マガジンのカバー画像

いのちをみつめる

382
死んでしまいたいときとか、ちょっとだけ、ほんの一呼吸だけ置くことができたら…… そんな作品を、集めてあります。 生きよ。 そなたは美しい。     (宮崎駿『もののけ姫』より)
運営しているクリエイター

2023年12月の記事一覧

追悼

追悼登山に行くという義兄を、私は止めきることができなかったが、そんな私をあざ笑うかのように、その日も山は大いに吹雪き、義兄は二度と戻らなかった。
義父のときもそうだった。
ご友人の追悼登山にゆくのだと言ってきかず、結局吹雪にのまれてしまったのだ。
これでは全くの繰り返しではないか!
警察は繰り返し、登山者たちに言っている。
追悼は平地で!
尾根でなく平地で!
でも山男たちは繰り返し、追悼は登山を行

もっとみる

疎乃美の疎

疎(うと)むとも読むと知ったとき、疎乃美の気持ちは奈落に落ちた。
パパもママも大嫌い!
そんなに私がいらなかったなら、つくらなければよかったのよ!
つくっちゃったんなら私のこと、可愛がらなきゃ絶対嘘よ!
可愛がられてないと決め込んで、呪いの札に父、母の名を書き込んだ彼女、
彼女は全く知らなかった。
その日がたまたま悪魔らの、

人間の願い何でも叶えたるでぇ

の日だったことを。
父母は死んだ。

もっとみる

参考提示①

もふもふ①犬編

           弟
       ~ココとまり~

チワワです。
ロングコートチワワ。
でもらしくないくらい耳りっぱだから、パピヨン?てきかれてばっかり。
パピヨンじゃありません!

27回目きかれた夜、ままが真顔で言った。

取り替えてもらう?
今なら保証期間内・・・

頭の芯がガン!ってなった。

何いうの!
ココは私あたしの弟だよ!
弟とりかえる人どこにいるの!?

もっとみる

去年の夏

たった七秒半の命だった。
彼女の甘い吐息から、吹き広げられて虹色に輝き、自由の天地へと漂い出たのもほんのつかの間、それはたった七秒半で消えた。

なんて・・・

『はかない』と彼女の唇は続いていたが、それは決して声にはならず、かわりに一粒真珠のような、涙で頬を濡らす彼女だった。
わかってる。
僕らは戻れない。
十七の僕らはこどもで、新しい命を育むには、自覚も実力も備わってなかったし、たとえそれらが

もっとみる