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リサーチ11. AIエージェント× SalesTech〜営業の未来を再構築する11x〜
近年の企業経営において、収益を大きく左右する要因の一つが、競争の激化です。
顧客ニーズや購買行動の多様化が進む一方、新規参入の脅威や既存競合の増加により、市場はかつてないスピードで変化しています。
このような環境下で、企業は限られたリソースの中でいかに営業活動を効率化し、持続的な成長を実現するかが重要な経営課題となっています。
特にデジタル化が加速する現代において、従来の営業手法だけでは競争優位性の確保が難しくなっています。属人的な営業スキルや経験に依存するだけでなく、データドリブンな意思決定やプロセスの自動化を取り入れることが、ビジネスの成長には不可欠です。
こうした状況の中で、注目を集めているのがAIエージェントの活用です。
SalesTechの分野では、生成AIの進化により、これまで営業担当者が手作業で行っていたリード発掘、フォローアップ、案件管理などの業務が高度に自動化され、営業チームの生産性向上が飛躍的に高まる可能性を秘めています。
AIエージェントを導入することで、営業プロセスの効率化だけでなく、顧客ごとに最適化されたアプローチが可能となり、営業戦略の高度化と収益の最大化に貢献します。
今回は、AIエージェントの技術を活用して営業生産性に変革を起こす可能性で注目を浴びている11xを取り上げます!
▶︎AIエージェント
AIエージェントとは、人工知能を活用してさまざまな業務プロセスを自動化・最適化し、意思決定を支援する技術のことを指します。
これにより、従来は人が手作業で行っていた業務がAIエージェントによって効率化され、新たな価値やサービスを生み出すことが可能となります。
これまでのAIは、主に文章作成や画像生成など、クリエイティブな領域を中心に個人の作業を補助する用途が多く、例えば生成AIによるコンテンツ制作や翻訳などが代表例でした。
しかし、近年、AIエージェントの登場により、企業の収益向上や生産性向上、コスト削減に直結するビジネス用途にシフトしていることがポイントです。
たとえば、カスタマーサポート、営業、人事といった分野では、これまで人の手に依存していた業務がAIエージェントによって代替・強化されるケースが増えており、業務のスピードと精度の向上が期待されています。
SaaS型のソリューションとして提供されるAIエージェントは、導入のハードルが低く、企業の競争力強化に貢献する重要なツールとなりつつあります。
AIエージェントは、膨大なデータを収集・解析し、過去の傾向やパターンを学習することで、リアルタイムでの意思決定や業務遂行を行うことが可能です。
企業のCRM、ERP、マーケティングプラットフォームなどと統合され、業務プロセスの最適化を実現します。
従来のビジネスプロセスは、個々の作業者の経験や勘に依存していた部分が多かったことに対して、AIエージェントの導入により、データドリブンな業務運営が可能になります
また、自然言語処理や機械学習、画像認識などの技術の進化により、チャットボットやバーチャルアシスタント、レコメンデーションエンジンといった多様な形での活用が広がっています。
主に下記の3つの要因でAIエージェントのソリューションが注目を浴びています。
①意思決定におけるデータ活用の重要性の高まり
②労働力不足の深刻化
③クラウド技術の進化とSaaS型サービスの普及
このようなトレンドで、AIエージェントは従来の業務プロセスに革新をもたらし、人手では対応しきれなかった領域を効率的に補完することで、企業の競争力を大幅に向上させています。
▶︎11x
営業の生産性向上を支援する革新的なAIエージェントを提供するアメリカのスタートアップが11xです。
11xは2022年にAIを活用したデジタルワーカーの提供を目指したハサン・スッカール(Hasan Sukkar)氏によって創業されました。
ハサン・スッカール氏は、ForbesのUnder 30 Europe に取り上げられた1997年生まれの若き起業家で、17歳の時にシリア難民危機を受けてイギリスに移住し、スプレッドシート間のデータ転記という単調な作業を経験したことに課題感を抱いたことがきっかけとなり、AIエージェント構想を生み出しています。
11xは、見込み顧客からの問い合わせに対応する SDR(Sales Development Representative)のAIエージェント「Alice」を提供しています。
上位5%のSDRと一般的なSDRの違いを分析し、その知見を搭載したAliceが見込み顧客の発掘やフォローアップを24時間体制で行うことで、営業チームがリードの獲得から成約に至るまでのプロセスをよりスムーズに進められるよう設計されています。
また、電話対応エージェント「Mike」も開発され、30以上の言語で自然な会話を実現し、リード応答時間を大幅に短縮させています。
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独自の信用スコアでスタートアップ向けクレジットカードを提供するBrex社でサービスエンジニアリング部門の責任者を務め、AIの専門性を有するプラバフ・ジェイン (Prabhav Jain) 氏がCTOを務め、主にAIエージェントが以下のような機能を提供することで、営業担当者はより戦略的な活動に集中できるようになります。
①リードスコアリング:過去の成約データをもとに、最も成約の可能性が高いリードを特定
②フォローアップ自動化:メールやチャットを通じた適切なタイミングでの顧客対応
③データ駆動型営業戦略:顧客の行動データをもとに、最適なアプローチ手法を提示
④CRMとの統合:SalesforceやHubSpotなど主要なCRMと連携し、シームレスなデータ管理を実現
11xのAIエージェントがもたらす最大の価値は、人の制約を超えた効率性とコスト削減にあり、24時間365日の稼働体制は、人間では実現できない生産性を提供し、採用コストや人件費の削減を可能にします。
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AIエージェントの注目度から、後発の競合が続々と登場していますが、11xは下記の競争優位性を確立しています。
①高度なAIモデルの継続的アップデート
②グローバル市場への迅速な拡大
③大手企業とのパートナーシップ強化
さらに、11xは企業向けのSaaSサービス「11x Sales Hub」を提供し、営業パフォーマンスの可視化や、成約率向上のためのインサイト提供を行っています。
実際に、Fortune 500企業や急成長中のスタートアップでの導入が進んでおり、営業成果の向上が報告されています。
11xは、シリーズCまでBenchmarkやSequoia Capital、Andreessen HorowitzなどのトップVCを始め、Google VenturesやSalesforce Ventures、HubSpot Venturesなどの大手企業から日本円で累計約800億円を調達しています。
11xは、営業活動におけるデータ活用の重要性の高まりと、AIによる意思決定の精度向上を背景に、営業分野におけるデジタル変革の波に乗り、11xは営業の未来を再構築する先駆者として期待されています。
従来の営業手法では対応しきれなかった大量のリード管理やパーソナライズドな顧客対応をAIが補完することで、企業の売上成長に貢献する存在となっています。
▶︎まとめ
AIエージェントは、単なる業務の効率化にとどまらず、ビジネスの在り方そのものを変革する可能性を秘めています。
その影響は人の役割を代替し、人がより創造性の高い役割にフォーカスしやすくなる一方、人に求められるスキルは高度化していくことも予測されます。
カスタマーサポート、営業、マーケティング、バックオフィスなど、あらゆるビジネス領域でAIエージェントの活用が加速しています。
この波に乗り、積極的にリスキリングに取り組む企業は、新しい成長の可能性を掴むことができる一方、適応が遅れた企業は取り残されてしまうかもしれません。
AIエージェントがもたらす企業経営の変革に要注目です!