ずっこけ春の梅田祭り
久しぶりに家族三人で梅田へ出かける。
知り合いの個展を観に行く為だ。
休日だったので電車は満員だし、梅田は人は多いわで、画廊に着いた途端、息子は速攻下呂を吐いて笑っていた。
談笑も束の間、すぐに画廊を後にし、梅田の雑踏に出た。
雑踏は小さな子供にとてもストレスのたまる場所なので、すぐに公園を探してしまうのは、母親にとって条件反射である。
男の子は特に、ただ何もないところを走ってるだけで楽しいのだ。
走れない都会はとても窮屈だ。
HEPの観覧車を見つけ、あそこに避難しようと決めた。
休日なので、15分待った。
わたしたちの後ろに、若いカップルがいて、女の方がやたら男にじゃれている。
付き合いたてなのか、男にからかわれているのが、女はとても嬉しくてたまらない様子。
女がわざと口をとがらせて怒ったりする仕草などを後ろで見ていると、なんとも言えない気持ちになる。
そうか、自分も若い時は、周りにこんな風に見られていたのかと思うと、非常に情けなくなった。
しかし、だ。
女の異常なじゃれっぷりに、どんな面してそんなじゃれているのだ、と、思い切り真正面の女の顔を見ると、おてもやんそっくりだった。
まあ、ふたりが幸せならそれでいいじゃないか、という結論に至ったわけである。
結婚五年目のわたしたちは静かに観覧車に乗り、静かに楽しんだ。
丁度夕暮れ時だったので、景色が三丁目の夕日のような光景で、家族三人でそれを眺められる幸福をかみしめた。
帰りは阪急の一番最後の車両に乗り込み、息子はかぶりつきで車掌さんの仕事っぷりを眺めていた。
アナウンスをして、ドアを閉め、最後にベルを「チンチン」と二度押すのだが、息子はこの「チンチン」と鳴る音に大ウケして、車内わりと静かだったのだが、「おかあさん、チンチンだって!!」と、息子の下品な笑いが響き渡っていた。
次の日、夫の実家に行ったときに、観覧車内の動画を夫が撮影していたので、みんなで鑑賞することになった。
テレビ画面に映し出される観覧車から見る夕日はきれいで、孫のはしゃぐ姿などを、おばあちゃんは喜んで観ていた。
しかし後半の映像で、
わたし「そりゃあ、お金持ってる人は何でも空で移動すんのわかるわ。こんな上からの景色観てたら、電車なんてあほらしくて乗る気にならんわ」
とか
わたし「(観覧車の)入場料、大人500円て思ったより安いな。1000円以上取ると思ってた」
夫「一人1000円も取ってたら、誰も乗らんやろ」
などという、下世話な金の話のオンパレードで、大画面で観るにはとても耐えられない仕上がりになっていた。
春分の日、夫の実家で嫁の金の話が響き渡る、それはとてもさわやかな休日であった。
2017.3.21『もそっと笑う女』より
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