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ケース28. ピグマリオン効果〜居場所をつくるタレントマネジメント〜

▶︎あらゆる人の活躍可能性を高めるためにできることは?

日々努力を尽くしているにも関わらず、成果に表れずに苦戦してしまう場面に遭遇したことはないでしょうか?

経営の視点:
・給与以上の利益を出してほしい
・個人のパフォーマンスを高めることが難しい

現場の視点:
・活躍して評価されたい
・自分の強みを発揮できないと苦しい

人的資産の希少性が高まっていくウォーフォータレントの時代において、自組織に集まった人々のパフォーマンスを高められるかで事業成長のスピードが大きく変わっていきます。
しかし、組織が大きくになるにつれて、One Of Them感が高まり、個々にスポットライトが当てづらく、当事者意識も徐々に下がってしまい、パフォーマンスを高める難易度が高まります。

そこで、今回はピグマリオン効果という概念に用いて、個人の強みを発揮できるタレントマネジメントの工夫を考察します。

▶︎ピグマリオン効果

他者からの期待を受けることで学習や作業などの成果を出すことができる効果のこと。
アメリカの教育心理学者ロバート・ローゼンタール氏が提唱。


ローゼンタール氏のある小学校を対象とした研究において、ランダムに振り分けた生徒をAクラス、Bクラスに分け、学級担任にはAクラスを「成績が伸びる優秀な子供たち」Bクラスを「成績の良くない子供たち」と伝えた結果、BクラスよりもAクラスの成績が向上したことから、期待によって人のパフォーマンスが高まることが示されています。

それでは、タレントマネジメントでピグマリオン効果を発揮させるには、何ができるのでしょうか?

▶︎強みを伸ばすプロデュース

ピグマリオン効果を出すためのポイントに一つが、成果をすぐに出るものではないことを肝に銘じて、成果が出るまで期待をかけ続けることにあります。
とはいえ、ただ待っているだけでは成果創出のための能力と行動が変わらず、成果が出せないため、強みを自ら認識できるサポートが重要となります。

自ら強みを活かすためにできるサポートがコーチングです。
コーチングには下記の4つのフレームがあります。

①目標達成フレーム
目標達成方法が見えていない時、業務過多によって混乱している時に活用する。

質問例)
1.目標:どんな結果をなぜ出したいか?
2.現状:目標達成に向けてどんな壁があるのか?
3.リソース:目標達成をするためにどんな強みを発揮できるか?
4.方針:目標達成に向けたキーワードは何か?
5.アクション:必要なアクションは何で、特にどれが最も重要か?
6.実行促進:いつ何から始めるか?


②要因分析フレーム
成果創出の要因が見えていない時に活用する。

質問例)
1.結果の認識:目標と結果にはどんなGAPがあったか?
2.要因のアタリ:何が要因か?なぜそう考えるのか?
3.要因の深掘り:要因をさらに深ぼると、自分の強みと弱みはどうだったのか?
4.行動改善:具体的な行動では何が改善できたはずなのか?
5.次の一手;要因を理解した上で次は何をするのか?
6.実行促進:いつ何から始めるか?


③経験学習フレーム
学習を促進したい時、成功体験から武器をつけてほしい時に活用する。

質問例)
1.経験の振り返り:今回は何を経験できたのか?
2.想定との違い:事前に想定できていなかったことは何か?
3.結果の認識:今回の結果に対して、強みは発揮できていたのか?
4.学びの言語化:今回の出来事から何を学べたのか?
5.今後の活用;今回の学びをこれからどう活かすのか?
6.実行促進:いつ何から始めるか?


④キャリア構築フレーム
中長期的なキャリアに悩んでいる時、次のステップに進んでほしい時に活用する。

質問例)
1.キャリアの目標:理想のキャリアはあるか?もしくはベンチマークしている人はいるか?
2.現在の仕事:今の自分にはどんな強みがあるのか?
3.リソースの確認:今はどんな機会があるのか?
4.方針:標達成に向けたキーワードは何か?
5.アクション;必要なアクションは何で、特にどれが最も重要か?
6.実行促進:いつ何から始めるか?


コーチングは相手の中から答えを探す取り組みであるため、強みを事前に分析して、「Aさんの強みは〇〇や△△ではないか?」と日頃からピグマリオン効果をかけていくことが重要です。
そして、期待を受けて小さな成功体験を重ねていく中で、自らの強みに自信を持ち磨いていくことで継続的な成果創出のための行動が身についていくのです。

固定観念的な手段に縛られないため、ジョブクラフティングを通じて発想を柔軟にしていくことも有効です。
ジョブクラフティングに関する記事

▶︎宣言と期待のサイクルで自信をつける

サイバーエージェントの曽山さん曰く、育て上手とそうでない人を決定的に分ける差は、自信を持たせることができるかどうかであり、育て下手な人はダメ出しばかりで自信を削っていくとされています。

「Aさんの強みは〇〇だから、きっと△△ができる」と期待をかけた上で、自ら宣言する機会を設けて、「Aさんは〇〇だからできる」と更に期待をかけていくことでピグマリオン効果が発揮してパフォーマンスが高まっていくと考えられます。

そして、自らの宣言で主体的に取り組んでいるタイミングでこそ、結果だけではなく、成果創出に関わる能力に対して、具体的フィードバックをかけていくことで、再現性が生まれていきます。
フィードバックに関する記事

▶︎一人ひとりの強みが発揮される組織でこそ勢いがつく

元マンチェスター・ユナイテッドのアレックス・ファーガン監督は、チームがゴールを決めた時、選手より先に用具員とハイタッチをして、チームを陰で支える人に対する感謝を周囲に示すことで、チームが末端の構成員まで全員の信頼から成り立っているという意識を全体に浸透させる工夫をしていたとされています。

また、経営の神様と称される松下幸之助さんは、「縁の下の力持ちこそ、皆の前でしっかり認めるべし」と説いていたとされています。

組織運営の基本的な思想として優秀な2割、平均的な6割、貢献度の低い2割で構成されるとの262の法則がありますが、一人ひとりの強みが発揮されるようにピグマリオン効果をかけていく工夫があってこそ、一人ひとりの居場所ができ、組織パフォーマンスを高めるタレントマネジメントができるのではないでしょうか?

※本noteでは、人の可能性を拓く組織づくりのための新しい気付きを届けることを目的に、組織論とケースを考察していきます。
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