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寒空の下、迷い猫ふたり

大雪が降り積もった、いつもよりも寒い日だったと思う。おい、と玄関でわたしを呼ぶ雪かきをしていたはずの父の両手には、つぶらな瞳でこちらを見つめる茶色の仔猫が1匹。野良猫だ。かわいい。
仔猫はてっきりそのまま逃がすと思っていたが、ほれ、と当たり前のように手渡される。え?野良猫を?玄関に?でもそこには相変わらずつぶらな瞳でこちらを見つめる仔猫。かわいい。噛まれたくなさすぎて少ししか触らなかったけど、仔猫は体をスリスリしてくるだけでとっても大人しく
外にいたわりに体も汚くない。びっくりする程お利口さんだった。人に慣れているようだった。

お腹すいてるんじゃない、とか
何か食べさせたほうがいいかな、とか家族総出でああでもないこうでもないと話していて気がつかなかったけど、玄関にはいつの間にか怯えてミャアミャア鳴いてる灰色の仔猫が1匹。片手くらいの大きさしかなく、茶色猫と一緒にいたらしい。寒空の下放り投げるわけにもいかず、その日は冷蔵庫にたまたまあった竹輪と牛乳を与え、ダンボールにいらない毛布やらを敷いて即席で作った寝床を車庫に置いて一晩どうにかしのいだ。いつでも仔猫達が元いた場所へ帰れるように、少しだけ車庫の隙間を開けておくのも忘れずに。


まだ仔猫だしかわいそうだから、と
冬の間だけ面倒を見るつもりが、共に暮らし始め気づけば10年以上たってしまった。後から知ったが、どうやら猫達は野良猫ではなくて、捨て猫だったようだ。人に慣れていて、全然汚れていなかったのは飼われていた経験があった捨て猫だったから。やんちゃ盛りの仔猫なのにびっくりする程お利口さんだったのは、今思えば茶色猫なりのSOSだったのかもしれない。父が茶色猫を拾わなければ、片手くらいの大きさだった灰色猫は餓死していたと思う。小さかった茶色猫も灰色猫もすくすくと育ち、今ではそれぞれ父の座椅子とソファーのど真ん中を占領し、この家に住む誰よりも寛いでいる。まるで人間のようだ。よく食べよく寝てよく走り回り、たまにいたずらしては人間に怒られ…家中の壁紙は爪研ぎと化し、せっかく買ったキャットタワーには見向きもせず、服に何回穴を開けられたかわからない。が、安心しきった寝顔を見るとつい何でも許してしまう自分がいる。
何だかんだいって、かわいくて仕方ないのだ。

あと何年一緒にいられるだろうか。
たくさん食べてよく眠り、いたずらする元気があるうちはまだ大丈夫だろう。
このしあわせな日々が少しでも長く続きますように。我が家に来てくれてありがとう。



#猫のいるしあわせ

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