わたしのスクラップノート4/田辺聖子


こちらのシリーズです!延々と個人的なスクラップをまとめておくための場所。


田辺聖子さんのなんともやわらかい文章がすきだ。ただ頼りないやわらかさじゃなく、しなやかさの中の強さがあって、強いけれど刺々しくない。


妻の仕事というものは、結局のところ、家族の誰よりも早く起きる、ということにつきるのである。
夏なら窓を開け放して冷たい空気を入れ替え、冬ならばまずストーブで部屋をあたため、湯を沸かし、弁当をつくる。それができたら、妻の仕事は半分がたすむ。
あとは手抜きしたって目立たない。
誰もほめてくれない時は自分でほめておけば良いのだ。
私は、男がそばにいる女の幸せを、妻はもっと感謝すべきだと思う。
やっぱり男がいるのと、いないのとでは、女の人生がちがう。
それは女を深い意味で生かし、この人生において、生きることの何たるか、愛することの何たるか、老いることの何たるかを教える。
それを考えたとき、私は夫と妻とよばれる、男と女の生活に、重たい意味をくみとらずにはいられない。
もしそれに気づけば、良妻、悪妻の定義など、何であろうか。ゴミクズみたいな観念である。

田辺聖子著『言うたらなんやけど』


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たみい
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