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今日ときめいた言葉19ー「のどかという日本語を忘れかけている」

のどか    谷川俊太郎

のどかという日本語を忘れかけている
のどかと言える時も所もなくなったような気がする

全て世は事もなしはブラウニングだが
教わった中学時代呑気な詩だと呆れた

春の野原で今一人寝転んでいる
老いたのであとは死ぬだけ?

無事人生を卒業したと思いたいが
青空を見上げると宇宙ゴミがうようよだとか

ウソもホントもごちゃ混ぜのこの世
のどかは今や憧れのユートピア

(2023年2月1日付 朝日新聞 「どこからか言葉が」谷川俊太郎「のどか」)

ああ、「のどか」という言葉をついぞ使わなくなっていたことに気付かされた。「のどか」いい響きである。あなたは、この言葉から何を想像するだろうか?どんな心の状態を思い描くだろうか?あなたがそれを感じたのはいつのことだろうか?

最近、やっとカワセミに出会えた。こんなにじっくり眺められたことは幸せなことだった。この鳥はじっと木に留まり動かなかった。いつまでもいつまでも立ち尽くし、その美しい青い羽を持つ鳥を堪能した。

新聞を読んでもテレビを見ても世の中の暗い事件や悲しい出来事ばかりで心が沈む。ドラマを見ても悲しみを抱えた人物に特段の感情移入をしてしまう。でも素敵な言葉に出会えたときは心が躍る。今日はこの「のどか」、そして「春の朝」という詩の最後の一節「すべて世は事もなし」(なんの問題もない)。詩心はないが、このように潔く言い切った一節が、いっとき私の憂さを晴らしてくれた。

春の朝   ロバート・ブラウニング

時は春、日は朝(あした)、
朝(あした)は七時、
片岡(かたをか)に露みちて、
揚雲雀(あげひばり)なのりいで、
蝸牛(かたつむり)枝(えだ)に這(は)ひ、
神、そらに知ろしめす。
すべて世は事も無し。

The year's at the spring,
The day's at the morn;
Morning's at seven;
The hillside's dew pearled;
The lark's on the wing;
The snail's on the thorn;
God's in His heaven,
All's right with the world!



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