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忠誠心という名の、愛。

やー、終わってしまった。
すきすきワンワン。
岸さん主演のドラマである。

すきすきワンワンは
岸さん演じる炬太郎の再生物語である。

「何事もそこそこでいい」を信念に、仕事もせず毎日無気力に過ごしている炬太郎。
母亡き後は祖母が残してくれた自宅の一部を間借りさせ、その家賃収入で過ごしている。
そこに訪れた借り主希望の青年(浮所さん)は、自らを「元犬」であり「愛犬だったテンの生まれ変わり」と名乗る。

「犬は死ぬと人間に生まれ変わる」
子どもの頃から信じていたこと。
テンしか知りえない情報。
信じがたい事実を一旦飲み込み、
2人の共同生活が始まる。

テンは、飼い主だったコタ君が大好き。
愛すること、愛されること、
人と過ごす楽しさを教えてくれたから。
必然的に距離も近く「ペロペロしたい」などと青年男性の姿で炬太郎に向けて放つ。ジャニーズ二人が、恐ろしい距離感でじゃれ合う。

これはとんでもないことだぞ、と
始まる前は思っていた。
何を見せられているのだという
共感性羞恥に襲われるかもしれぬと。

でも、始まってみると
本当に犬と飼い主に、見えるんだよな。
言葉悪いけど、いかがわしくない。
きっと岸さんと浮所さんの持つ健全さと、丁寧なお芝居のおかげだと思う。

テンは、いつだって
ほんの少しだけコタくんの背中を押す。
頑張り屋さんでまっすぐで、愛情深いことを知っているから。そんなコタくんを思い出してほしいから。

元カノに会いに行くよう
旧友の勇姿を讃えに行くよう
ふんわりと、背中を押す。

「なんで行かないの?」
「行けない理由があるの?」と。

そこからコタくんは少しずつ、ぽつりぽつりと本心を打ち明ける、自分自身と向き合う。
そして社会と再び繋がり始める。

この作品のいいところは
大きくは人生が変わらないところだと思う。

指針になるような言葉は毎話あるし
見ている側も自分自身と向き合いたくなる。
だけど、劇的な変化は訪れない。
色んなことがあっという間に終わるし、真意が伝わらないままなこともあるし、ふんわりと終わることも多い。

でも、人生なんてそんなものだ。
関わる人々にも、それぞれ人生があり、いつまでも自分のことを引きずってはくれない。
自身に訪れた出来事だって、都度振り返って学んでいる暇も余裕もない。なんとなく受け止め、そしてまた日々を過ごしていく。
すごくファンタジーな設定なのに、描かれるのはシビアでドライな現実だったりする。

そんな炬太郎に訪れた、大きな転機。
それは「自分を愛してくれる存在」

どんなときでも、まっすぐに愛を伝えてくれる「テン」が側にいてくれる。コタくんがいるだけで嬉しいと、表情で言葉で伝えてくれる存在。

最終話でテンはたくさんの「ありがとう」をコタくんに伝える。全てが嬉しかった、楽しかった、大好きだった。一緒に過ごした時間すべてに感謝を伝える。

受け入れられること、求められること、愛されること。それは何よりの自己肯定感につながるし、モチベーションになる。
その思いを一度感じると、人は強くなれる。

その言葉で炬太郎は、また前を向ける。
元の生活に戻ったりはしない。
今までずっと開けっ放しだったリビングのふすまが、ずっと閉まっていることで「ちゃんと日々を過ごしている」と表現するのが素敵だなあと思った。

また、主題歌を大事にしてくれてるところも、すごく良かった。作中、色んなパターンのWay流れるの、めっちゃ好き。口笛みたいなコミカルっぽいアレンジが日常シーンで流れるのも好きだったし、ピアノVerやギターVerが、しっとり流れるのも好き。
エンディングが流れるタイミングも毎回良くて、ドラマの内容と優しい歌声がピッタリだった。

特に好きなお話がある。
第四話 犬、怒る。
一番刺さったし、大好きなお話。

デリバリーのお仕事を始めた炬太郎が、配達先でバカにされたことに怒りながらも「こんな仕事しかできないんだよ、俺は」と卑屈な発言をし、テンが怒るお話。
「自分で選んだ仕事なのに」
「仕事は誇りを持ってやらなきゃいけない?どんな仕事も素晴らしいって思わなきゃいけない?」
仕事選びに妥協はつきものだ。
やりたい事と自分の能力、その妥協点を見極めて働いてる。そんな人がきっと過半数で。
「そんなコタくんは好きじゃない」
はじめての喧嘩。衝突。気まずい空気。
そこに突如、あいみょんを口ずさみながら不動産屋の柿田さん(おいでやす小田さん)が現れる。
この緩急、良すぎない?
結果、柿田さんがくれた「お芋」が仲直りのきっかけになるのだけれど、その仲直りの仕方もたまらなくほっこりする。
「頑張って意味ないことはない」
そんな台詞で締められたのもよかった。
できることを頑張れば、なにかあるよって
優しく背中を押された気がした。

本当に、温かいドラマだった。

第8話で、酔ったエリー(元猫、松本まりかさん)を、炬太郎が励ますシーンがあった。
直前に「何でも頑張る女だと思われる」ことに対して怒っており、普通は「充分頑張ってるよ」とか「頑張りすぎないで」って言いたくなるとこだと思うんです。
でも炬太郎は寄り添う。
「素直に甘えられない」エリーに、寄り添った上で「頑張れ」とエールを送る。
その優しさが、本当にすごいなあと思った。

※ちなみに8話は酔って暴れるエリーのコップの中身がこぼれてないか、机に突っ伏した時に食べ物など落ちてないか部屋を見回す岸さんの家主としての芝居が秀逸です。
浮所さんの「テン」と「天」の境目を目つきだけで表現するラストシーンも素晴らしいです。

後半2話は「2人の生活」と「キンプリの岸さん」の終わりが重なってしまって、なんとも言えない気持ちになったりもしたけれど、本当に大きな意味での「愛」を描いた作品だったなと思う。

岸さん演じるコタくんは、
どこか岸さんでもあるのに
それでいて、他の番組で見る岸さんは
コタくんではないのが、すごい。

最終話のコタくんの「ありがとう」は
何回見ても泣いてしまう。
その言葉に込められた愛の深さに泣く。

すきワンきっかけに
「受付のジョー」も最近一気見したんだけど
これもまたはちゃめちゃに良かった。
なんだあの神宮寺、みんな好きになるやつじゃん。

不器用だけど努力家で、
格好いいのにどこか抜けてて
ちゃんとお礼が言えて謝れて。
ニコちゃんじゃないけど、好きにならないわけないじゃんかー!なんだあの人たらし。

主題歌の「踊るように人生を。」も
優しい励ましソングなんだよな。

シンドラ、脚本がよすぎる。
社会人に優しすぎる。

どちらも見られてよかった。
そして、何度でも見返せる。

おかげさまでHuluに生かされております。

キンプるも見られるしね!
今週のぶらり平野くんも「岸くん」しか表現の引き出しないんかという風情でなによりでした。

ハピネス!

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