たった七秒半の命だった。
彼女の甘い吐息から、吹き広げられて虹色に輝き、自由の天地へと漂い出たのもほんのつかの間、それはたった七秒半で消えた。
なんて・・・
『はかない』と彼女の唇は続いていたが、それは決して声にはならず、かわりに一粒真珠のような、涙で頬を濡らす彼女だった。
わかってる。
僕らは戻れない。
十七の僕らはこどもで、新しい命を育むには、自覚も実力も備わってなかったし、たとえそれらがあったとしてもあの時の僕らに自分らの人生を、新しい命と引き換える勇気があったかどうか・・・
もう行くわ
彼女は言い、石鹸液とストローを、僕に優しく差し出した。受け取り損ねた僕は取り落とし、飛び散った虹色の液体の中で、短い僕らの夏が終わった。
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それでも地球は回っている