時は今以上に締切に追われる毎日で、2日ほぼ徹夜してまる1日泥のように眠るような生活を送っていた。長時間座りっぱなしで腰が痛いには痛く、電流が走ってもおかしくないよね、という状況ではあった。でも当時は「坐骨神経痛」の存在も知らないし、電流が走るなんて聞いていない。

驚いたと同時に、詰んだと思った。
これ以上は働く時間を増やせないし、そうなると収入の天井はもう頭頂部スレスレのところにある。
働き方を見直す必要を、文字通り肌で感じた瞬間だった。

∽∽∽

それからというもの、数多いるライターのなかで自分はどんな特徴があるのか、自分にできることはなにか、やりたくないことは?がんばればできそうなことは?自分をひたすら棚卸ししてみせ方を工夫した。
今まで得体のしれなかった「ビジネス」なるものに、そうとは気づかずに真剣に取り組むようになった。

執筆に関しても先輩に添削をお願いし、先輩の仕事の進め方を生でみせてもらうなどして、より積極的にスキルアップを図るようになった。
クライアントからダメ出しされるよりも、先輩からダメ出しされるほうが怖かった。身近な人から「この実力でよくライターやってるね…」と思われるほうが、ダメージが大きいから。

もしかしたら内心ではそう思っていたかもしれないけれど、だとしても先輩方はみな温かく、根気強く、今でもわたしをサポートしつづけてくださっているので本当に頭が上がらない。

それまで井の中の蛙状態で、井戸に収まる仕事しか引き受けてこなかったわたしが、いつの間にか井戸のひと回り外にある仕事も積極的に受けるようになった。
どんな案件でもある程度共通する考え方がわかってきたし、もしも自分の手に負えなくても先輩という強力な後ろ盾があると思うと井戸から飛び出る勇気も出る。

そうやってまず先輩を頼り、わたしのよいところも悪いところも知ってもらえたからか、枝が広がった感覚がある。案件だけでなく、人とのつながりも。
えいみさんはどう思う?
えいみさんはどうしてる?
えいみさん、◯◯できる?

こういう会話がDMなどクローズの場だけでなく、オープンの場でもすこしずつ増えてきて、なんとなく仲間にも自分のしていること、強みを認知してもらえはじめた。

1、2年前からチームを組んで働きたいと思ってきたけれども、どうしたものかまったくその景色も道筋もみえなかったところから、今ようやくそのステージ脇にまでたどり着いた気がする。いや、まだ会場に着いたぐらいかもしれないが、どちらにしてもあと少し。

∽∽∽

当時はただただがむしゃらでそんなこと意識もしていなかったが、振り返ってみればこの2年ぐらい、井戸の1歩外に飛び出して、拡張工事をしつづけてきた気がする。

簡単にいうと、無意識にコンフォートゾーンを飛び出しつづけてきた。

あのとき、太ももに電流が走ってくれてよかったのかもしれない。
そして、もし痛い目をみないと気づけないのであれば、今日もわたしの太ももには笑っちゃうほど電流が流れまくりなのできっと何か思し召しがあるに違いない。
…まあ、今日の痛みは昨日のスクワットとレッグカールによるものだけれどね。



今日も読んでくれてありがとうございます。
あなたが最近コンフォートゾーンを出たのはどんなときですか?

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