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路地裏

僕に住んでた街にショベルカーがやってきた。

おつかいに行った八百屋さんや、
コロッケをおまけしてくれたお肉屋さんは引っ越した。
ママがお喋りしていたパーマ屋さんがなくなって、
ママは「どこで髪を切ろうかしら」と言った。
いつもがらがら建物を潰していく音がする。
路地の猫は大きな工事の音に驚いたのか、
ぴょんぴょん走っていってしまった。

保育園から帰るとき、ブルドーザーを見つけた。

地面がいっぱい広がっていて、
柵に囲われて中には入れないけれど、
あそこで遊びたいなと思った。
小さな路地は隠れてわくわくするけれど、
広い地面は飛び出したくなる。
ヘルメットを被ったおじさんが「公園やお店ができる」と教えてくれたから、
ママに教えてあげようと思う。

ロードローラーもクレーン車も、働く車の絵本で見た車がいっぱい動いてた。

今は大きなビルが立って、
人がいっぱいいて、
公園もできた。
僕は新しくできたマンションに住んで、
広い道を歩いて保育園に行く。
ママは「歩道が安全で嬉しいわ」と言う。

路地の猫はどこに行ってしまったんだろう。