こわい、を乗り越えたい
わたしが初めてコンタクトをつけたのは高校を卒業してからだ。病院へ行き、装着する練習するもこわくてまったくつけられない、結果、「じゃ、家でがんばって」と帰された。家で泣きながら、そして腰ひけながら練習してやっとつけられた。
小6の息子はふだんはメガネで、ラグビーをするときだけ裸眼。ずっと本人は「視えているから」と言い張ったが、いろんなコーチからコンタクトを考えてはどうかと言われ続けていた。ぼんやりした視界よりはクリアな視界でやった方がぜったいにプレーが違ってくる、と。競技用ゴーグルなどいろいろ試したが合わず、結局コンタクトを試してみるか、となった。コンタクトを処方してもらうには、本人がコンタクトの装着ができなければいけない。それが大きな壁だった。当然、目に入れるという行為がこわいので、なかなか入れられない。もういやだ、と息子は言った。一旦しばらく期間を開け、周囲のママたちに相談して違う病院を探して行ってみることにした。わたしと夫とで交代で3度ほど通ったが、やっぱり無理だった。その度に苛立ったりして、こんなにしてまでコンタクトをつける意味などあるのだろうか?とすごく悩んだ。こわくてつけられない、あとは本人の意思とちょっとの勇気だけ。わたしたちは何もできない。スクールも残りわずかの期間、もうこのままでいいかなとも、思っていた。でもここ1年ラグビーを続けるかどうか親子共々紆余曲折あった中で(ここら辺はほんとに色々ありすぎて端折ります、来年卒団する頃にまとめて書きたい)、最近息子が練習で積極的にがんばってる姿を見続けている。視界がクリアな状態で思いきりプレーさせてあげたい。最後に息子に確認した。つけられたらいいけど、こわい、という正直な気持ちである。わたしにできることは違う環境の病院を探すことだ。先生の相性もあるし、息子みたいにナーバス気味になる子にとって雰囲気も大きく関わる。また周囲に聞き込んで探し、連れていった。息子はずっと緊張しすぎて逆に空回って待合室で「あっち向いてホイしよう」と自ら緊張をほぐそうとしていた。わたしはじゃんけんに弱いので、ばかみたいに首を振りつづけた。診察を受け、隣のコンタクトレンズ店へ移動し、いざ、コンタクトの装着練習。指導してくださったスタッフが明るく根気強く、論理的に説明してくれたのがよかったのか、他の病院とは違い、息子はすぐにあきらめず、何度も試そうとする姿勢を見せた。スタッフとわたしと「トライする気持ちで押し込むんだ!」と盛り上げる。営業終了10分前くらいに、ピタッとコンタクトが装着できた。私たち親子しかいない静かな店内に拍手喝采が響き渡る。息子の頭上にぱかっとくす玉が開いて、「おめでとう!」と紙吹雪が舞う光景がみえ、セレモニームードに包まれた。息子はそれまでのナーバスモードが取り払われ、ポケカの神カード引いたかの如く、清々しく笑って一気に自信を吹き返した。
帰りみち、意気揚々と息子は歩き、すごくうれしい、帰ってからもよろこびであふれ、お試し用にもらったレンズを宝物みたいに眺めていた。