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AIが賢くなるほど、仕事の負荷は重くなる
「AIが進化すれば、仕事はもっと楽になる」
私たちは、よくこのような理想を目にし、そんな輝かしい未来に多くの期待を寄せた。
AIが進化すればあらゆるものが自動化され、遊んで暮らせるようになる。仕事はもっと楽で、人間らしく、楽しいことができるようになる。
しかし、私に起こったのは全くの逆だった。
確かに、高速でタスクをこなすAIは、アウトプットを瞬時に生成し、大量の仕事を一気にこなしてくれる。
一方で、その内容を吟味し、次の正確な指示を出す作業は、以前にも増して責任と負担の大きいものとなった
――その膨大な仕事は、無慈悲にも私に毎日のように降り注いでいる。
1. AIの高速化による“休憩時間”の消失
1年前、生成AIの性能は高くなかった。
プログラムや文章を生成させるにしても、出力までに数分かかるのが当たり前だった。
そのあいだにコーヒーを入れたり、ほっと一息ついたりといった「強制的な休憩時間」が存在していた。
ところが、最新の生成AIでは、わずか数秒、いや一瞬で数百行ものプログラムが返ってくる。
一見、作業効率が何倍にも跳ね上がったように感じられる。
しかし、高速化が別の問題を生む。コードが即時に出力されるので、休む間もなく次の指示を出す必要があるのだ。
1年前は出力に2分くらいかかったから、その時間は休憩時間だったのに、今は一瞬で出てくる。
さらに、AIが送ってくるプログラムはときに非常に長い。
もちろん、それが必ずしも動くとは限らない上、拡張する必要もあるため、それを理解して不備がないか確認し、適切な修正や追加の指示をするプロセスが必要となる。
同じ3時間コードと向き合うにしても、以前の何倍もの仕事ができるようになった一方、終わりの見えない仕事に追われることになった。
大学生の頃、「100日チャレンジ」でプログラムをたくさん書いていました!
2. 責任と指示の重圧
1年前と比べて、生成AIは目に見えて進化した。プログラムも文章も、以前の5倍くらいの長さを軽々と出力できる。
しかし、生成AIが増々賢くなればなるほど、そのアウトプットを「うまく使いこなす」ための指示は、より精緻で正確なものが求められる。
なぜなら、何をしたいのかは私にしかわからないからだ。生成AIは私の脳を読み取って答えを出してくれる訳では無い。しっかりと言葉にして伝えなければならない。
つまり、人間側には「的確な指示を瞬時に与えるスキルと責任」が強く求められる。
まだAIの進化に周りが追いついていないからいいけれど、以前より仕事が速く進む分、「もっと成果を出せるはずだ」「まだ余力があるだろう」と周囲から思われるようになる日が来てしまうかもしれない。
3. 便利さと苦しさの裏表――人間の限界をどう守るか
1年前は3時間に25回という回数制限があった上、AIもそんなに賢くなかった。
プロンプトを考えるにも、限られた試行回数をどう活かすかと、ある意味「慎重に」進める余地があった。
しかし今や回数制限はほぼ無制限になり、さらにプロンプト自体もAIと一緒に考えながらどんどん精度を高めていくことが可能だ。
その結果、やり取りする文字数も膨大になり、結果として「毎日何万字の文章、何千行のコードを読んでいるのだろう?」という負担感に苛まれている。
事実、私は以前は12時間働けたが、いまは8時間が限界。2、3時間AIと向き合うだけで疲労困憊になり、しょっちゅうベッドに倒れ込むかふらふらとコンビニに行く。
食事休憩も2〜3時間はゆっくりと取らないと疲れがまったく取れない。
それでも、私は仕事を進めないといけない。
――AI関係のサブスク代だけで月に12万円を払っているからだ。
大学生だった1年前は480円のカフェラテを買うかどうかすら悩んでいたのに、いまは何もしなくても毎日4000円が消えていく計算だ。
一つでも多くの仕事をし、成果を残さないと、維持コストで干上がってしまう!
こうしたコストを回収するために、今私は、AIをフルに活用し、多くの仕事をこなして成果を上げ続ける必要がある。
「人間の限界をどう守っていくか」という問題は、私の喉元に突きつけている。
おわりに
「AIが進化すれば、仕事はもっと楽になる」
――かつて、こうした理想に胸をふくらませていた。
しかし、蓋を開けてみると、新たな技術が必ずしも“人間の負荷”を減らすわけではないことを実感している。
AIの高速化は休憩を奪い、指示や責任の重圧を高め、さらには経済的な出費をかさんでいるのが現実だ。
しかしながら、これはAIが無意味という話では決してない。むしろ、私たち人間がいかにして「限られた集中力と体力をうまくやりくりしながら、AIと共存するか」が問われているのだと思う。
それでも私は最前線で戦っていきたい。
――それはAIではなく、AIを用いて爆速で仕事をしてくる同業者だ。
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