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コロナウイルス危機の時代における社会運動とは 2/4 〜アンジェラ・デイヴィスとナオミ・クラインによるティーチ・イン〜

現在のパンデミック下の危機と1930年代と2008年の金融恐慌危機との比較、そしていま最前線に立つエッセンシャルワーカーたちのリーダーシップ、フェミニストにとって取り組むべきことは?アンジェラ・デイヴィスとナオミ・クラインが2020年4月2日に開かれた討論会で、話したことを日本語訳したものを数回にわけて公開しています。
動画:https://www.pscp.tv/w/1YqKDEwwZnaGV
英語原文: https://tinyurl.com/vo3jcra

コロナウイルス危機の時代におけるムーブメント(社会運動)の構築
〜アンジェラ・デイビスとナオミ・クラインによるティーチ・イン〜

登壇者:
アンジェラ・デイヴィス
ナオミ・クライン
シンディ・ワイズナー(Grassroots Global Justice)
モーリス・ミッチェル(Working Family Party)
ローン・トラン(Southern Vision Alliance)
司会:ゼンジウェ・マクハリス(Rising Majority

※文中太字や、()内の注釈は訳者によるもので、英文は他の方の書き起こしのままです。https://tinyurl.com/vo3jcra

この対談は4回にわけて公開しています。→ 1 I 2 I 3 I 4
なお文中太字や、()内の注釈は訳者によるものです。

ゼンジウェ・マクハリス: いままでお話いただいたことで、流れがつかめたというか、すこし思考を切り替えていく準備ができました。

さて、米国や世界中の私たちすべてに関わる一番大胆で強い要求で掲げるべきものは何でしょうか。次の質問に移りましょう。ぜひナオミに聞きたいことですが、いまの状況にいたった背景とその評価についてお話いただいたばかりですが、あなたは一体どのように光を垣間見た--何ができるのか見えてきた--のでしょうか

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ナオミ・クライン: 今起きていることは、この途方もない危機の初期段階にすぎません。この瞬間、私たちには多くが求められます。すぐ得るべき教訓は、緊急事態にいると認識することで、多くのことが可能になるということです。私たちの多くはこうして今回の討論会への呼びかけに反応しました。世界中の人々に対して「現状維持」は--それが大規模な投獄をも含めたいかなる不平等・不正義であろうと、自然との戦いであろうと--危機的状況にあると、まわりの人々を説得すべく力をそそいできました。緊急事態宣言は力(を持つなにか誰か)の表現であり、米国では初期の段階でかなりの抵抗がありました。米国がこの危機に対して準備不足であったというのは、まさにこの点です。(コロナウィルスは)危機として認識されていなかったのです。誰も緊急事態として見ていませんでした。多くの人がFOXニュースや同類のメディアに声を合わせ、単純に老人や病人は株式市場の名の下に静かに死ぬべきだと考えていました。米国において不充分とはいえ、なにかしらの緊急的な対処に至っている唯一の理由は、このウィルスの地理的な移動によって揺るがされたのが、従来社会的な基盤を強く持つと考えられていた地域だったからです。中国や南ヨーロッパにおいて、人々の命を救うために経済活動が停止されるという先例があってはじめて、トランプ政権でさえその方向を向いたということです。正直なところ、ウィルスがもし南ヨーロッパを最初に攻撃しなかったら、こうなっていたかはわかりません。
   危機に直面するときは、何ができるかを嗅ぎ取る力が出てくるものですね? 私が「ショック・ドクトリン」でミルトン・フリードマンの言葉を引用して以来、彼はよく引用されるようになりました。「現実のものであれ、認識上のものであれ、真の変化を生み出すのは危機だけである。」その変化は、危機が起きたときに、自分の身の回りにどういうアイデアや考えがあるかにによりますね?ミルトン・フリードマンは、企業や右派のための災害対策の知的基盤を持つことを唱えました。大恐慌で起きたように、資本主義が自らの危機を生み出す場合、システムの不正が露呈して、それが左派にとって大きな機会になると理解していたからです。ミルトン・フリードマンは1970年に(当時チリの大統領だった)ピノチェトに宛てた手紙の中で「あなたの国でも私の国でも、1930年代に、人々が他人のお金でなにか良いことができるかもという考えを抱いた時にすべてが回らなくなった」と書いています。
   別の言葉で言い換えるなら、この危機の直面で彼らがウィッシュリストを更新するために展開している戦略は、アンジェラがさっき話したような、私たちの要求を恐れるからこそのものです。刑務所を空にしろ、皆のために家を用意しろなどと要求されることを恐れているのです。「おい待てよ、6兆ドル余ってるなら、これでグリーン・ニューディール(気候変動と経済的不平等に対処することを目的とする米国法案のパッケージ案)ぐらい始めろや」と言いたくなりすよね? 自宅退避中の人々に支援をしながら、同時に化石燃料消費について社会全体で考え直していく資金繰りもできるのです。もし石油会社、ガス会社、航空会社、自動車会社、クルーズ船会社などの地球上を最も汚染をしている企業が救済を求めてひざまずいてきたら、その分野の決定・所有権を私たちが握ることができます。もし企業が地球上の命を淘汰するような行為を続けようとするなら、私たちがその企業のもとで働いている労働者をかわりに支援をすることができます。「ラディカルな可能性につながるドアがあるんなら、それを蹴破ってでも、なるべく幅広く、長い間押し開けておくのが私たちの仕事」とは、私が共同設立したThe Leapの同僚の言葉です。
   ゼンジウェや、黒人の命を求める運動(Black Lives Matterに代表される、黒人に対する暴力や制度的な人種差別の撤廃を訴える運動)がこれまで行ってきたことは、みなさんもご存知でしょう。世界経済が崩壊した2008年に比べたら、私たちはよりよい場所にいると言えます。当時、銀行家の危機をかばうための支払いを強いられていることが明らかになり、私たちは広場を占拠しました(Occupy Wall Street ウォール街を占拠せよ運動)。そこで私たちはノーと言いました。南ヨーロッパから集まった人々は、選挙運動から派生してPodemos(スペインで広がった既存政党に対する抵抗運動。日本語で「われわれには可能だ」)を始めました。当時の私たちにはまだ十分な勇気と力をもってラディカルなな代替案を提示できませんでしたが、今私たちがすべきことはそれです。アマゾンホールフーズやインスタカートやGEのスタッフ、看護師や現場のスタッフの行動アマゾンやホールフーズやインスタカートやGEのスタッフ、看護師や現場のスタッフの行動に私は大いに感銘を受けています。彼らは自分たちの重要性を認識しています。ウィルスから身を守るためにゴミ袋を身につけなければなりませんが、資本主義が彼らを文字通りゴミとして見ているど真ん中で、「違う、違う、ほら世界を持ち上げて!」と(私たちに)声をかけています。この労働者たちにならって、私たちも力を築く必要があります。私たちは労働を止める権利を行使し、労働者をできるだけ支援しなければいけません。うるさく喚き散らすのはご迷惑かもしれませんが、やはりドアがあれば蹴ってでも開けておかないといけません。

ゼンジウェ・マクハリス: 大いに心を動かされました。おっしゃることはわかります。自信を持って、大胆に要求をし、想像力の可能性を広げる必要があるということですよね。以前は不可能だと思っていたことが今では明らかに可能性をはらんでいると、今学んでいるからです。では、もう一歩進んで、どうすれば私たちは--可能なことに向かって--自分たちの先鋭的な想像力や強力な認識を伸ばす最高レベルの要求を提示していけるのでしょうか?

ナオミ・クライン: もう一つ付け加えます。これは時間とのたたかいです。私たちが戦っている相手の持つ手札の中の最も劣悪なものはまだ見えていないからです。時間は大きな鍵を握っています。アンジェラはガザにいて話していましたね。ガザの人々はもう何年も「世界の他の地域のために、自分たちの居住地が実験室の役割を果たしている」と私たちに訴えかけてきました。今日(米国時間の2020年4月2日)、ムンバイのスラム街でCOVID-19(原文では「コロナ」)の最初の症例が診断されました。とても心配しています。アンジェラが言ったように、人々が適切な場所に避難できない状況だからです。そこで国家は何をするのでしょうか?(インドの)モディ首相は果たしてどう出るか?(フィリピンの)ドウェルテ大統領は? (ブラジルの)ボルソナロ大統領なら? スラム街を封鎖ですか? そんなことをしたら、そこがガザになるということです。だから、私たちが声を挙げて 「ノー」 と言うべきです。誰もが家を持つ権利がありますし、空いているホテルはたくさんあります。これから今わたしたちに見えるより、ずっと悪い状況になるでしょうから

ゼンジウェ・マクハリス: ええ。だからこそ私たちはこのティーチインを通して、この瞬間に何が必要かの枠組みをを考えなくてはなりませんね。この討論会にこれから参加する他の仲間にバトンを渡す前に、アンジェラにお聞きします。私たちが選択する行動ひとつひとつや、社会運動のレベルを理解し、伝えるために何ができるのでしょうか?あなたの考えお聞かせください。

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アンジェラ・デーヴィス: 1930年代と現在の類似点を見ろというナオミの意見には全くの同感です。地球上の人々や他の存在のニーズに真に応えるという点で、資本主義がいかに無能であるかを、私たちの多くは認識していると思います。現在の医療危機は、1980年に始まった一連の民営化が原因です。時期を同じくして軍事産業複合体も生まれました。現在ほとんどの病院は資本の利益を生み出すために運営されているため、空床もなく、人工呼吸器から大量の機器までの備蓄や生産にも対応できません。世界的な資本主義にはこの流行病に対処できない責任があります。また、刑務所や拘禁施設に収容されている膨大な数の人々や、医療費、住居費、教育費等の高騰についても責任があります。そして、これらのことは「起こるべくして起こった」わけではなく、ほんとうは全く起きるべきではなかったということを、私たちは理解できるはずです。医療は売買される商品ではありません。現在の経済状況で居場所がないからいって、人々が刑務所にいる理由はなにもないのです。
   それからもう一つ私が指摘したいのは、この状況下でアジア系アメリカ人に対して向けられた暴力は、人種差別的資本主義の本質を明らかにしたということです。あの人の名前はなんでしたっけ?今ホワイトハウスに住んでいる方ね… 病院、診療所や黒人居住地域への検査キット提供拒否にはじまり、アジア系アメリカ人はつばを吐きかけられ、怒鳴られ、身体的な攻撃を受けています。テネシー州ナッシュビルにあるメハリー医科大学のような場所では、大幅に検査体制づくりが遅れました。私たちには組織を動かす構造的な人種差別と日常的な人種差別の両方に抗う組織力を持っていると認識したいものです。フェミニストの組織化も可能でしょう。人種差別、ホームレス刑務所廃止はフェミニストがとりくむべき問題です。そして同時に、この危機の最前線にいる多くの人々は、グローバルサウス(南側)の女性、あらゆる人種や民族の背景を持つ女性、貧しい女性、トランス女性、女性であるという事実を考慮すべきです。国際的な連帯感の必要性をつくりだし、高める機会として、これを捉えましょう。この危機は、私たちを米国中心のひとりよがりなパジャマパーティーから救い出すでしょう。世界の他の地域で組織化している人々のリーダーシップとつながりましょう。いま世界中のドメスティックワーカー、自宅待機中の人々、営利目的の介護業界やワシントン州で集団感染の発生した介護などのケアワーカーなどが仕事を失っています。その人たちがこれからのリーダーシップをとるべきだと認識しましょう。
   それからジェンダー暴力と児童虐待について一言。どうやら「屋内退避指令」が想定するのは、「家にいること=どこかぬくぬくと心地のよい場所に避難すること」なのでしょう。しかし、たくさんのひとが四六時中自分を虐待する人々とともに過ごすことを余儀なくされており、彼らのライフラインとなっている人たちと連絡を取ることができません。世界への帰属意識を持ち、資本主義を超えてゆく可能性への意識を高めるような組織作りのときに、子どもや女性に対する虐待があってはならないのです。

ゼンジウェ・マクハリス: 本当にありがとう、アンジェラ。最前線にいる労働者、家庭内の子ども、ドメスティック・バイオレンスや性的暴行のサバイバーたちなど、一番脆弱な立場にいる人たちの前から、私たち自身が姿を消さないようにしないといけませんね。

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この対談は4回にわけて公開しています。 1 I 2 I 続きは→3 I 4
次回はナオミ・クラインやアンジェラ・デイヴィスと共に登壇した草の根の運動家たちによる討論となります!

訳し始めで読みにくい部分もあったかと思いますが、ここまで読んでくださってありがとうございます。
懐具合にに余裕のある方は、コロナ危機で収入が超不安定になってしまった訳者をサポートしていただけたら大変ありがたいです。

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