なんでも挑戦シリーズ④ボルダリング編

完全に調子に乗って、再度ボルダリングジムに行くことになった。

その日は女性を対象にしたレッスンがあり、少しばかり見学してみることに。
見るとかなり難易度高いコースが課題で、皆、コーチのアドバイスのもとに真剣に壁を見つめはじめる。大半が上級者である。
コーチは穏やかに「できなくてもとりあえず挑戦してみるのも大切ですよー」と、おっしゃった。

挑戦?
なんで今回のわたしのテーマを知ってるのだろう。
その言葉に触発され、出来もしないズブの素人が立ち上がってしまった。
「おっ、やるんですね!」と、コーチの声。
できなくて当然、という言葉を胸にその上級コースに挑んだ。
コーチや周囲の方々のアドバイスをもとに進んでいく。
完全なる見切り発車のため、案の定脱落。
元いた場所へ戻り、静かに体育座りする。

他の方達は意図も簡単にゴールして行く。そして皆「やった!」と言う喜んだ表情もなく、何かこう、確認していく作業に近い。
真顔で壁を見つめ、淡々とこなす。
これって人生に似ているな・・「もっと、もっと」と難易度を上げて、高みを目指す。違う景色を見るために。壁を乗り越えるために。
などと哲学的な気分に浸りつつ、わたしはあっさりと難易度高いレッスンから外れ、簡単コースに戻った。

前回スタミナ切れでクリアできなかったコースをやってみることにした。
するとあの悔しさは何だったのかと思うくらい、スルスルと簡単にゴールできてしまったのである。拍子抜け。
やっぱり腕ぷるぷるするまでやったら、あかんかったのか・・。
Sさんに同じコースを登って見せてもらったのだが、動きが全然違う。
とても軽やか。
ふと他の人たちも観察して見てわかったのだが、考えながら難しそうに登ってる人と、もう体が勝手に動いてっちゃう!的な野生の本能みたいな動きをしてる人がいる。
森でチンパンジーや猿が木登りしてるかのような動きなのだ。
機能的な動きでとても自然なのである。

その境地に達するには恐らくSさんのように、指を痛めて、またやって、をだいぶん繰り返さなければならないと言うことを一瞬で悟ってしまった。
つまりその世界にどっぷりと浸かると言うことである。
みんな真剣に壁を見つめている。

別のコースをやってみる。
体の使い方がわからなすぎて早々に脱落。再度チャレンジ。それを繰り返す。腕がぷるぷるしてくる。

そこで思った。
また次、回復した状態で来たらなんなくクリアーできちゃうんやろうな・・。は。そうしてみんなこの世界にハマっていくのか・・!

ガンガンのHIPHOPのNYスタイルは非常に魅力的なのだが、これ以上ハマってしまうと、盆踊りに日舞に、、趣味の大混線が起きて、もう訳がわからない。登りながら踊る人と言う形容をつけるしかない。
それに自分にはストイックさが欠けている。
楽しく自由に楽にヘラヘラしながらやっていきたいタイプだ。
指の負傷覚悟でやる気合いは持ち合わせていないのである。

そろそろ、おいとまします、と言うわけでボルダリングの挑戦は二度で終止符を打った。

後日、Sさんに会うと、さらに年季の入った手になっていた。
「昨日、岩登ってきたんです!」と、軽快な笑顔。

岩?
数名で山へ行き、岩を登っているらしい。フリークライミング的な?自然の中で登るの?何それ、楽しそう・・と若干口走ってしまったのをSさんは聞き逃さなかった。
「めっちゃ楽しいですよ!」負傷した手を輝かせながら眩しいくらいにSさんは微笑んだのだった。


終わり

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たみい
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