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今すぐにキャラメルコーン買ってきて
今すぐにキャラメルコーン買ってきて
そうじゃなければ
妻と別れて
(佐藤 真由美『プライベート 』集英社文庫)
この短歌に出会ったときの衝撃と言ったら。
まず、その場の情景を思い描き、そして(おそらく妻のいるであろう男性に想いを寄せる)女性の心情に思いを馳せた。彼女はおそらく男性を前に声を上げたのだと思う。でも、短歌中のどの台詞までを口に出したのだろうか。全部言った?それなら、すごいパワフル。それとも「今すぐにキャラメルコーン買ってきて」と冗談めかして言いながら、続けて心の中で「そうじゃなければ…」と呟いたのかしら。妻と別れないことは理解してるけど納得できないの、なんてヒロインめかして。
誰かと一緒にいたいという想いは、愛であったり、惰性であったり、何かの隠れ蓑だったり、する。それは年齢を重ねることで理解したことの一つだ。一方でデートする相手は欲しいけれどステディな人はいらないと言う友人がいれば、もう一方では自分が浮気相手だと知りながらそれでも離れられないのだと言う友人もいた。
短歌の彼女はどのような性格で、男性とどう出会い、どう付き合ってきたのだろう。おそらく、そこには当事者同士にしか分からない小さな出来事と思い出が絡み合い、私の思い描く世界だけでは事足りない事情があって、短歌の台詞に至っているのだと思う。
短歌が面白いのは、31文字の音の中に風景があり物語があって、読み手それぞれが自らの解釈で短歌を味わうことができるから。その風景が物語が解釈しがいがあればあるほど、私はどんどんその短歌が好きになるし、人に話したくなる。
(表紙画像出典:http://tohato.jp/download/caramelcorn/wallpaper.html)