ケース12.リフレーミング〜意欲を引き出すメッセージング〜
▶︎全ては解釈次第。前向きな雰囲気をつくるには?
全社発信や日々の会話の中で、同じ内容だったとしても、伝え方と受け取り方で、ポジティブになることもあればネガティブになることがあるのではないでしょうか?
経営の視点:
・現場をモチベートさせたい
・受け手によって解釈が異なり、伝え方が難しい
現場の視点:
・経営のメッセージに違和感を持つことがある
・前向きな気持ちで活動したい
情報伝達では、受け手の解釈を想定する必要があります。
カーネギーは、人を説得する原則として、下記のように演出を考えることを説いています。
人をモチベートするためには、相手の状況や心情を想像して、演出を心掛けることがポイントになります。
そこで、今回はリフレーミングという概念に用いてメッセージングの工夫を考察します。
▶︎リフレーミング
対象となる事実に対し、解釈の仕方を工夫することで、ポジティブな感情を高める手法として、人材育成や組織マネジメントで援用されています。
リフレーミングには大きく下記の2つがあひますり
イソップ童話『酸っぱい葡萄』の中で、狐が美味しそうな葡萄を手に入れられない状況下で、「どうせあの葡萄は酸っぱくてまずいだろう。」と諦めるシーンがあります。
これは、欲しくても手に入られない苦しい事実を、葡萄=手にする価値もないもの、とリフレーミングすることで、ネガティブな感情から逃れています。
それでは、リフレーミングを援用して前向きな雰囲気をつくるには、どのような工夫ができるのでしょうか?
▶︎目的を考え抜いたメッセージングの工夫
漫画キングダムのワンシーンで下記の檄があります。(多少、省略)
苦戦している状況下で、組織の成長過程から努力を称賛して、未来像に希望を抱かせるメッセージングをすることによってモチベーションを高めています。
組織で経営目標の進捗に関するメッセージングにおいても、伝え方と捉え方が、ポジティブであれば推進力になり、ネガティブであれば逆効果になるものです。
例えば、全社集会や経営メッセージは雰囲気に大きな影響を及ぼすのではないでしょうか。
そのため、自信をつけて勢いをつけたいのか、危機感を高めて基準を高めたいのか目的を考え抜いてメッセージングを工夫することが重要です。
未達の事実を未達と伝えて危機感を高めるのか、成長した事実にリフレーミングして勢いに変えるのか、
達成の事実を達成と伝えて労うのか、残っている課題にリフレーミングして向上心に変えるか、
伝え方によって効果は異なります。
経営コンサルタントの山口周さんは『ニュータイプの時代』で、意味やストーリーを生み出せるニュータイプの価値が高まっていくとしています。
また、人は相手の話が全て頭に入ることはないため、伝えるべき狙いを絞って、エッセンスをシャープにすることも大事です。
経営の神様と称される稲盛和夫さんは、経営者は素晴らしい心理学者として、働く人たちの気持ちがどう揺れ動くかを読むことが重要と説いていました。
バイフォーカルアプローチで中長期のビジョンと今の仕事に取り組む意義を接続する、リフレーミングを活用されている経営のカリスマと称される方々のエピソードが多数あります。
狙った方向に一体感を揃えるメッセージングによって、チーム単位の「自分たちならできる」と言語的説得がなされ、チーム効力感が高まり、チームの勢いがつくのです。
※チーム効力感に関する記事
▶︎自己解釈をコントロールするEQを育む
事象を前向きに捉えて、前に進んでいくためには、リフレーミングによって自分の糧になったことを捉えることが重要です。
リフレーミングのためにはEQを高めることが有効となります。
GoogleやFacebookでは、EQを高めることを目的としたサーチ·インサイド·ユアセルフ(SIY)と称されるリーダーシップの育成プログラムがあり、自己認識を高めることを重要視されています。
組織心理学者ターシャ・ユーリック氏の『insight――いまの自分を正しく知り、仕事と人生を劇的に変える自己認識の力』では、自己認識は下記の両側面があるとしています。
自己認識を高めるには、自己の振り返りだけではなく、他者からのフィードバックが必要なのです。
そのため、SBI情報(状況、行動、効果)など納得感のあるフィードバックがEQを高め、リフレーミングに繋がります。
※フィードバック技術に関する記事
どんなメッセージングも受け手側のスタンスが伴わなければ効果を発揮し得ないため、土壌としてEQを育むことは大事な観点となります。
トーマス・エジソンは下記の言葉を残し、
スティーブ・ジョブズは下記の言葉を残しました。
そして、グロービス特別顧問の田坂広志さんは、あらゆる苦難にも意味を見出す人生の解釈力の重要性を説いています。
リフレーミングは、ネガティブな出来事を糧にすることにも活用できるため、セルフマネジメントのためにも大切なスキルであり、一人ひとりがリフレーミングができる組織は、前向きな雰囲気をつくりやすいと言えるでしょう。
▶︎リフレーミングは人だからのこそスキル
物事をリフレーミングして新しい意味を見出すことはAIには代替できない感性を持つ人ならではのスキルです。
同じメッセージでも、言い訳や不満のネガティブな感情が湧き出る人もいれば、チャンスを捉えようとポジティブな感情が湧き出る人もいます。
経営資源のとヒト、モノ、カネ、情報の中で、
ヒトにだけあってモノとカネにないの最大限の特徴は可変性にあります。
エゴンゼンダーのクラウディオ・フェルナンデス・アラオス氏は人のポテンシャルは下記の4つによって構成されることを調査されました。
人のポテンシャルは「〇〇できるか」とスキルではなく、「〇〇することにエネルギーが湧くか」と感情によって構成されます。
伝え手と受け手のそれぞれのリフレーミングする力が組織の可能性を変え得るのではないでしょうか。
カーネギーの言葉に下記があります。
人は解釈次第で、前向きになれるのです。
※本noteでは、人の可能性を拓く組織づくりのための新しい気付きを届けることを目的に、組織論とケースを考察していきます。 他記事はぜひマガジンからご覧ください!