【論文&レポート】2年次の英米文学史レポート~抗えない運命に立ち向かって~
英米文学史。この科目は、英米文学作品を基に作られた映画を鑑賞し、感想を授業時間内にレポートに記述する というものだ。当時観た作品はどれも古典文学がほとんどで、「ロミオとジュリエット」や「動物農園」、「緋文字」、「蠅の王」などだった。本好きの私だったが英米文学には縁がなく、知識も乏しかった。英米文学にトライすることもあるのだが、ほとんどが読破に至らなかった。
さて、全講義終了後、最終レポート課題が課された。
「2022年英米文学史・期末レポートについて
授業で扱った作品の原作(英語でも日本語の翻訳でも)を読み、論じてください。授業で見た映像だけでなく、原作または翻訳(ebookも可)を読んで、必ず一か所の引用を入れて、自分で選んだテーマを論じてください。(市民図書館や〇〇校舎◇階の図書館で調べ、△△キャンパスからの取り寄せや購入を請求できます。分らない場合は、司書の方に尋ねて下さい。通販サイトで中古本や電子本を購入することも出来ます。)
引用箇所は、引用した本の出版社、出版年、引用ページを書いてください。(PCワードでA4 2枚程度 1200~2000字程度 (手書きの場合400字詰め原稿用紙3~5枚程度)(英語では600~800words) 引用部分も字数に入りますが、引用が全体の30%を超えないようにしてください。」
うわぁ、引用文も盛り込まなきゃいけないのか...とげんなりしながらも、集中して読了し、完成させたレポートがこちら↓ 選んだ作品は、カズオ・イシグロの「私を離さないで」。
※注意※ ネタバレ含みます。
英米文学史期末レポート
【わたしを離さないで】
~抗えない運命に立ち向かって~
読了後、クローン人間という使命をもって生まれたヘールシャムの生徒たちは、可哀そうだという苦々しく暗澹な思いがふつふつと沸き上がってきた。彼らは自分の思い描いた未来を掴むことができないまま、その命を終えなければならないからだ。まだまだ余生を謳歌したいのに他人のために自分の臓器を提供するなんて、考えただけでも恐ろしく、とてもゾッとする。自分の人生を十分に全うした後、他人のために臓器提供をするという場合なら少しは納得できる。自分の命を自分のためだけに使い切ることができれば、不満や疑問も抱かず何とも思わないだろう。しかし、結婚、家庭生活の充実、希望する職業を得ること、勉学継続、海外に渡航する…そのような日々の生活で自然に湧き上がってくる望みを叶え、人生にいろどりを与えることなく命を終えるなんて、とても悲しすぎるし残酷だと強く感じた。
「…そういうものはありません。あなたの人生は、決められたとおりに終わることになります」(早川書房・2008年・本文406ページ)というエミリ先生の言葉と「…あなた方は一つの目的のためにこの世に産み出されていて、将来は決定済みです。ですから、無益な空想はもうやめなければなりません」(早川書房・2008年・本文127ページ)というルーシー先生の言葉は将来に対し期待で胸を弾ませていたヘールシャムの生徒やトミーの『提供を遅らせることができるかもしれない』という小さな希望を粉々に砕くものだと強く感じた。もし私がヘールシャムの生徒、トミーの立場だったなら、冷水を浴びせられたように全身に悪寒が走り目の前が真っ暗になるのは確実だと思う。それと同時に怒りも湧いてくるだろう。提供をしなくて良い人と提供をしなければならない人の2種類の人間がいて、どうして私は後者なんだ。なぜ。なぜ私がこんな残酷で非情な運命を背負い、若くして人生に幕を閉じなければならないのだろう…と答えのない問いを頭の中で反芻する羽目になると考える。
「…あなた方の存在を知って少しは気がとがめても、それより自分の子供が、配偶者が、親が、友人が、癌や運動ニューロン病や心臓病で死なないことの方が大事なのです」(早川書房・2008年・本文401ページ)というエミリ先生の言葉にも驚愕し、心に衝撃が走った。尊い命をもった一人の人間の命をクローンという存在だけで、こんなにもあっけなく無下にすることができるのか、と心の中に暗雲が立ち込めるような思いがした。しかし、そんな私も視点の転換をするとエミリ先生やルーシー先生のような立場になってしまうかもしれない、とふと思った。私たちが生きる現代ではテクノロジーや医療が発展し、その恩恵を幾人もの人が受けている。それは、亡くなった人の臓器提供、今なお生きている人のドナー提供、動物実験による薬の開発があり、病に対する治療法の解明が進んでいるからだ。仮に人間以外の動物が全くいない世界に私たちが生きるとすれば、この物語のような状況も起こりうると思う。臓器提供を必要とする人のために他の人間が犠牲になるという世界が確立してしまうだろう。もし私がキャシーやヘールシャムの生徒たちと同じような運命を辿ることを強いられたら、どのように人生に意味を見出すのか分からない。恐らく、一生をかけても不明瞭なままだと思う。
字数:1348字
※大学で同様の科目を履修している方へ。剽窃(コピペ)はお止めください。参考程度に留めてください。※
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