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しんどくても、あたらしい風景に向かって

ちょうど5年前の今ごろ、わたしはフィリピンへエスケープする準備を着々と進めていた。

身のまわりのなにもかもが嫌になってしまった。
当時、超大手企業に派遣社員として勤めていたわたしは、転勤でやってきた「学歴はいいけど仕事はできないんだろうな」というおじさん中間管理職にネチネチとパワハラを受けた。

見て見ぬフリをする周囲の人間も気味悪く、友だちに相談したら「我慢しないと得られないものがあるんだよ」と謎の諭され方をした。

こんな我慢するぐらいなら何も、収入も得られなくて結構です。
契約満了を待ってさっさと辞めた。

契約満了まであと2ヵ月。
2ヵ月後に仕事を辞めるとかたく心に決めたわたしは、次の仕事は探さず、しばらく海外に行ってみたいと思った。

パワハラおじさん
我慢しろ友人(友人なのか?)
みんな、うっとうしいのよ。
ぜんぶが嫌になって、狭い日本から離れて、誰もわたしのことを知る人がいない場所でリセットしたいと。


夫を納得させるために一応「留学」の体をとって、フィリピンに飛んだ。

フィリピンでも、人間は人間だった。
「えいみは結婚してるの?だんなさん日本に置いてきちゃってかわいそうね」
国が違えば考え方も違う部分があると聞いていたが、既婚女性がひとりで海外に行くと、日本でも海外でもおおむね同じ反応であることがわかった。

おいおい、そういうのが嫌で日本を飛び出てきたのに、結局ここでも一緒かい。


日本にいようが海外に行こうが、どこに行っても人のことをぴーぴー言ってくる人はいるもので、場所の問題じゃないとわかった。
だったらもう、誰になんと言われようと突き抜けるしかない。

わたしの人生は、法律みたいに多数決で決められるものではない。
自分で決めるのだと。


その日フィリピンの離島で見た夕日は、やわらかな紫とオレンジとピンクのグラデーションだった。
異世界じゃないか、こんな風景があるのかと、しばらく動けなかった。

カスカスでザラザラになったわたしの心に離島の夕陽は実にすんなりと入り込み、わたしはまぶしくてちょっと泣いた。

「しんどくなったらいつでも思い出しなはれ」と、その風景は今でもすぐそこにいる。


その初心を大切にしながらわたしは進むよ。
まだ見たことのないあたらしい風景に向かって。



今日も読んでくれてありがとうございます。
あなたの大切な風景、どんな色をしていますか?







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