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医者の頭の中をのぞく!皮膚科の薬シリーズ ②抗アレルギー薬

今回は、抗ヒスタミン薬以外でアレルギーを抑える薬についてお話しします。


■抗アレルギー薬とは


抗ヒスタミン薬との違い


アレルギーの薬のメインになるのは抗ヒスタミン薬になります。
アレルギー反応が起こると、ヒスタミンを中心に他にも様々なケミカルメディエーターと呼ばれる炎症に関連する情報伝達物質が多数放出されます。

アレルギー反応ではTh2細胞を中心に炎症がおこり、その結果としてヒスタミン、ロイコトリエン、トロンボキサンA2、プロスタグランジンD2などが放出されて、アレルギー性鼻炎、気管支喘息やアトピー性皮膚炎などアレルギー関連の病態が形成されます。



■抗アレルギー薬の一覧


・抗ヒスタミン薬
医者の頭の中をのぞく!皮膚科の薬シリーズ
①抗ヒスタミン薬をご参考にしてください。
https://note.com/ample_pika5719/n/n03522e9c9e2f

・ロイコトリエン受容体拮抗薬
シングレア/キプレス(モンテルカスト)
オノン(プランルカスト)

炎症が起こると、細胞膜脂質であるアラキドン酸から炎症物質であるロイコトリエンやプロスタグランジンが生成されます。
ロイコトリエンは白血球の遊走を促し、気管支の収縮、鼻粘膜の拡張させます。ですからロイコトリエンを抑えることにより喘息やアレルギー性鼻炎、アレルギー全般の改善が期待されます。

・ケミカルメディエーター遊離阻害薬
リザベン(トラニラスト)
インタール(クロモグリク酸)
アレルギー反応が起こった際に、肥満細胞からの放出されるケミカルメディエーターの遊離を抑制します。効果はかなりマイルドなため使用は減っています。

・トロンボキサンA2/プロスタグランジンD2阻害薬
バイナス(ラマトロバン)
トロンボキサンA2とプロスタグランジンD2の受容体を抑えてアレルギー性鼻炎や気管支喘息などの症状を改善する薬です。アレルギーの関連物質の1つですが、抗ヒスタミン薬に比べて臨床上の効果に乏しいことから需要がなさなり発売中止になっています。

・Th2サイトカインの抑制薬
アイピーディーカプセル(スプラタスト)
アトピーや喘息などに関連する免疫を司っているのがTh2細胞です。アレルギー疾患はTh2細胞の活性化が原因であることがわかってきており、Th2細胞から出るIL-4及びIL-5の産生を抑えるのがスプラタストの役割です。これによって好酸球やIgE抗体の産生の抑えてアレルギー反応が抑制されます。


■医者の頭の中


具体的な種類の使い分け

具体的な薬についてどのように考えているかお話しします。
アレルギー症状のメインはヒスタミンの放出によるものです。
ですからヒスタミンを直接抑えることが可能な抗ヒスタミン薬は即効性の観点からも効果的で需要があるため今まで非常に多くの種類が開発されてきました。

抗アレルギー薬

抗アレルギー薬はアレルギーに関連する因子を抑えることによって間接的にアレルギー症状を緩和していく薬というイメージです。

この中で最もよく使われる抗ロイコトリエン薬は最低でも1週間、本音を言えば1ヶ月程度飲まないとなかなか効果を感じられなかったりします。アレルギーをゆっくり改善させるという認識でよいと思います。
主には内科で喘息の発作予防によく使われます。
皮膚科では、メインで使うことはあまりありません。蕁麻疹が抗ヒスタミン薬で治らない時にプラスしたり、喘息を合併しているようなアトピーのアレルギー体質の改善に使用します。
シングレアとオノンの使い分けですが、私は基本的には1日1回のシングレア/キプレスで処方することが多いです。シングレアはチュアブルという口の中で溶けるタイプもあります。
オノンは1日2回です。シングレアの方が1日1回なので使いやすいです。オノンの方が甘いので子供は飲みやすいと思います。
いずれも症状がある時に飲む薬ではなく、続ける必要のある薬です。医者としては継続しやすい飲み方や味を選択してあげることが大切です。

リザベンはアトピー性皮膚炎、肥厚性瘢痕・ケロイド、気管支喘息、アレルギー性鼻炎に適応があります。皮膚科領域では肥厚性瘢痕やケロイドなどに対して頻繁に使われます。一般に傷ができると線維芽細胞から炎症物質が盛んに放出されてコラーゲンを増やす反応がおき傷が修復されていきます。体質によっては炎症物質が出過ぎてしまい、傷が通常以上に盛り上がってしまう状態が肥厚性瘢痕やケロイドです。リザベンにより炎症物質が減り、傷に対する過剰な修復を調整して盛り上がりがおさえることが期待されます。
アトピーも体の中で様々な炎症物質が放出されているので抗アレルギー作用を目的にリザベンを使っている症例もたまに見ます。
リザベンは副作用で重篤なものに膀胱炎様症状の記載がありますが私は遭遇したことはありせん。他にも副作用に肝機能障害があります。長期の服用で少しだけ肝酵素が上昇しているケースを多数みます。実際に問題となるほどではないため放置されていることも多いですし、多くの先生が肝障害について認知していないかもしれません。実際私も友人に教えてもらうまで知りませんでした。長期に内服している方はたまには採血してみてもいいかもしれません。

インタールは喘息に対してネブライザーで吸入して使います。私も昔喘息でよく吸入していた馴染み深い薬の一つです。小児の喘息では今でも頻繁に使用されますが、皮膚科領域では使用されることはない薬です。

喘息に対してネブライザーで吸入して使います。私も昔喘息でよく吸入していた馴染み深い薬の一つです。小児の喘息では今でも頻繁に使用されますが、皮膚科領域では使用されることはない


アイピーディーカプセルは1995年発売のアトピー性皮膚炎、気管支喘息、アレルギー性鼻炎に適応のある薬です。
近年アトピー性皮膚炎をはじめとするアレルギー疾患のサイトカインの解明が進み、さらにそれをピンポイントに直接抑える抗体製剤(デュピクセントなど)が多数発売されています。アイピーディーカプセルもアトピーや喘息の関連物質であるIL-4、IL-5を抑えるため効果が期待されます。IL4とIL-13をピンポイントで抑制するデュピクセントはアトピーがほぼ治るくらいにまで持っていくことが可能です。
アイピーディーも似たような機序のためとても効きそうな気がします。しかし実際使用していて顕著に改善しているようには感じなく、効いているかどうかよくわからないというのが正直な感想です。人によっては調子がいいという方もいるので、外用や抗ヒスタミン薬内服など基本的な治療を行なってあまり改善せず、次の手に困った時のプラスαの位置付けで処方しています。


■まとめ

アレルギー症狀を直接的に抑えるのは抗ヒスタミン薬、間接的に抑えるのがロイコトリエン受容体拮抗薬(シングレア)、リザベン、アイピーディーなどがあります。

今回紹介した抗アレルギー薬は即効性というよりは体質改善と考えましょう。長期の内服が必要です。根気強く頑張りましょう!



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