第35回 ICEE (Inter-Cultural English Exchange 2022)で優勝しました
2022年10月16日(日)東京都渋谷区の東京ジャーミイ・ディヤーナト・トルコ文化センターで開催された 第35回 ICEE (Inter-Cultural English Exchange 2022)/国際コミュニケーション英語検定 で決勝まで進み、最終的に思いがけず優勝を頂きました。ここ数年の間、毎年参加してきた思い入れのある大会だったので大変光栄でした。
様々な英語の実力者の方々が参加する中で、何かの運と巡り合わせでこのような賞を頂きましたが、今後も引き続き精進を続けて、いつの日かちゃんとこの賞に見合うような力を身に着けたいと感じております。
ICEE は、丸一日かけて受検者に数々の課題が与えられ、その中で英語を使ったコミュニケーション能力や自己表現力が試される大会形式の検定試験です。午前は全員参加の予選、午後はトーナメント形式の勝ち抜き戦になります。一日緊張が続きスポーツの大会のような一面もありますが、英語検定と名がついている通り、勝ち進んだ段階に応じてレベル認定され、最終的に級や段も与えられます。
ICEE 紹介ビデオ および ICEE 30周年記念祭(2017)を見て頂くと過去の大会の様子がお分かりいただけると思います。
ICEE 2018 in TOKYO 国際コミュニケーション能力検定紹介
ICEE 30周年記念祭(2017)の様子
試験内容や白熱するトーナメント自体もさることながら、ICEE の一番素晴らしい点は全国から参加している方々と知り合うことができるところと言えます。今回の大会でもたくさんの方々にお会いし、様々な方の温かさを感じました。ICEE の創始者である松本道弘先生と初めてお会いしたのもある年の大会でしたが、今回の大会参加中にもその日の事を懐かしく思い出しました。
今回の第35回 ICEE は松本道弘先生が2022年3月に急逝されてから初めて開催された追悼大会でした。まだまだコロナ禍での安全管理などもあり、主催の紘道館ならびにジャッジの皆様にとっては大変なご苦労の中での開催だったことと思います。
今回優勝を頂いてから ICEE について聞かれる事も増え、良い機会なので ICEE 2022 を振り返りつつ、今後参加される方に向けて ICEE の概要をまとめておきたいと思いこの記事を書くことにしました。今回はちょっと長くなりそうなので必要に応じて目次を活用してご覧下さい。
*この先の レポートからは「である調」で愛想のない口調になっておりますがご容赦下さい。
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ICEE 過去の記録
今回で35回目の開催となった ICEE だが、個人的には 2019年から参加しており今回が4回目の参加だった。今調べてみるとこれまでの結果は以下の通り。
今回の参加前に、記憶リフレッシュのために前年自分が書いた記録を見てみると、こんなことが書いてあった。
これは2021年に限らず、いつも参加する度に感じる 毎年の ICEE 共通の印象である。毎年参加する度に新しい出会いや発見があり、大きな刺激を受けている。
ICEE 2022
そして、今回の ICEE 2022である。上記の通り、2019年から2020年の2年間はコロナ禍のためオンライン開催だったが、今回は久しぶりの対面開催だった。会場は渋谷区にある東京ジャーミイ・ディヤーナト・トルコ文化センター。同時に2000人が礼拝できると言う日本最大のイスラム教寺院(モスク)である。館内では一日に何回か、礼拝を告げるアザーンやコーランの朗唱が響き渡り、ハラール食品を売るマーケットや集団礼拝の施設などもあるため会場はエキゾチックなムードに包まれていた。
ここ何年か目の調子を悪くしておりサングラスをかけていることが多いのだが、マスクとサングラス併用の姿で鏡を見ると一体誰かわからない感じの仕上がり(というかどう見ても犯罪者)になってしまうので、今回はサングラスなしで参加した。幸い目の調子は良かったので特に問題なさそうだった。
* 今回の開催は遠方の方も Zoom で参加できるようにカメラの画像配信もされていた。
東京ジャーミー内に設けられた会場に進むと何年かぶりに見る懐かしい顔が旧交を温める姿が見られた。しかし同時にこれから始まる長い一日に向けての ICEE 独特の期待と緊張感も漂っているのだった。
ICEE はこれまで毎年、若干のルールが時代に合わせて変更されて来ているが基本的な骨組みはほぼ変わらず、午前の部と午後の部の二部制となっている。まずは全員が検定形式の午前の部に参加し、うち上位24名がトーナメント形式の午後の部に進む。午後の部では、各セクションで受検者のパフォーマンスをネイティブジャッジが判定し、セクションが進む(勝ち進む)ごとに人数が絞られて行く。また検定の名がついている通り、受検者は大会終了後に進んだセクションに応じて1~6級、準初段、初段にレベル認定される。2022年のプログラムは以下の通りだった。
朝から晩までビッチリである。ここから、各セクション毎にその様子を書いてみたい。
* 今後参加される方のために判定の基準も記載したが、間違いのない様に ICEE試験要綱を参照した。
午前の部
午前中のプログラムはグループ毎に大きな円卓を囲むセッティングの中で進められた。午前の部の Section 1 から Section 3 までは、連続して実施される検定形式の受検者全員参加のセクションとなる。そして午前の部のスコアにより午後の部への進級者が選ばれる。午前の部は基本的に見学参加不可となっている。
■ Section 1. Extemporaneous Speech
午前の部の最初のセクションは Extemporaneous Speech(即興スピーチ)。6人グループの中から一人ずつ順番に、その場で決められた題目に対して準備なしのショートスピーチを行うというセッションで、「テーマにあった内容をコンパクトに、かつ表情豊かにスピーチできるかが試される」と言うセクション。自分の番になるまで題目はわからない。また、今回はマスク着用での開催となったため通常より更に聞き取りやすい発話が求められただろうと思う。
■ Section 2. Definition game
2番目のセクションは Definition game(定義ゲーム)。ここは次々と出される単語を定義していくセクションで瞬発力や反射、明確な定義をする判断力などが試される。単純に辞書にあるような定義を言うだけでなく、対象となるものにまつわる話などを加えて立体的に表現することも期待されているようだ。渡された封筒を開けると4つの単語が書かれている。与えられた短い時間の中でこれらの単語全ての定義をしなければならないので、迷わず反射的に判断し話し続ける必要があるが、かといって1つ1つの単語を短い一言の定義で済ませてしまうと時間が余ってしまうので匙加減が難しい。適切な時間の配分も重要だ。また単純な単語ばかりではなく一般的にあまり馴染みのない単語も出題されていた。瞬発力が試される一発勝負でもありしびれるセクション。
■ Section 3. Why-Because
そして、午後最後のセクションが Why-Because(ホワイ・ビコーズ)だ。このセクションでは文字通り、その場で指定された二人組の一方が Why で始まる質問をし、他方がそれに対して Because で答え、またその答えに対して 一方が再度 Why で質問をし、他方がまた Because で答えるという会話を制限時間一杯まで延々と繰り返す。従って話が進むにつれて話題が変わって行くので(掘り下げられて行く)実際の会話(放談)に近いという面もある。一見シンプルに見えるが、一般的に日本人が最も苦手とされている論理的思考力を見るセクション。答える側だけでなく質問する側も同時に審査されている。英語らしい思考をしているか以外にも、持久力、集中力、機転等が試されるセクションだ。
どちらかが気を抜いたり噛み合わないと会話が途切れてしまうこともあり、このあたりからインタラクティブ性も意識する必要が出てくる。また Why で質問を始めると言う事にあまりに囚われると会話に無理が出てくるので、臨機応変に質問の形を変えながら話を続けて行く必要もある。また、また会話が続くよう、相手が答えやすいように質問するという普段の生活でも必要とされる配慮も試されているように思う。またこのセッションでもマスクのせいで、思い切った発声をしない人と組んだ人は苦労していたようにも見えた。
このセクションで午前の部は終了となり、昼食の間に午前の部の審査が集計される。緊張が解けた会場は一気にガヤガヤし始めた。
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昼食と審査
午前の部の3つのセッションが終わると昼食タイムとなった。今回は会場での飲食ができず会場外に出かける必要があるため余裕を見て1時間半が昼食にあてられた。この頃には皆打ち解け、三々五々誘い合わせて食事に行くようになる。長丁場の ICEE ではセッションの間に待ち時間もあり、また打合せやチームプレイが必要な場面も多いため、嫌でも他の人と交流が深まっていく。これも対面開催の良い点だなあと思う。
午後の部に進出できる24名と言うのは、昼食タイムに審査され午後の部開始と共に発表されるのだが、午前の部の種目は一発勝負感が強いため何度経験しても慣れる事がない。また周りは英語のプロの方ばかりなので、毎年午前の部が終わると「うわ、今年はダメだったかな?」と思うのである。今回も発表までは落ち着かなかった。そして午後の部が始まった。
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午後の部
皆が部屋に揃うと午後の部への進級者24名が発表された。スクリーンに自分の名前があるのを見てホッとした瞬間である。いつもの午後の部常連の様な参加者の方の名前も見えた。スクリーン上の名前はこの時点で既に、午後一発目のセクションである Impromptu Debate(即興ディベート)用の6チームに分けられていた。
このセクションで勝ち残ると次のネゴシエーション(交渉)に12名が進み、その後、Super Translation(翻訳・スピーチ)6名、Journalistic Interview(対談インタビュー)2名と人数が絞られて行く。
午後のセクションから対戦は3つのテーブルに分けて行われる。午後の部に進まなかった方は、ここからは随時移動して好きなグループの対戦を観戦することになる。また見学のみでの参加の方もこの午後の部から会場に入り観戦できる。
■ Section 4. Impromptu Debate
いよいよ午後のトーナメントの開始である。午前中のセクションで選ばれた24名が4人ずつの6チームに分けられ、そのうちの2グループが与えられた論題に対して、肯定と否定の立場でディベートを行う。対戦は3つのテーブルで同時に並行して行われる。ジャッジからルールについて説明があった。
ディベートの論題は3つの対戦で全て共通。今回のトピックは「政治家の年齢に上限を設けるべきか否か」というような内容だった。チームの立場(肯定または否定)はあらかじめ決められており、また各チームの4人にはあらかじめ「立論、反対尋問、反駁、反駁総括」の4つの役割が与えられていた。自分の役割を意識しながら、与えられた論題について与えられた時間内でチーム内でディスカッションを行い合意をし意見をまとめなければならない。
チームにもよるが、事前のチーム内でのディスカッションを日本語でするか英語でするかというところから擦り合わせが始まることもある。前者は母語であるため細かいニュアンスまで簡潔に議論できるという利点があるが、いざディベートで頭を英語に切り替えた時に語彙が不十分になったり統一されていないという事が起こり得る。後者は英語で議論するためそのまま議論で使った語彙を用いてディベートできるという利点があるが、母語での議論より効率が劣る面もある。どちらも長短あるが、いずれにせよ初対面の人の間で短い時間で方針を決めてコンセンサスを得なければならないため、あまり段取りにばかりこだわっていると大きく時間をロスしてしまうこともある。また一般のディベートのように論題に関してリサーチする時間などもほとんどない印象だ。
チーム内でのディスカッションと同時に自分の役割でのスピーチもある程度考えておかなければならないので準備時間はあっという間に終了してしまった。今回もディベート開始時には話すことが固まっておらず開始後に自チームおよび相手チームの人の話を聴きながら自分が話す番直前ぎりぎりにやっと話す内容がまとまった感じだったと思う。過去にはまとまらないまま見切り発車で話し始め思わぬところに着地してしまうことも多かった。
ディベートのセクションが終わるとジャッジは別の部屋に移動して審査をする。その間も張り詰めた空気の中があるものの、受験者の間には休み時間の子供の様に雑談の花が咲く。そしてジャッジが戻りしばらくすると次のセクションへの進級者発表の時間となった。
ディベートのセクションはチームワークと個人のスキルが同時に評価され、議論の優劣(ディベートの勝ち負け)とは直接関係しないことが多いので、ここでも自分が次に進めるかどうかは、発表されるまで全く見当が付かなかかった。また私のようなありきたりの名字の場合、同じ名字の方が参加されていることが多く、名前が見えてもすぐに喜べないところもドキドキ要因である。
なんとも言えない緊張の瞬間だが、スクリーンには何とか自分の名前も残っていた。スクリーン上の12人は既に次のセクション Negotiation 用の2人1組のチームに分けられていた。次のセクションではこのパートナーと協力し、あるシチュエーションでの問題解決に向けて別のチームとの交渉にあたると言う事になる。
■ Section 5 Negotiation
Negotiation(交渉) のセクションは、突然アサインされたパートナーと息を合わせて交渉に挑まなければならないのでなかなか難しい。実際のビジネスの場面でも、社内の別の部署の良く知らない人間と一緒に、外部の人間と交渉しなければならないような状況があると思うが、事前に十分な時間がない時には簡単なすり合わせをして、後は空気を読みながら目標の結果を引き出せるようにあうんの呼吸でサポートしあうような事が求められる事も多い。このセクションもそんなイメージがある。
まず最初にジャッジから Debate と Negotiation の違いの説明と共に、Negotiation は自分たちと交渉相手双方の win-winの道を探ることが目的であるとの話があった。交渉の場では、議論で相手を打ち負かすことが目的ではないので、相手の話をよく聞き要望を理解した上で、こちらも条件をつけた譲歩しながら、相手の譲歩を引き出す必要がある。議論に勝っても物別れになっては本末転倒だからだ。
このセクションで相棒として組んだ方は初対面の女性だった。今回初めてお会いした方だったので、事前の話合いでは、どのような背景の人(どんな話に強い)なのかも含め、実生活でのご職業や人柄、専門分野なども把握する様に努めた。波長の合う方で非常に良かった。しかし準備時間は短い。
このセクションはいわばロールプレイになるが、各受検者のその問題解決における役割(立場)と交渉のゴールが事前にかなり事細かに設定されている。その渡された紙にかかれた指示に沿った上で交渉をし相手と歩み寄り最大の結果を引き出すことがミッションとなる。また、パートナーの役割も意識して、自分の役割を越えないようにパートナーに話を効果的に振ることも必要だ。
今回の各グループに与えられた設定は共通だったようだが要約すると以下のような内容だった。
この状況の中で、基本的な方針の異なる二つの二人組チームが交渉し、最良と思われる解決策を探るというもの。
それぞれの受検者には個別に、所属する部署、立場、スタンスなどが事前に与えられ、その細かく設定された立場を守りつつ交渉しなければならない。今考えれば各者の立場は、上手く対立するように設定されていた。この辺が ICEE の醍醐味でもある。
ここでもなんとか次のセクションに進む6人に残る事ができた。このNegotiation のセクションは、普段社会で行っていることの延長のような感じもあり、実際にこのソーシャルメディア企業の人間だったらどう解決するかという気持ちで、実社会と同じ様に落としどころを探しながら交渉したのが良かったのかもしれない。
■ Section 6 Super Translation
次の準決勝 Super Translation(翻訳・ストーリーテリング)は6人が進んだ。ここが一番難関だったように思う。昨年はこのセクションで敗退していた。
このセクションの流れは、「渡された封筒に入った一枚の紙に書かれた日本語の引用文(名言など)を聴衆に向かってまず日本語で音読したのちに英語に翻訳して話す。そして、その後そのままその文の内容から想起する自分のストーリーを話す」と言うもの。
今回、選ばれた引用文は、岡本太郎氏、松本道弘氏、稲盛和夫氏による文章の抜粋だった。前年は文学作品の一部や格言などが中心だったように記憶しているが、今回の引用文はある程度長さがあり、また思想や信条などを話者独自の言葉で表現した奥の深いものばかりだった。私に向けられた出題も例外でなく、大変苦労した。
普通に翻訳ソフトなどにかけてもまずまともに翻訳されないような味のある日本語ばかりであり、話者の言外の意図も汲み取りながら同時に原文に忠実に訳す必要があると言う、かなり難しい問題だった。また訳しながら、その解釈に基づき、その後で直ぐに行わなければならない「内容に関連した自分の経験に基づくスピーチ」をどのようなものにするか頭の中で組み立てなければならないので、本当に痺れる時間だった。
まずは日本語での音読である。これは母語だけに得意であるはずだが、前述の通り、主義主張、思想信条を独自の表現で表わしたものなので読み方を戸惑ってしまうような高尚な漢字が多かったりする。
そして英訳。これは意訳にならないように気を付けたが言葉のまま訳すと別の意味にも取られそうで少し回りくどくなったかもしれない。その辺りの匙加減が難しかった。
そして最後はストーリーテリング。なぜかこのパートは奇跡的に与えられた時間ピッタリで話を終えることができた。しかしその時間通りに終えたと言う点自体はそれほど評価の対象ではないのかもしれない。
マスクをして話したので全体的には聴取者の皆さんに良く聞こえるように意識して皆さんの顔を見ながら(聞き取りづらそうな表情の方がいないように気を付けて)話した。
他の受検者の方のスピーチは聴けなかったので会場の方がどんな印象を持たれたのかは想像がつかないが、このセクションでも最終の2名に残ることができ決勝に進むことになった。これは全く想定外だった。最終の2名に残ったのは大番狂わせという感じがする。嬉しい気持ちと、うわー困ったという気持ちが半々の微妙な男心だった。
また次のセクションで行う英語インタビューの作法などもしらないので、勝ち残った事を知った時から、私の頭の中のスーパーOS(大体 Windows 3.1 レベル)は空回りを始めた。
■ Section 7 Journalistic Interview
なんといよいよ決勝の Journalistic Interview (対談・インタビュー)である。笑っても泣いてもこれが最後、ここはせっかくの機会なのでインタビュー相手から何か興味深い話を引き出すことができるか楽しんで取り組もうと思ったのだった。
対戦相手は江口里菜さんといううら若き女性だった。先行・後攻は日本古来の公平決定システムのじゃんけんで決められた。私は先行になった。
このセクション開始時に初めてインタビュー相手のゲストの名が明かされ、受検者にその方の背景に関する資料が渡される。インタビュー相手は酒生文弥氏という方だった。仏教の僧侶でありながら同時通訳者、イスラム教と日本の橋渡しのようなこともされていて、その他にも情報シートには、在日本ルーマニア商工会議所代表、世界平和連合大使、松下政経塾初代塾生、NPO代表、大学での教務活動、仏教とAI統合プロジェクト推進者など、様々な肩書が並んでいる凄い方だった。
但し、それぞれ具体的な詳細は書かれていないので、正直なところパッと見ただけでは、凄そうな事はわかっても具体的にそれぞれどのようなものなのかわからず、ここでも何から聞き始めたら良いのか方針が決まらないまま、インタビュー開始となってしまった。今考えれば「そこを聞くのがインタビュー!」と言う事なのだろうと思う。
しかし、どこから手を付けたら良いのかわからないので、もう開き直って感じるままをぶつけてみることにした。「たった今、資料を拝見してとにかく多くの素晴らしいをご経歴を持つ方だと言うのはわかったものの、それぞれ馴染みのないものも多く、上から順に伺っても良いか」などという正直ベースで話を始めたような気がする。
実際、そういう気持ちだった。しかし、話し始めると人柄も素晴らしく、ご自身の背景も非常に判りやすく説明頂いたため、大変興味が湧き、思い浮かぶ疑問をそのまま挙げていくことができた。しかし話題が発散してしまうとインタビューの設定時間が直ぐに終わってしまいそうな予感もあったので、前半はこれまでのこと(経歴・歴史)、後半は今取り組まれている事に絞って話を聞くようにした。
後半は、現在取り組まれている仏陀の教義と AI の統合に関する話が大変興味深く、その話題に絞って話を伺った。これは仏陀の思想を AI にディープラーニングさせて、社会に役立つ存在にしようと言う取り組みだった。ここでは酒生氏に「AIの判断プロセスに関する説明責任が論争の的になっている現在では、社会からの反論や反発も出るのではないか」という感想を率直にぶつけてみた。そのいささか不躾な質問にも酒生氏は具体的な開発活動の状況など技術面も含め納得の行く説明と共に未来の大きな夢を語ってくれた。
ちょうどその辺りで時間終了の音がしたので、私も「AIがそのような形で人間のパートナーとして社会に貢献して行くことを大きく期待したい」と言うような事を伝えて話を終えた。
今回のインタビューでは、設定時間を意識して早い時期に核心に切り込んでいくことの重要性が判り良い勉強になった。
そして決勝の Section 7 は終わった。全ての行程を終えジャッジは審査のために別室に移り、後はお裁きを待つだけになったので清々しい気分だった。他に参加された方々も同様の様子であり、この瞬間が一番、丸一日一緒に戦ってきた皆さんと心が通う瞬間だった。
そして、最後の結果発表となったが、そこで準優勝の方の名前が先に呼ばれるのを聞いて「え、ということは私が?」と思ったのも束の間、スクリーンに私の名前が表示されトロフィーを頂いたのだった。
そしてトロフィーを受け取りながら(あ、そうか何か受賞スピーチしなければならないんだな)と、全く準備をしていなかった受賞スピーチを放心状態の中で考えていた。いわば、私にとってはまだ ICEE が続いており、次の Section 8 の準備をするような気分だった。
本日のお礼のスピーチをしていると偶然スピーカーから礼拝を告げるアザーンとコーランの朗唱が館内に響き渡り、それをバックにスピーチをしているとなんだか実に厳かな気持ちになってしまった。
そして今回の ICEE が終わると参加者の皆さんから暖かい祝福の言葉をかけて頂いたのだが、これが一番嬉しい瞬間だった。
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おわりに
ICEE 運営委員会の資料によると「ICEEは全てその場での真剣勝負。もちろんその時の相手や扱う内容による運不運もあり、結果はその時の自分の在り方を一瞬形にしたもの」と書かれています。私も今回運が味方してくれてこのような賞を頂くことができましたが、いつかちゃんとこの賞に見合うような力を身に着けたいと感じております。
また ICEE は ICEE Youth などの形で若い方向けにもこれまで開催されていますが、このようなコミュニケーションの検定は他に類を見ない貴重な存在なので、今後、益々日本の英語教育に貢献する存在となって欲しいと感じております。
そして最後に、紘道館の瀬倉祥子さん、高嶋芳枝さん、堀雄一郎さん、そしてジャッジの Mr. David Groff, Mr. Brian Shaw, Mr. Matthew Ownby, Mr. Noah "Lucky" Gesher, Ms. Namiko Tsuruta, Ms. Nafisa Minai, Mr. Robert Emmett, Mr. Yuichiro Hori の皆様にお礼を申し上げます。ありがとうございました。
今後の ICEE の発展をお祈り致します。
(了)
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