ラムチェンイン蘇りきたる



ユウは小さい頃からラムチェンインが好きで好きで、キョンシー映画ばかり観てた。

大きくなったらラムチェンインのお嫁様になる!

っていってて、僕のプロポーズ、六回黙殺した。
今回七回目にあたり、ついにオーケーが出たけど、結婚の条件は、ラムチェンインにごめんねしにいくってことだった。

なんで俺が!
だいたいこいつのせいで俺、六回も蹴られたんだぞ!!

でもまあ。
最後は俺が勝ったんだからいいや。


映画人の眠る、ちょっと見かけのいい霊園。

林正英ここに眠る

と書かれた横長の石碑の前で、ユウは両手の指を編み組み、目を閉じている。

ごめんねラムチェンイン

とか祈ってるんだろうか。
あんまり長いので、僕は少し離れて、スマホをラジオにして、適当な曲を探して聞いていた。
ポール・モーリアの、バラ色のメヌエットを聞いていた時だった。
プツンと曲が途絶え、ニュースキャスターの慌てた声が出てきた。

臨時ニュースをお伝えします!
つい25分ほど前から死人が生き返り、生きた人間を襲っているという情報が入っています。
局でも警備員が襲われ、死んだ警備員も蘇って、ウワアア!

ニュースはそれきりになった。
茫然となった僕の周りを、参拝者が駆け抜け、逃げ散ってゆく。
ユウは!?
まだラムチェンインのとこ!?


人波を掻き分けて、ラムの墓の辺に戻ると、まさに墓碑がひっくり返って、やけに古びた骸骨がゆらり立ち上がった!
ユウが叫ぶ。

ラムチェンイン!

でもゾンビだ逃げろ!

まさか!
ラムチェンインは道士よ!

トチ狂うな!!

ユウの腕を引っ張って、その場から引き寄せたのとほとんど同時にそれは起きた。
別の墓から起き出してきて、俺たちに襲いかかろうとした比較的新しい遺骸に、骸骨はためらいのないハイキックをかましたのだ!
体勢を戻して構えつつ、俺たちに行けと仕草した。

ラムチェンイン!

叫ぶ妻?(まだ恋人?)を、引きずるように逃げながら、ごめんユウ!と俺は思った。
ラムチェンインはほんとの英雄だったのだ。
最後に見た時骸骨は、カンフーアクションでゾンビたちが俺たちを追うのを妨げていた。
俺、わかった。
七回目のプロポーズもきっとだめだよな。
でもラムチェンイン。
俺わかったよ。
ユウがあんたをこうまで愛した理由さ。
あんたこそ、本物の・・・


目の前に朽ちかけた遺体が飛び出して来て視界が遮られ、


後は何もわからなくなった。


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ラムチェンインについてはこちらの記事でどうぞ↓

もう一個あるぜ↓

追加情報(2024年8月5日(月)追加しました)↓


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