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進化ではなく変化

けがをして全くうごけないままに、将来のこと、過ぎた日のことを思い、悩んでいた時、ふと、激流に流されながら、元いた岸に泳ぎ着こうともがいている自分の姿をみたような気がした。そして思った。
「なにも、あそこに戻らなくてもいいんじゃないか…
 流れている私に、今できるいちばんよいことをすればいいんだ」

星野富弘『ことばの雫』

星野富弘さんが最近亡くなられた。24歳の時不慮の事故で首から下が全く動かなくなり、その後は口で素晴らしい花の絵と言葉を残された。
星野さんのこの言葉をふと思った。
今、神経症の症状に苦しんでいるひとがよく「元気なころに戻りたい。症状に苦しむ前にもどりたい」と口にする。私は6歳から強迫性障害だったからあんまりよい時はなかったけれど、それでも調子のよかった時があって、その時にもどりたいとよく思う。そして昨日より、今日、今日より明日。と進化していくことを求めているような気がする。でも、現実は思うようにいかない。私は相変わらず激流に流されていて溺れかけている。

明日の弁当のサツマイモを煮ながらふと思う。
もう、進化する必要はないんじゃないか。たいしたことない普通の自分。残念な自分。理想のように出来ない自分。老いてゆく身体。染めないと白髪だらけの髪…それは進化ではない。変化だ。もう理想の「あそこ」に行けなくてもそのままで不安なままでなるべく楽になるように変化していけばそれでいいかも知れない。そう思うと少し楽な気持ちになった。

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