【物語】記憶の奥底に眠っていた未完の御話
ある村に、小さな家が建っていました。
でも、そこに住んでいる人は誰もいません。
とても寂しい空気で満ちていました。
その家の窓辺には、薄汚れた洋服を着た女の子の姿をした人形が座っています。
名をベティといいます。
村の子ども達は「ベティには呪いがかけられている」だとか、「魔女の化身として、人形の姿をしているだけ。ベティは、本当は恐ろしい魔術を使える魔女なんだ」とか囁き合って、ひどくベティを恐れていました。
でもね、ベティには怖いところは何もないんです。
ただ、一つの秘密をもっているだけであって、恐れる必要は皆無です。
その秘密とは、一体何でしょう。
それは、真夜中の間、誰もが寝静まった時間の間だけ人間になることができる という秘密です。
星々が瞬き、暗闇が村中を覆うとき、ベティは人間の女の子として村中を探索します。
そして、川辺のせせらぎに耳をすませたり、洞穴に住むうさぎやリス、子ぎつねたちと遊んだりします。
ときには村の中央にある公園でブランコを漕いで風を思いっきり感じたり、原っぱで仰向けになって天体観測をしたりすることだってできます。
夜の間、ベティは自分がまるで村のお姫様になったような心地です。
だって、誰にも姿を見られることなく好きなことを心おきなく楽しむことができるのですから!
でも、ベティは気づいていました。
自分の心の中はコップの水が全て零れたように空っぽで、ひどく寂しいことに。
自由に語り合うことのできる友達が欲しかったのです。
そこで、ベティはあることを思いつきます。そのアイディアとは…
✿THE・ENDを迎えられなかったunfinishedなstory…✿
このストーリーは、Amityが小学5年生のときに頭の中で作った物語。
学校の選択授業で「オリジナルのお話を書く」というものがあったのですが、それは結局選択しませんでした。でもオリエンテーション時、即興で自分の頭の中にストーリーを紡ぐのがとても楽しくて、思わず側にいたS先生に上記の物語を話して聞かせました。そのとき、先生は笑顔でこう言ってくれました。
「Amityちゃん、すごいね!よくスラスラと即興で物語を作れるね!凄い才能だよ」と。
褒められて有頂天になったAmity少女の将来の夢は、その日から「作家」になりました。
でも、悲しいことに、Amity少女はそれから10年以上の時を経ても、なかなか自作の物語をフィナーレまで完走させることができないのです。
新しい物語を書き始めることはできても、結局行き詰まり、完結できないのです。
だから、noteというプラットフォームで初めて完結させた長編小説・「ハーモニー」の件は、またとない奇跡のようなものなのです。
子どもから大人へとすっかり成長してしまったAmityは、今日もフィナーレを迎えられるかどうか分からぬ物語を綴ります。頭の中で広げた想像の翼を具現化する喜びを噛み締めながら…