緑のオカンと紫のオカン
皆さんの髪の毛の色は何色だろうか。私の髪の色は基本的に黒だが、気分転換に染めてみたいなあと思う事がある。昔の日本社会では女性の髪色には黒色が好まれ、髪を染めていると不良扱いされたりした時代もあった。しかし今日では茶髪が普通に市民権を得て、髪の色の自由化も進んだように思う。
しかしである。街を歩くとたまに、生物学的に人間には絶対生えてこないような色に染められた髪にお目にかかることがある。いやいや、ロッカーのような音楽関係の人ではなく一般の人の話である。そう、オバちゃんの話である。
茶髪やブロンド、シルバー系であれば人種によっては地毛でそういう色の人がいるのである程度受けとめやすいのだが、人類には絶対生えてこないような緑色や紫色の髪で颯爽と歩いているオバちゃんに街で出くわすとやはり少し動揺してしまう。色だけでなくパンチパーマのような加工がされているケースも多い。主流は関西だという認識だったが、関東でも結構見かけるのである。
もちろん、全くの個人の自由。似合っていれば素敵だと思うし、この多様性の時代、なんの文句もない。
しかし、ふと思う。何故、この二色なのだろうか。
―― 緑と紫
この二色は同系色でもなく、かといって完全な補色関係にあるわけでもない。補色というのは色相環(色を並べた輪)で正反対に位置する色を指し「緑の補色は赤」、「紫の補色は黄色」である。なぜオバちゃんはその御髪にこの緑と紫の二色を選ぶのか。
―― 緑と紫
この二色がフィーチャーされているものが他にも何かあるような気がする。なんだろうか ……
そうだ! キャベツである。普通のキャベツは緑だが、亜種として紫キャベツというものがある。並べてみると、ほら、二人のオバちゃんが立ち話をしているようではないだろうか。
こんな自然界にも「オバちゃんパンチカラー」の組み合わせが息づいていたのである。
そうして考えると自然界にはこのオバちゃんパンチカラーのペアがたくさん存在するのに気がつくのである。次に容易に思いつくのは紫蘇である。
さあ、ここにもオバちゃんがいた。こうなるとどんどん出てくる。次は海藻である。そうあの刺身の横に添えられているアレである。
ほら、お箸の先にいるのは紛れもなくあのオバちゃんである。こうして考えると、緑と紫というのは自然界では結構ナチュラルな組み合わせなのかもしれない。
そういえばマスカットと巨峰も緑と紫である。
そして更にタイムリーなことに、お盆のお供えでお馴染みの胡瓜と茄子の名コンビも緑と紫である。
こうして挙げていくと、自然界にこれほどオバちゃんパンチカラーが溢れていることに驚きを禁じ得ない。人工的な特殊な配色だと思っていた私の先入観にカウンターパンチを与える結果であると言えよう( パンチと言う言葉を使いたかっただけ)。
しかし、これだけあるとなると緑と紫は相性が良いと言ってしまってよいだろう。他にも思い当たるものがあればぜひ読者の皆様にも教えて頂きたい。
大阪のおばちゃんはこのように自然界に多数存在する緑と紫の組み合わせを自然に肌で感じ取り、その髪色に反映させてきたのかもしれない。
***
さて、ここまで読んで頂いた皆さんの頭には「だからどうした?」というセリフが浮かび始めているかもしれない。しかし、この髪の色の論争、調べていくと結構奥が深いようで、簡単には結論めいた考察は出せないのである。
例えば、あるご婦人に聞いてみると、「あれは、白髪染めで染めた髪の色が抜けてきて紫っぽくなっているだけで、好んで最初から紫に染めているわけではないのよ」などという見解もあるようなのである。確かに、そんな感じの薄紫の髪を見たことがある。しかし、私が今回議論の対象にしている紫色はあの鮮やかさからして、やはり強い意思を持って選ばれた色のような気がするのだ。その場ではそう言い返せなかったが。
さっきまで、「オバちゃん」と言っていたのに急に「ご婦人」なんて呼んでいるところにも私の心の迷いが見えるのではないだろうか。
そんなわけで、もう少し慎重に調べてから皆様にはまたご報告したいと思う。読者の方で真相を知っている方や考察のある方がおいでになるようならぜひ教えて欲しい。
さてその間、皆様におかれましては良いお盆をお過ごし下さい。
(了)
* 気に入ったら💗を押してもらえると励みになります。