刈り上げ夫婦


ずっと髪を切りたかったので、美容院に行ってきた。


担当のスタイリストは男性で、少しクセのある、そしてどこか猫の気配を感じる人だ(夫もそうだが、わたしはついつい猫っぽい人を引き寄せてしまう傾向がある)


いろいろ相談しつつ、彼はこう言った。

「少し刈り上げてもいい?」

わたしの毛量が多い為、調節したいということらしいのだが、刈り上げといえば、夫と一緒である。


夫婦揃って刈り上げってどうなのだろうか、と二、三秒迷ったが、


「いいですよ」と返事していた。

出来上がったスタイルは、ショートカットのサイドがソフトに(女性ということを配慮してくれたらしい)刈り上げられた、今までしたことのかったスタイルに仕上がった。

スタイリストは大変満足そうである。

「もっと短くして、金髪なんてのもあり!」と、かなりエッジの効いた方向に、わたしを誘いだした。


「気が向いたら、そうしてみます」と、静かに返事しておいた。


身も心も軽くなり、店を出た。


挙動不審な若い男女が、眉間にしわを寄せてスマホとにらめっこしている。

ポケモンのモンスターが店の前付近で出没するらしい。



春間近、バリカンを
夫婦で共有する日が
来ることになるとは。
(自由律俳句)



2018.3.17『もそっと笑う女』より

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たみい
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