大人の理不尽
子どもの時、大人の理不尽な行動によく憤慨していた。
例えば父親である。子どもが何かやらかした時にはひどく叱るくせに、自分がやらかした時は、「へへっ」と笑って済ませる。
子どもながらに、「へへって何だよ?」と呆然とした。
わたしは心にしまってある、大人の理不尽ノートにそういう出来事がある度にメモった。父親だって人間だ、だから失敗もする。しかし「へへっ」でいつも済ませて自分のことは棚に上げ、子どもの失敗にまっとうぶって叱りつけるって、理不尽すぎやしないか?悶々と想いを募らせた。
ある日、父親が何かやらかし、いつものように「へへっ」で済ませようとした瞬間に、「ちょっと待った!わたしが同じことしたらめちゃくちゃ怒るのに、自分の時は笑って済ませてる!納得いかない!一体どういうことなんだ!」と今まで溜まった理不尽100ポイントを父親にぶつけてみた。
父親は一瞬静止し、そしていつもの「へへっ」を発動させ、横で「まあまあ」と母親が呑気に笑っている。
だから、「へへっ」て何なんだよ。
呑気に笑い合う平和な両親をにらみつけ、そしてまた大人の理不尽ノートにポイントが刻まれたのである。
つい先日、8歳の息子がだらしのない母親のわたしにこう言い放った。
「お母さんはそういう人だから、まあ、仕様がないか」
その言葉に思わず開眼した。
子どもの方が上手だったのである。
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