バカ野郎!ひとりにしないでよ。アメリカで夫に先立たれた妻のバイブル (5)
グリーフケア②
日本グリーフケア協会によると、日本人の悲嘆反応は、「思慕」「疎外感」「うつ的症状」「適応対処の努力」の4つで、3つの喪失思考と1つの現実思考が、天秤のように揺れ動き、心が揺さぶられるとされています。お別れから半年くらいの間は、ショック期で人間は悲しみを和らげようとする為、その間のことをあまり覚えていなかったり、緊張感が続いていたりする事も多く、半年以降に本格的な悲嘆反応が強く出てくるとも言われています。
夫を失った私は、自分の置かれた状況を何ヶ月も理解出来ずにいました。外出することも、人との接触も避けていた時期があります。毎日が苦しく、息をしていることすら、自分自身に嫌気を覚えました。9ヶ月近く経った今でも葬儀の日からの記憶が抜け落ちています。
なぜ、私は生きているのだろう? 私が死ねばよかったのに……。私が生きている意味などあるのだろうか? そもそも、生きるとは何か?自答自問し、眠れぬ夜を過ごしました。
愛する人と2度と一緒に笑うことも、散歩することも出来ない現実。当然ですが、亡くなった夫の遺体を見ているのですから、頭ではわかっています。でも、心では受け入れられずにいました。突然死で大切な人を亡くしたものは、その突然の喪失が現実ではないかのような感覚(unrealitry)を抱くと言われています。グリーフケアの標準ハンドブック著者であり、悲観カウンセリング研究の第一人者でもあるアメリカのウォーデン・J・ウィリアムによると突然死における悲観の特徴を以下のように述べています。その上で、突然死の遺族と関わる際にはいくつかの特徴を考慮すべきであるとも提唱しています。遺族の心情を知ることは、悲しむ遺族と接する際の手引き(バイブル)になるかもしれません。
①喪失の非現実感
多くの場合、突然死に直面した遺族は、現実でないかのような感覚を抱いている。愛する人の死は晴天の霹靂であり、その知らせを聞いた遺族は全く現実感がわかずにいる。その非現実感は長期に及ぶこともあり呆然自失の状態でさまよい歩いているような状態になることも決して珍しい事ではない。突然の喪失後に悪夢を見たり、侵入的なイメージが思い浮かんだりすることもある。たとえ、遺族がその現場にいなかったとしてもトラウマとなりやすいのでその点を考慮し接する事が望ましい。
②自責感・罪悪感の激化
突然死にしばしば見られる第2の特徴として自責感・罪悪感があげられる。どんな死別の場合でも多かれ少なかれ罪悪感を覚える。しかし、突然死の場合は強い罪悪感が生じやすい。「もし、〜さえしていれば……」「あの時、私が止めていたら……」「あの時、私が言ったから……」など強い後悔の念を抱いてしまう事が多い。突然死の遺族が感じている自分が悪いのだという過失の感覚に焦点をあて、重荷を背負わせないように接する事が大切だ。
③以降は次回につづく。